いつもの資格情報誌のとある資格を指で弾き、勇者兼資格猟師、単独行ライカは発表する
いつもの資格情報誌のとある資格を指で弾き、勇者兼資格猟師、単独行ライカは発表する
次の資格は……これだ!
どれ?
って、これ……
ああ、「基本調合検定」だ
オレだと、何級くらいがちょうどいいんだ?
「基調検(きちょうけん)」は仕事になるという点ではそんなに役に立たないと思うけど……
資格猟師として、とにかく討ち取った数を増やしていかないとな
これはそんなに難しくないんだろ?
級によるけど……うん
ライカだと5級、もしく4級。この二つは一次試験だけで終わるし
でもそんな低いの取っても……
スタイアは持ってるのか?
うん、学校で取らされた2級があるよ
でも、「特殊調合師」の方がすごく使えるから、あたしはそっちの勉強しているんだけど……
おお、すごい
まあいいよ、まずは4級目指してみる
ちょっとでも高い方を、だ
本当は講習受けるだけで貰えるのがよかったんだけど、ちょっとないんだよな
だからそれまでの間の時間をムダにしないように
わかった
じゃあ、それにうってつけの先生がいるよ
お、おおー
ありがたい
ちょうど遊びに来るって言っていたから、ホント、運がいいね
へえー、どんな人なんだ? 学校の友達?
そう、学校の友達
一番仲がいい娘(こ)なの
調合に関する知識がすごくて、基調検も1級で、すでに特殊調合師の資格も持っているの
在学中にここまで取れたのは、長い学校の歴史でも両手いかないくらいなんだから
ほえー、天才ってやつだな
まさしく本物だよ
ホントにすごいんだから!
……そういえばライカ
レベルを知っておきたいから訊くけど、普段、薬とかはどうしてたの?
え? そりゃ買うだろ、薬屋で
適当にそこらの薬草とかで、調合しなかったの?
ああ、全然わからないもんな
あといつも買うのは傷薬くらいだったな
まあ、多く買い込むのも重くなって動きが悪くなるからちょこっとだけ
ちょっと……そんなので魔物の相手をしていたの?
身体向上系のものを使わずに?
勇敢心(ゆうかんしん)があるから、別にいいかなーっと
呆れた……
よくそんなのでやってたね
えっ、普通じゃないのか? 勇者なら
普通じゃないよ
そもそも他の勇者のみなさんはパーティー組んでるし
この、単独行! 単独行バカ!
うっ、うるさいな!
てか単独行はやめろ! 可哀想なヤツみたいだろ!
あっ、来た
はーい、ちょっと待ってー
お邪魔します
アーシスちゃん、いらっしゃい
しばらくお世話になります
気にしないで
むしろ、あたしがそっちへ行かなくちゃならないのに
ううん。ボク、スタイアの家に来てみたかったから
バルストルは海が近くていい街だって
あれ、あの人は?
ああ
紹介するね、幼馴染のライカだよ
ちょっと色々あって、今ここに住ませてあげてるの
はじめまして、ライカ・アベインって言います
ライカ・アベイン……単独行ライカ?
うっ、そういう風に呼ばれることもあるけど……
幼馴染が勇者、勇者が幼馴染。そして一緒に暮らしている……
スタイア……やるね
ちょっと、何言ってるのっ
感想、個人的な感想
薬、調合してあげようか?
く、薬……?
夜の薬。もっと仲睦まじくなる、夜の薬
別に昼でも使えるけ――
うわぁーっ! ああーっ!
な、なんだいきなり……
何か聞こえたっ!?
い、いやなんにも……ぼうっとしてたし
よしっ!
まったく、アーシスちゃん……冗談はやめてよ
…………
はじめまして、単独行ライカ
ボクはアメシスト・グランスル
アーシスと呼んで欲しい
どうも、よろしく
それとすまない、単独行っていうのはやめてくれないか?
わかった。努力する、単独行
…………
悪気はないから許してあげて
ボクはボクだが、性別は女だ
だろうな……
歳はスタイアと同じ、十七
ということはオレとも同じわけだ
いや、スタイアと同じ
…………
悪気はないから許してあげて
それじゃあスタイア、早速始めようか
あっ、その件についてなんだけどね……
実はライカ、基調検4級の合格を目指すことになって――
スタイアには特殊調合師、さらに単独行には基調検4級の先生をやればいいんだね
うん、できればでいいから
スタイア、ボクがキミの頼みを断ったことがあるかい?
引き受ける
わがまま言ってごめん
しっかりとお礼させてもらうから。合否関係なく
…………
あの、アーシス?
なんとま
え?
……なんでもない
あっ、あの、オレ頑張るんで、よろしくお願いします
…………
あっ、あの……
あっ、そうか先生か、ボク
おいおい大丈夫かよ……
大丈夫
!
単独行、次第
おう
いらない荷物だけ置かせて
それから外に出るから
手伝うよ
えっと部屋は――
スタイアの部屋でいい
えっ、でも……
構わない
う、うん
じゃあこっちがあたしの部屋だから
向こうがライカの部屋ね
わかった
この辺りで
結構歩いたなー
ふうー
調合は実際にやってみないと覚えない
そして失敗すると、危ない
なるほど、だからこういう人気のないところで
特殊はボクが持ってきたのを使うけど、基本4級ならこの辺りので、できる
へえー
この通り、まったく調合について知識がないの
なんでもできるから単独行、じゃないと
調合にはこれを使う
板? ってどこから出したんだ?
異法で取り出したに決まっているじゃない
これ、調合板
今回は大きなものをしないので、一人用枕くらいの大きさのを使う
この上に調合に必要な材料を置いて、
術式をしたあと、これを鳴らせばできあがり。簡単
たったそれだけなのか
……それが大変なのよ
実際にやってみよう
難易度はかなり低く、低効能の傷薬にしよう
この草と、この草でできる
この芝によく似ているのが、バミュルダス
こっちの白い小さい花をたくさんつけているのが、テンテルシ
どこにでもあるこの二つを調合板に乗せ、一つだから、それぞれ一握り程度でいい
バミュルダスは葉、テンテルシは花
この程度の調合なら、細かい分量を考えなくても大丈夫
では調合
ごくり……
その前にスタイア
何?
向こうに多分エステントが生えてる
それを取ってきて。次使うから
うん、わかった
では続き
調合はその出来上がるモノの種類によって術式が異なる
今回は回復系のモノだから、今から教える術式が回復系共通
覚えて
おう
…………
彼女はすうっと深呼吸をし、
ちょっちょっちょ~ちょっと調合~♪
変な振り付けと共に歌い始めた
ちゅっちゅっちゅ~注意して~♪
うこ~く~ど~んた~ま~ん~と~♪
そ~うぱちぱち~♪
そ~うぱちぱち~♪
あ~あ~
ほいっ
奇妙な振り付けと歌が終わってハンドベルを鳴らせば、調合板の上で小さな爆発が起き、素材が消えて傷薬が出来上がっていた
完成
ええーっ!? そんなのしなきゃならないのかぁーっ!?
調合の歴史は古い
おかしく見えても、これこそ先人たちの血と汗と涙の結晶
嫌、恥ずかしいなら、君はここまでだ
調合とは己を忘れ、素材と生まれるモノのイメージにのみ集中して行う
うぬぬぬ……わかった
では練習
ぐううう、よし!
ちょっちょっちょ~ちょっと調合~♪
恥が消えていない
ちょっちょっちょ~ちょっと調合~♪
ダメだ
なんでこんなダサいのを……ええい、ヤケクソだ! どうにでもなれ!
ちょっちょっちょ~ちょっと調合~♪
ちゅっちゅっちゅ~注意して~♪
うこ~く~ど~んた~ま~ん~と~♪
そ~うぱちぱち~♪
そ~うぱちぱち~♪
あ~あ~
ほいっ
な、何も起きない……
想像力不足
続ける
はい
ちょっちょっちょ~ちょっと調合~♪
…………
ボク、スタイアの様子見てくるから
できたら呼んで
おう!
ちょっちょっちょ~ちょっと調合~♪
…………