12 現れた救世主(骨董店&写真部)
12 現れた救世主(骨董店&写真部)
この世のものとは思えない声を上げ、不気味な生き物はリディアの頭めがけて突進してきた。
きゃっ……怖いっ!
リディア、伏せるんだ
リディアを胸に抱き、フレデリックは囁く。
だめっ!もう、私……
絶体絶命―ーそんな言葉が、リディアの胸を支配した時だった。
××××……×××……!
教会の扉が開かれ、背後から、何ごとかを唱える声が聞こえた。
それと同時に、生き物は大きく仰け反り、教会の壁、天井近くにに巨大な体ごと打ちつけられる。
壁に備え付けられたパイプオルガンにはすっかりヒビが入ってしまった。
な、何なの!?
リディアとフレデリックは後ろを振り返る。
そこにいたのは、二人の少女と、一人の少年だった。
先頭に立つ活発そうなポニーテールの少女が、はらりと髪に結んだ深紅のリボンを外し、目の前の生き物へ向けて掲げる。
まさかそんな……スカーレットじゃないか……?
フレデリックはあっけに取られて言葉を失う。
目の前にいた三人はハイスクールの写真部員で、先頭で生き物と対峙しているのは紛れもなく、部長である<スカーレット>だったからだ。
××××……ルルイエ……××……グスタフ……××××……古より支配したる神よ!どうか安らかに眠りたまえ!
スカーレットは周囲の状況に目もくれず、一心に生き物へ向け不可思議な呪文を唱える。
駄目だ!近寄るんじゃない!すぐに離れるんだ
××××……××××……
なおも呪文を唱え続けると、生き物の体は教会の床へ落ち、苦しんでのた打ち回る。
ふふっ!よく効いているようね……仕上げはこれよ!
大胆にも、スカーレット先輩は深紅のリボンを生き物の首へ巻きつけた。
あんな薄気味悪い生き物に近寄るとか、スカーレット先輩も物好きっすよね
そばで見ていたグリーンが相変わらず冷めた口調で言うと、
こらこら。そういうこと言わない
ローズは優しく嗜めるのだった。
リボンを首へ巻きつけられたことで、生き物の様子が明らかに変わった。
なにやらぐったりとして、そして体がどんどんしぼんでいくのである。
何……これ……
何だっていいじゃないか。助かりそうなんだから
怯えるリディアを、フレデリックは再び優しく抱き締める。
こんな時ですらときめいてしまう自分自身を、リディアはとても不謹慎だと思った。
すっかり小さくなった生き物をスカーレット先輩が足で踏み潰したのは、それから数分と経たぬうちであった。