美香はすかさず、地面を転がったナオキの足に、自らの足を絡ませる!

ケンスケ

 よ、四の地固め……!
 美香のやつ……いつの間にそんな技を……!

美香

 コラァ! ケン君のお父さん!
 これで動けないだろコラァ!

ナオキ

 いででででで!
 なにや、なに、な、なにやっちょ、なにやっちょんやこれぇ!!!

玻璃

 ……これでおしまい、ナオキ

 暴れるナオキの側に、ゆらぁり、と玻璃さんが近づく。
 
 その手に持つのは、大きな剣…… 『自由の楔(ジェイドジエンドジェイデッド)』!

ナオキ

 ぐううううガキ共~~~~!
 このオレの夢を……この不死身の力を使って全世界のアホ共をブタ箱に入れて管理してやる、このオレの夢を邪魔しやがって~!!
 オレの幸せを、踏みにじりやがって~!!

玻璃

 幸せとは、ゼロサムゲームじゃない。
 誰かが幸せになれば、誰かが不幸になることを、幸せとは、言わない。
 誰かが幸せになれば、誰かも幸せになる。
 それが、本当の幸せ。
 アナタは、それが分からなかった。
 だからアナタは、不幸になる

 玻璃さんは相変わらずの無表情であったが、しかし僕には、少しだけ……ほんの少しだけ、悲しそうに映った。

玻璃

 力を持ってしまったのが、それこそ、運の尽き……

 そして玻璃さんは、剣を振り上げる。

玻璃

 ごめんなさい。
 さようなら

ナオキ

 チクショオオオオオオオオ!!!!

ケンスケ

 お、親父の魂が消滅していく……!

玻璃

 これでナオキは完全消滅した……。
 不死身の力『思い出の風鈴(トリックトリートトルマリン)』も返してもらった

美香

 やったー!
 完全勝利!

玻璃

 目的は達成した……。
 私は、自分の帰るべき場所へ帰る

ケンスケ

 帰る……って……

美香

 まさか……鉱山に帰るってこと!?

玻璃

 いや、香田君の家

ケンスケ

 !?

美香

 !?

玻璃

 だって、玄関の水晶。
 あれは、私の家だから

ケンスケ

 !?

美香

 !?

ケンスケ

 ……なるほど、あれはシェルターみたいなもの……ってことか。
 だから蹴っ飛ばしたら、縫姫……いや、親父が飛び出てきたんだな

玻璃

 だから、香田君、お世話になります

美香

 ほげええええええええええええ!?

 美香は僕みたいな叫び声をあげた。

 さて……私はそろそろ帰ります

 えぇ、今日は株主総会がーとかテキトウに言ってきたので、まぁ帰りが遅くても問題はないですけどね

 私の予想だと、もう決着ついてると思いますし

 はい、じゃあ、また呼んでもらえたら来ますよ

 ……え? あぁ、そうですよ。ケンは知らないです。
 えぇ、病気で死んだのが本当のお母さんだと思ってますよ

 そりゃもう、まさかケンも、親が離婚してるなんて思わないでしょうから

 えぇ、それでは、またこんど……

 はい、さようなら、美咲野さん

 あ、それとも当時のようにケープさんと呼んだ方がいいでしょうか

 それとも、昔のように、お母さん、と呼んだ方がいいのでしょうかね。
 いつも迷います。

 それでは、また会いましょう

その8-6 おしまい

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