最後の自分の書き込みに、既読通知が付いたのを確認した音耶は恵司にメールを入れる。「一通り揺さぶるだけ揺さぶってみた。自称“アーティスト”を名乗り始めたから対抗してみた」。色々とそれっぽく書いたことによって、さほど頭が良いというタイプではない長岡は雑でも引っかかるだろうと音耶は判断したのだ。
すぐさま恵司からの返信メール。「埴谷が固まってる」。どうやら埴谷も音耶の書いたSNSのやり取り――埴谷からすれば恵司が書いたのかもしれないが――を信じたのだろう。
全てを知っている双子からすれば悪戯を仕掛けてやったのと相違ない感覚ではあるが、周りからすれば双子が彼らにとってデリケートである事件を軽々しく扱うわけもないと思っている。だからこそ、冗談でも深刻に思われるのだろう。しかし、当の双子はなんてことないというように振る舞っている。