タキ

これは……紙?

ミヤ

ええ……前のタキちゃんに託したはずの、
モールス信号が書かれている紙よ。
どうして石灰袋の中に……

ミヤ

滝沢 多岐は 滝沢 多岐

だから私を 諦めない

タキ

……なんだこりゃ。
どういう意味だ?

ミヤ

……

ミヤ

さあ、わからないわ。

ミヤ

モールス信号にも変わりはない
みたいだし……単なるメッセージかも。

タキ

はあ?ちゃんと考えなきゃ
ダメだろこういうのは!
出れなくなるかもしんねーだろ!

ミヤ

いいのよ。この上の文は私が書いたの。
下の文はおそらく、前のタキちゃんの返答。
だから……他意はないわよ。

タキ

なんでそれをお前が受け取れるんだよ……
ああ、わっかんなくなってきた、クソ!

ミヤ

ふふ。まあ、もう脱出しましょう。
こうしていても時間が過ぎるばかりだわ。

タキ

ったく、めちゃくちゃだぜ……

ミヤ

そうね。まったくね。

タキ

お、やっと笑ったな?
いい顔してんじゃねえか。

ミヤ

そうかしら。

タキ

いっつもこーんなしかめっ面ばっか
だったもんよ、お前。

ミヤ

そんなに変な顔してないわよ。

タキ

はは、ほらな。

ミヤ

あっ……

ミヤ

もう。

タキ

はは。これから先、お前とだったら
上手くやれそうな気がするよ。

ミヤ

これから先?

タキ

考えてなかったのかよ。脱出した
先だよ。現時点で一緒にいる組が
同じ人生を歩むとかじゃねえのか?

ミヤ

あ、ああ……そういうことね。

ミヤ

そういうことになるかもしれないなら……
今後ともよろしくね。タキちゃん。

タキ

おう。
じゃあ、白線を引くぞ。

ミヤ

ええ。

タキ

……よし。

ミヤ

いいわね。

タキ

じゃあ……帰るぞ。

ミヤ

ええ。

ミヤ

タキ

あっ……

タキ

いや……この手はな、えっと……
無意識で……

ミヤ

……ふふ。嬉しいわ。

ミヤ

ありがとう。

タキ

うう……

タキ

ま、まあ気を取り直して……
帰るぞ。あたしらの時間に。

ミヤ

ええ。私達の明日に――

つづく

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