タノミ先生

それでは。今回は妖怪、『風狸(ふうり)』について紹介するわよ。

清志郎君

ふうり、ですか。
風鈴の九十九神か何かですか?

タノミ先生

夏に重宝されそうな妖怪ね……って違う!

タノミ先生

「風」の「狸」と書いて「ふうり」よ。
他にも、「風生獣(ふうせいじゅう)」や「風母(ふうぼ)」とも呼ばれているらしいわね。

タノミ先生

その名の通り、狸ほどの大きさをしているそうね。ただ姿は猿に似ていて目は赤くて尾は短く、ヒョウ柄をしているらしいわ。

清志郎君

聞いたことないですね

タノミ先生

確かにマイナーな妖怪ね。

タノミ先生

でもここではマイナーな妖怪も差別なく紹介していくわ

タノミ先生

君には、こんな妖怪もいるんだーってことを知ってもらいたいからね

清志郎君

僕、数えるほどしか知らないですよ

タノミ先生

だから、これから知ってもらうの!

清志郎君

はあ……

タノミ先生

それに私ね……

清志郎君

タノミ先生

この妖怪はもっと皆に知られてしかるべきだと思うの!

清志郎君

は、はあ……

タノミ先生

それほど、この妖怪は面白い特徴を持っているわ。

タノミ先生

まずこの妖怪。
夜に活動するんだけど、木々の間を鳥の様に滑空するの。

清志郎君

ムササビみたいなやつですね

タノミ先生

その最大飛距離は山一つか二つ分!

清志郎君

ムササビというか鳥!?

タノミ先生

面白いのはここからよ。

タノミ先生

この妖怪。人に捕まるとね……

タノミ先生

可愛らしい仕草で憐れみを請ってくるのよ

清志郎君

……へ?

タノミ先生

こんな風に

タノミ先生

可愛らしくてそれでいて、どこか恥ずかしそうにするらしいわ

清志郎君

なんだか……小動物っぽいですね

タノミ先生

まあ狸くらいの大きさだし、あながち間違いでもないかもな

清志郎君

そういえば、どの名前にも「風」が入ってますね。
なにか関係あるんですか?

タノミ先生

うむ。それはこれから説明しよう。

タノミ先生

この妖怪のもう一つの特徴。

それが強い生命力だ!

清志郎君

へえ。どれだけ叩かれても死なないとか?

タノミ先生

いや? 叩かれたらすぐに死ぬ

清志郎君

クマムシ!?

タノミ先生

ちょっと言い方が悪かったかな?

タノミ先生

叩かれると簡単に死ぬが、風が口に当たるとすぐに生き返るんだ

清志郎君

い、生き返るんですか?

タノミ先生

また、刃は通らず火も平気らしいな

清志郎君

なるほど。確かに強い生命力を持ってますね

タノミ先生

阿部御主人(あべのみうし)は正直に火鼠の皮衣を探すのじゃなくこいつを探せばよかったのかもな

清志郎君

? 何の話ですか?

タノミ先生

なに。ただの与太話さ。

清志郎君

いや先生。今までの全て与太話じゃ

タノミ先生

シャラップ!!

清志郎君

いたい

タノミ先生

あ、でも。骨か頭を砕くと生き返れないらしいわ

清志郎君

なるほど

清志郎君

じゃあ、僕が風狸なら今ので死んでますね

タノミ先生

ほう。君の頭は軽いチョップで砕けるのか。

タノミ先生

脳みそがつまってない、いい証拠だな。
どれ。補習で詰め直させてやりましょうか

清志郎君

うわわ、冗談ですよう!
ほら、さっきと同じ! 与太話!

タノミ先生

都合のいい所だけを真に受ける。
それが大人というものだよ、清志郎君。

清志郎君

反面教師にもほどがあるー!

タノミ先生

ああ、あと。菖蒲を鼻につめても生き返ることなく死んでしまうらしいな。

清志郎君

しょ、菖蒲? ですか?

タノミ先生

菖蒲は古くから邪気を払う植物とされてきたからな

タノミ先生

まあ、そこはやはり妖怪だということだろう

清志郎君

(ああ。菖蒲って植物なんだ。どんな植物なんだろう)

タノミ先生

まさか、菖蒲を知らないわけじゃあるまいね?

清志郎君

ま、まさか。そんなことないですよ!

清志郎君

ここで「知らない」なんて言ったらまた話が長くなるから、あとでネットで調べよっと。

タノミ先生

まあいいか。

タノミ先生

とりあえず、こんな個性ある可愛い妖怪!
妖怪界のマスコットになってもいいと思うんだ!!

清志郎君

まあ確かにそうですね。

清志郎君

少なくとも前のから傘お化けよりは可愛らしいですね。

清志郎君

妖怪界のマスコットになるかは知らないけど

参考文献
角川文庫 日本妖怪大事典 編著:村上健司
角川ソフィア文庫 画図百鬼夜行全画集 著:鳥山石燕

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