僕は勇者になんか、なりたくなかった。

 


なりたく……なかったんだ……。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
今、世界は大混乱に陥っている。

なぜなら、
魔王が復活したから――。


そしてその影響により、
魔族や魔物たちが力を増大させ、
各地で暴れているのだ。

人間は必死に抵抗しているけど、
その圧倒的な力の前に大苦戦。

そんな時、白羽の矢が立ったのが僕だった。

 

 
今から300年くらい前、
世界は同じような状況に陥った。

その時、
魔王を倒して世界の危機を救った勇者こそ、
僕のご先祖様なのだ。




だけど――



僕はご先祖様じゃないし、戦いだって嫌いだ。

それなのに『血を受け継いでいる』という
ただそれだけの理由で、

僕は否応なしに
勇者にさせられてしまったんだ……。


 
 
 
 
 
 
 
今日、僕は生まれ育った村から
勇者として旅立つことになった。

村人の全員が見送りのため、
広場へ集まっている。
 
 

我らの希望、
勇者様の華麗なる旅立ちだー!

勇者様、バンザーイ!

ゆうしゃさま、ばんざーい!!

アレス

…………。

長老

我らが勇者、アレスよ。
憎き魔王を倒し、
どうか世界を救いたまえ。

アレス

あ……その……。

ミリー

長老様、ご安心ください。
我ら傭兵団が勇者様をサポートし、
必ずや魔王を倒してみせます。

ネネ

まー、大船に乗った気でいなよ~。

ジフテル

では、我らはそろそろ
出発いたします。

長老

頼みましたぞ!

ミリー

さぁ、勇者様。参りましょう!

アレス

う……うん……。

 
 
みんなの声援を背に受けつつ、
僕は村から旅立った。


長老様がおカネで雇った傭兵3人とともに……。
 
 

ミリー

彼女は剣士のミリーさん。

僕と大して年齢が変わらないのに、
(僕は14歳、ミリーさんは16歳)
王国主催の武術大会で
かなりいい線まで勝ち残ったという
強者らしい。

ネネ

彼女は戦士のネネさん。

世界的に有名な傭兵団にいた時は、
部隊長を任せられたこともある
戦いの達人らしい。

年齢は22歳。

ジフテル

彼は魔法使いのジフテルさん。

知識に長けていて、
戦闘経験も豊富。
実質、このパーティーの
リーダー的な立場かな……。

年齢は18歳。

アレス

そして僕――アレス。

何をやってもドジばかり。
うまくやっていけるのかなぁ……。

ミリー

勇者様、どうなされたのです?
そんな浮かない顔をして。
もしかして、
緊張していらっしゃるのですか?

アレス

え……あ……う……。

ジフテル

初めての冒険の旅、
緊張するのも無理はありません。
でも勇者様、
我らがついております。
どうかご安心を!

ネネ

そうそう!
もっと肩の力を抜けって!

アレス

うん……。

ジフテル

まぁ、時間が経てば
落ち着いてくるでしょう。

 
 
 
 

ジフテル

………………。

ミリー

………………。

ネネ

………………。

 
こうして僕は魔王を倒すため、
仲間たちとともに冒険の旅へ出たのだった。
 
 

 
 
 
次回へ続く……。
 

第1幕 伝説の始まり

facebook twitter
pagetop