シンディ

「本を探してほしい」。
謎の少女にそう依頼されたライナー君。
彼は少女のために、喜んでパシリをすることになった。

シンディ

その本の名は「ラテシン国物語」。タイトルからしてファンタジー小説なのだが、その実態は現代の血みどろの三角関係を描いた現代小説なのだ。

シンディ

少女といちゃこらしながらも、なんとか2階の現代小説コーナーで目的の小説を読んでいる人を発見。物語は終わりを迎える、かに見えたが……

シンディ

しかし、この後あんなことが起ころうとは……
衝撃の結末が、今ここに!

ライナー

これまでのあらすじを語るのに変な脚色を加えないでもらえるかな。
パシリじゃないし、いちゃこらしてないし。

ライナー

まあ確かに、「ラテシン国物語」っていうタイトルの割に現代小説だというのは気になったが……

シンディ

ある意味それも「思い込み」だからね。タイトルなんて、よほど変なものでなければ、著書が自由に付けるものだし。

ライナー

ふぅん、しかし、こんなタイトルだと、ファンタジー小説だと思って借りてしまう人がいそうだな。

シンディ

現代小説コーナーに置いているのに?

ライナー

いやまあ、それはそうだけど……

シンディ

まあ、この話の作者の些細なミスはおいといて……

ライナー

一応ミスだったんだ。

ライナー

とりあえず、本は見つかったし、これでこの問題は解決したのだろう?

シンディ

そんなわけないじゃないか。

ライナー

え?

シンディ

ライナー君は、図書館に行ったら、本を見つけて満足する人なのかい?

ライナー

いや、普通はその本を読んだり、借りたりするけれど……

シンディ

だろう?

シンディ

確かに問題文には「本を探してほしい」とは書いているよ。
でも、登場人物の目的としては、「本を見つけて、それを読む」ことだったり、「本を借りること」だったりするかもしれないじゃないか。

ライナー

いや、だってシンディは「この問題は本を見つけることが目的」って言ってたじゃないか。

シンディ

それは「亀夫君問題」がどういうものであるかを説明するために、問題文から説明しやすい言葉を選んだだけだ。

シンディ

亀夫君問題は、あくまで「登場人物の目的を果たすこと」が目的なんだ。
カメコの依頼は「本を探してほしい」だけれど、目的は「本を借りたい」ことだと考えるのが普通じゃないのかい?

ライナー

まあ、確かにそうだね。

シンディ

これは出題者にも言えることだけれど、亀夫君問題は「登場人物の目的が何なのか」をしっかり押さえておかないと、とんでもない方向に行ってしまうよ。
目的を果たすための依頼なのだから、きちんと目的を果たすまで付き合う必要があるんだ。

ライナー

……ということは、見つけた本を借りるところまで行かなければ、問題解決とはならないのか……

シンディ

問題文にも、「本を借りに来た」って書いてあるしね。

ライナー

そういえばそうだったな。
しかし、人が読んでいる本を勝手に持っていくのははばかられるな。
読んでいる人にわざわざ声をかけるのもあれだし……

シンディ

現実では本を読んでいる知らない人には声をかけづらいだろうね。

シンディ

しかし、亀夫君問題では周囲の人に聞くことは重要だよ。
別に何かペナルティがあるわけでもないし、とにかく聞いてみるのは一つの手だよ。

ライナー

知らない人から話しかけられてあっさり答えてくれるなんて、モブは人がよい人ばかりなのかい?

シンディ

あくまで問題の中なのだから、基本的に周囲の人にいろいろ聞くのは問題ないよ。
問題や出題者によっては、わざわざ「周囲の人は気さくなので話しかければいろいろ答えてくれます」と書いてくれているものもあるしね。

ライナー

たしかに、現実とは違うのだし、話しかけて反応を見たり、お願いしたりするのはありなのか。

シンディ

ちなみに、登場人物が複数人いて、こちらから直接その登場人物に聞く方式のものもあるけれど、周囲の人には登場人物に聞いてもらうのが一般的かな。
最初のほうで、ライナー君がカメコに司書から話を聞いてくれるように指示したみたいにね。

ライナー

よし、せっかく見つかった本だし、思い切って聞いてみよう。

ライナー

カメコさん、「ラテシン国物語」を読んでいる人に、その本を譲ってくれるように交渉してくれませんか?

カメコ

譲ってくれるようお願いしてみたわ。
でもこの本、今日借りるから駄目だって。

ライナー

え……

シンディ

残念だったね、せっかく解決したと思ったのに。

ライナー

いや、だって、貸し出し可能なのはこの1冊だけだろう?
これを借りられたら、手の打ちようがないじゃないか。

シンディ

そうやってすぐに諦めるのが、ライナー君の悪い癖だよ。

ライナー

だから君は私の何を知っているというんだよ!

シンディ

いや、だって「ウミガメのスープ」の時もすぐ諦めようとしていたし。

ライナー

あの時とは状況が違うと思うのだが……

シンディ

まあ確かに、貸し出し可能な本はこれ1冊なのだから、これを借りられてしまっては困るわけだが……

シンディ

さて、この状況をどう打開する?

ライナー

うむむ……ここはどうしてもこの本を譲ってもらわなければ……

ライナー

カメコさん、なんとかその人に、「ラテシン国物語」を譲ってもらえるよう、必死にお願いしてくれませんか?

カメコ

……ダメね。その人はもう本を借りて出て行っちゃったわ。

ライナー

えっ、それじゃあこの問題、解決できないじゃないか!

シンディ

あーあ、最後の一冊、借りられちゃったね。

ライナー

うぬぬ……このままでは終われないな。
もう一度、貸し出し状況を確認してみよう。

ライナー

カメコさん、1階に降りて、司書の人にもう一度「ラテシン国物語」の貸し出し状況を調べてもらってください。

カメコ

2冊とも貸出中になっているわ。

ライナー

あちゃぁ……やっぱりダメかぁ。

シンディ

おや、もう降参かい?

ライナー

いや、だって本がなければ借りようがないじゃないか。

シンディ

やれやれ、この程度で諦めていては、すぐに人に騙されるような人生を送る羽目になってしまうよ?

ライナー

なんで君が私の人生まで考えるのさ。

シンディ

いや、別に私はライナー君の悲惨な人生なんて興味はないのだけれど。

ライナー

別に悲惨な人生を歩んできたわけではないし、これからそうであってほしくはないが……

シンディ

ライナー君の人生はともかく、この状況でも、ちゃんと打開策は準備してあるよ。

ライナー

あ、やっぱりまだ何かあるんだ。

シンディ

そりゃまあ、そうじゃないと問題にならないし、それが何であるのかを考える問題だからね。

ライナー

うむ……魔法でも使えればな……

シンディ

NO. この問題に非現実要素はないよ。

ライナー

君が答えるか。

シンディ

どっちが答えても同じだろう。

シンディ

ライナー君も困っているようだし、次回はちょっとヒントでもあげようかな。
それまでにライナー君は、ほかにできることはないか、考えておくことだね。

【今回のまとめ】
・登場人物の目的ははっきりしておこう。問題文中に書かれていることがすべてとは限らない

登場人物の目的を把握する

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