召喚魔法。
召喚魔法。
異世界から強大な力を持つ存在を呼び出す魔法です。
とは言っても先方にも生活や仕事などの都合というものがあるので、呼び出すだけで謝礼が発生します。
例え謝礼が発生しても、大事な仕事の最中だったりすると攻撃されたりする非常にリスキーな呪文です。
ですが今回は巨大怪獣相手です。
手段など選んでられません。
今回はエメラルドの破片で呼び出してみようと思います。
場所は領主の館の応接間。
広いですし、なにかあっても隠蔽するにはもってこいです。
というわけでシルヴィア。
魔力放出!
らじゃなのだ
私は召喚呪文を唱えます。
さいたまさいたまさいたまさいたま埼玉さいたまさいたまさいたまさいたまさいたまさいたま埼玉……
なんだそのテキトーな呪文は?
なに言ってるんですか!
私の開発した魔導言語SaitamaF※CKですよ!
『埼玉』と『さいたま』の6字で全てを記述でき……
なにをやっているのだ……この狂人が!!!
な!
ひでえ!!!
まったく。
これだからシルヴィアは派手な攻撃呪文しか覚えられないのです。
魔導の奥義はこういうサポート呪文にあるんですよ!
まったく!
はい出力増やして。
召喚相手は商人!なるべくレベルの高い装備を扱える商人を呼びますよ!
さいたまさいたまさいたまさいたま埼玉さいたまさいたまさいたま……
ゲートが開きますよ!
バチバチとプラズマを発生させながら、空間に亀裂が生じました。
煙のようなものが亀裂から噴き出してきます。
私は亀裂をもう一つの世界に繋ぎます。
そのまま私は扉をイメージ。
開いた異次元へのゲートに魔法で作った扉を出現させ固定します。
そして、がちりという気持ちのいい音がしました。
空間が繋がったようです。
召喚魔法は成功です。
はーい。なんですかー?
※すみません。プードルありませんでした。
私の開けた次元の扉の向こうから声がしました。
ピコピコという音もします。
なんだか緊張感のない声です。
いえ侮ってはいけません。
これから相手と交渉せねばならないのです。
相手が姿を現しました。
全身を覆う真っ巻き毛。
ふわふわの尻尾。
申し訳程度についた角。
白い羽。
それは見た感じワンコでした。
普通に喋るヤツ。
マクスウェルなのです!
ワンコが元気よく挨拶しました。
なにこのかわいい生き物!!!
そうですか。もっと凄い武器が欲しいと
マクスウェルがうんうんと頷いてます。
それに連動して尻尾がピコピコと揺れています。
どうやらこのワンコ、異世界の商人なんだそうです。
でもどう見ても武器とかを扱ってる様子はありません。
扱っているのはおもちゃとかじゃないでしょうか?
どうやら魔法は失……
わかりました!!!デラックスな武器ですね!
失敗しなかったようです……
武器あるんですか?
はいー。
えっとお支払いはそこのエメラルドですか?
そう言うとマクスウェルは支払用に置いておいた大きめのエメラルドを指さしました。
話が早くて助かります。
はい。
これですとどういったものが購入出来ますでしょうか?
これはすごいですねー。
天然物です!
マクスウェルは一目で宝石の真贋とその価値を見抜きました。
……なにこの子すごい!
えーっとそのクラスの宝石になりますと……コ○ニー落としはどうでしょう?
はい?
はい?
なんだか恐ろしく物騒な単語が出てきました。
怪獣のついでに魔族含めた人類まで掃討しそうなやつ。
マクスウェルは全く邪気のないニコニコとした顔です。
6万メガトンの圧倒的火力なのです。着弾点の周囲500キロを消滅させるのです
なにその大陸破壊兵器!!!
それ使ったらこの町まで消滅するがな。
私は慌てて提案を拒否します。
そんな人類皆殺し装置はいりません!
そうですかー。
そうなると難しいですねえ。
そうなると宇宙空母とかー。
気象兵器とかー。え
たーなるふぉーすぶりざーどとかー。
全て人類全てを滅ぼすことのできそうな兵器です。
ここで私はようやく理解しました。
どうやら取引してる相手は超絶危険人物のようです。
悪意が全くないのが逆に恐ろしいです。
あ、○邦軍全兵器セットはいかがで……
いりません!
そうですかー。
でも大量に余ってる倶利伽羅もエクスカリバーもそのエメラルドですと安すぎますし……
へ?
いまなんつった?
えっと今なんと?
っきゅ?
聖剣はただいまセール中なのです?
そう言うとマクスウェルは何も無い空間から剣を抜き出しました。
っちょ!
今普通に異世界から剣を召喚しましたよね!
はい。サンプルです。差し上げます
そう言うと剣を私に差し出します。
ほ、本物?
私は相棒の方へ目をやります。
こういうのは侍に聞くのが一番なのです。
本物……だろうな。
剣から感じる気がお前の宝剣とは段違いだ。
量産品ですけど性能は同じですよー
マクスウェルはそう言うとニコニコとしてました。
りょ、量産出来るのか……すげえ。
私はマクスウェルに恐る恐る聞きます。
おいくらで?
一振り1万さいたまクレジットなのです。
えっとこっちの通貨だと……分析しますので金貨を一つかしてくださいな。
私が金貨を渡すとマクスウェルが何もない空中に魔法陣を展開、分析魔法で金貨を検査しました。
このワンコ!できる!
おおー。
金の含有量多いですねえ。
これだと1枚で12本、おつりもあるのです!同じクラスの防具もいりますか?
買った!
守備兵団分買った!!!
支払いはこの金貨で!
私は血走った目で即決しました。
全部で302本。
私個人に渡された持参金だけで買えます。
しかも防具まで付けてくれるのです!
これで最強兵団に一歩近づくのです。
ぐあーっはっはっは!
お買い上げありがとうございますなのです。
でもー、現在の在庫の状態だと他の聖剣も混ざってしまいますけど、いいですか?
数が揃えばなんでもいいです
302本も伝説の聖剣の在庫があるお店。
すでに私はツッコむのも考えるのをやめました。
そういうものがあるんですねー。
凄いやー。
さすがさいたまー。
私はなにも考えないようにしつつ代金を払いました。
はいー!
ありがとうございますー。
これでお母さんに怒られなくてすみました。
作りすぎて困ってたんです。
この超危険生物を叱るお母さん。
きっと最強の生き物に違いありません。
売れないとお父さんがサソリ固めされちゃうところでした……
お父さん……
私は涙が止まりません。
異世界でもお父さんは立場が弱いんですね……
なにこのけなげな子。
私はワンコへ急に親近感を感じると、もう一つの用事を思い出しました。
あ、そうそう。
あと……申し訳ないのですが食料とかも扱ってます?
私は恐る恐る聞きます。
いい加減、食料がないと死人が出ますからねー。
はいー。
うちはショッピングセンターなので食料品はたくさんあるのです。
ピコピコとワンコが跳ねました。
この生き物お持ち帰りしたい!!!
私はこのモフモフを温かい気持ちで見てまし……って……ちょっと待て、いま何つった?
ショッピングセンター?
はいー
ニコニコと微笑むワンコ。
凄いんですよーと言いたいみたいです。
私もつられてにっこり笑います。
どうやら私はとんでもない当りを引いたようです。
私は内心の邪気を悟られないように声を抑えて言いました。
少し震えていたのは内緒です。
ここにゲート固定していいですか?
また取引をお願いしたいので。
はいー。
いいですよー。
それではお友達メダルを作……
ゲートを固定するのですー!
私がギリギリのネタを言い終わる前にワンコが両手を挙げました。
すると不安定だったゲートがぴしっという音と共に一瞬で空間に固定されました。
うわーお!
すっげえな!
今の魔法ですか?
はいー。この本に出てました!
ワンコがまたもや何もない空間から出した新品の本を差し出しました。
なになにクラウディア・ザカリアス著『白魔法』。
なるほど白魔法か!
ちょっと苦手な分野なんですよねえ。
でも、こんな小さな子がここまで使えるようになるのですから良書に違いありません。
欲しいなあ。
でもお高いんでしょ?
どれどれお値段は……1600さいたまクレジット。
安ッ!!!
売ってください!
はいなのですー!
そして私たちは新しい魔道書に凄い装備に食料……全て確保完了しました。
しかも相場の半分以下。
今日の私はいいことばかり起こります。
この商人さんとはぜひ今後もおつきあいしましょう!
あ、そうそう。
そちらのお店の名前は?
バハムートショッピングプラザなのです!!!
こうして領主の館にショッピングセンターへの門ができました。
冷凍タコ焼きからコロ○ー落としまで。
なんでも揃う物欲の殿堂。
魔導マネーでかんたん決済。
物々交換も可。
お買い物ならバハムートショッピングプラザ。
……もはや細かいことを考えるのはやめました。
こうして我々はさらなる死闘を繰り広げることになるのです。
第一部 完