さて、これからどうしょうか
さあ……とにかく進むしかないですね
そう言われても、このただっぴろい草原を当てもなく歩くのは厳しいと思うよ?
何か目標が見えていれば良いんだけどね。
目標ね、目標。
うん、とりあえずご飯を見つけよう!
とりあえず、何をするにもご飯です!
お金ではなくて?
ご飯がなければお金を食べればいいじゃない!
は?
アニスちゃん、突っ込み弱い! そこはお金は食べられないよっ! って言う場面でしょ
少し頭が回りませんでした
まだまだ精進が足りないね!
そのような精進は必要ないです
まったくこの羊はウールだよ!
……クールでは?
うむ、よく出来ました!
さ、しゃべっている暇があれば、足を動かしましょう
そしてアニスちゃんはどんどん一人で先に歩いて行きます。
わ、わ、ちょっと待ってよ!
そして、三時間くらい歩いただろうか。
やっぱり周りは草原。
しかもあたしが歩くたびに、足下から
いたっ!
踏むなよ!
今日は厄日だ
パンツ見えるぜぐへへへへへ
という声が聞こえてくるのよ。
うるさくてかなわない。
最後のは、とりあえず二度踏みしてしまったけどね。
アニスちゃーん、疲れたよー
私は別に疲れていませんよ。というか、デミゴス様がお作りになられたこの肉体は疲れないはずですが
精神的に。だって風景が全然変わらないんだもん。つまんなーい。それよりアニスちゃん、よく疲れないとかそんなこと知っているね
知識として記憶されていましたよ? ファルティラさんは知らないのですか?
ぜんぜんまったくこれっぽっちも
あのガキ、あたしだけ差別したな!
今度会ったら二度殴る!
じゃあこの世界の地理とか頭に入っていないの?
入ってますが、現在位置がわかりませんので不明です
あの少年も不親切だね。頭の中にGPS埋め込んでおいてくれてもいいのに。それにしてもおなかすいたー
ファルティラさんは植物を急成長できるのですから、何か育ててみては? ほら、そこにヘビイチゴが
毒あるじゃん!!
でも植物を育ててみるってのは良い案かもね。
何か食べられそうなものってあるかな?
てくてくと歩きながら足下を見つつ、食べられそうなものを探す。
しかしこんな草原に、食べられそうな植物って生えているのかな?
って、あったよ! メロンだよ?!
い、いやひょっとしたらメロンに似た何かかもしれない。
でも、あたしの頭には
\\メロン//
という文字が浮かび上がっている。
アニスちゃん。ここってメロンも生えるの?
え? どこですか?
ほら、あっちの下のほうに
……ほんとですね。こんな草原に出来るものなんでしょうか
ま、細かい事は置いて、早速収穫だよっ!
あたしはメロンの側へ近寄り、おもむろに蔦からメロンを引っ張って引きちぎろうとしたら……。
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい
きゃぁ?!
ど、どうしたのですか? そんな似合わない可愛らしい悲鳴を上げて
似合わないってなによっ!
そうか、植物の声が聞こえるって事は、それを収穫するとき断末魔が聞こえるって事だよね。
うわーうわーうわー。
ど、どうしよう。これじゃ罪悪感たっぷりすぎるよ。
全くやっかいな能力をつけてくれて!
あの、アニスちゃん
どうかしました? 採らないんですか?
アニスちゃんがもいで欲しいな
…………??
不思議そうにしながらも、メロンに手をかけるアニスちゃん。
あたしは目をぎゅっと塞ぎ、耳を両手で押さえてそしてさらに息を止める。
ぶちっ!
何やら痛々しい音が頭に鳴り響いたあと、
ぎゃぁぁぁ…………、我がメロン生に一片の悔い無し!
と微かに声が聞こえた。
メロン生って何だろう。
語るほどメロンって長生きするんだっけ?
はい、採れまし……って何やっているんですか
うん、ちょっとメロンの人生について考えてた
は?
まあいいです。
とりあえずこれで食料は確保できた!
あとは包丁で切って……包丁……。
アニスちゃん、包丁ない?
ありません。が、私は戦闘能力が与えられている模様ですから、手刀で切ります
しゅぱしゅぱ! という音と共に四つに切られるメロン。
なにそれかっこいい! あたしにも教えて!
これ覚えたら包丁要らずじゃない!
それに、またつまらぬものを切ってしまった、何てことも言えるし!
二百年くらいかかりますよ
何でそんなに?
手を鍛えるのに五十年、真空波を生み出せるくらいの速度を出すのに八十年、それを自在にコントロール出来るまで七十年ですね
えぇ~~そんなにかかるのやだ
諦めましょう。それよりせっかくの採れたてですから、早速頂きましょう
採れたてぴちぴちの新鮮なメロン死体だしね!
……あれ? なんか妙に感情移入しちゃったかな?
ま、別にいいか。
アニスちゃんから一切れ貰い、色具合を見てみる。
熟れたて果実だね。とってもおいしそう。
いっただきまーーーす!
いただきます
うわっ、あまっ!
これはおいしい!
こりゃ! お前ら誰の許可を取ってここで食っとる!
夢中で食べていると、空から怒声が届いた。