世の中には、『地の文』というものがあるという

なんだい兄さん、今回はちょっと真面目な話題じゃないか

うむ。今まで我々はその地の文とやらを試していないと聞いてな

そうだね。僕らは台本として生まれたから、元々地の文が存在しないんだよ

ほうほう

それがこの場所でどこまで出来るのか、通用するのかを実験、というのが僕らの投稿されて理由さ

悲しき実験体か

ただ、幸運なことに今現在お気に入り10、閲覧約500と好調なんだ

ならば、我々は安泰だな!

そうでもないよ兄さん
現状飽きられてるし

お、お前そんな身も蓋もない……!

だからこれからも僕らは気を抜かずに頑張るべきなのさ

ふーむ、それで俺の机に地の文と書かれた紙切れが……

そのようだね

では弟よ、早速この地の文というものを兄に説明してみろ!

はいはい。兄さん、小説は読むかい?

読まん

そう……

じゃあ、どう説明しようかなぁ……。あ、兄さん、言いたい事があるんだ

どうした、弟?

兄さん……大好きだよ

っ!? お、おお!! 我がラブリーブラザー弟よっ!

 緊 急 回 避 !!

おぼごげぇ!

何故避ける!? 好きなんだろう!?

そうだね、うーん……

兄さん

なんだ!?

大好き☆

おおおおおお!! 愛しの弟よぉぉぉ!!

ここで、地の文発動


 四畳半の狭い部屋の中、兄は両腕を広げて今まさに弟を抱きしめんと飛びついて来た。
 兄の腕、胸板、顔……
 徐々に迫ってくる肉体をするりと躱すように、弟が身を翻した。

 緊 急 回 避 !!


 迫りくる兄とタンスの間、わずかに残った脇の隙間から弟が横に飛びずさる。捕獲すべき目標を見失った兄は、勢いそのままにタンスと熱い接吻を交わす事となった。
 タンスまでもが兄を拒絶するかのように、上に置かれた荷物の数々を兄目掛けて落としていく。

おぼごげぇ!!


 兄がカエルの断末魔のような叫び声をあげ荷物の山に消えた。弟がその小山の前に立ち、汚物を見下すような目をして兄に声を掛ける。

これが地の文。わかった?

その前に助けようよ、な?

しょうがないなぁ

あだだだだ、痛い目にあった。だが、地の文に関しては少しはわかったぞ

へえ、兄さんにしては理解が速いね

うむ、早速兄も地の文をやるとしよう。いくぞ

兄さん……。弟は目を潤ませて上目遣いで見つめている。
「解っている、弟」
そういったハンサムでダンディな兄は、弟の上着にそっと手を掛けた。
「あっ…」
弟の吐息が漏れる。その口を塞ぐようにして兄は……

あにはぁぁ!?

あ・・・ぐあ、、、

何がいいたいかは、わかるね?

ごめんなさい……

しかも地の文にもなってないよ兄さん……。本当にバカなんだね……

なんだとー!!

よし! 兄は地の文を極めるための旅に出る! 止めるな、弟! さらば!!

・・・。

・・・。

チラッ

速くいきなよ

う、う、う……

止めてくれたっていいじゃないか!
弟のバカぁぁぁぁぁ!!

ようやく行ったか。やれやれ

 弟が、兄が出ていったふすまの奥に目を遣りながら、呆れたように呟いた。
 ふと視線を戻すと、兄の携帯電話が先ほど落ちたタンスの荷物の中に紛れていることに気がつく。小さく息を吐き、携帯電話に手を伸ばす弟。
 それをポケットに乱暴に押し込むと、兄が向かったであろう近所の書店へと小走りに駆けていった。

ま、今回だけはね

続く

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