かずき

しっかし、ついてないよなー

かずき

せっかくお前と決着つけるつもりだったのに

なおと

しかたねえよ、天気予報でもずっと雨っていったしな

放課後の教室。
掃除当番の私たちはほうきを手に持ちだらだらと話していた。

はるみ

さすがのかずきも雨の中で遊びはしないんだ

かずやはいつもはしゃいでいるから、
雨でもふつうに外で走り回ってそうだ。

かずき

うるせーな、しゅんは黙ってろよ

はるみ

わたしははるみ!何回間違えてるのよ

しゅんやは私の兄だ。
ほんとに何回間違えれば気が済むのだろう。

かずき

うるせー、顔に名前でも書いとけ

なおと

その辺にしておけ、またはるに泣かれるぞ

はるみ

わたし泣いたことない!

なおとまで私のことをバカにする。

かずき

こないだ先生に怒られて泣いてただろ
やーい、泣き虫はるー

はるみ

ううぅ

二人していつも私をいじめる。
視界が少しにじんできた。

はるみ

うるさいばかー!

必死に隠すため教室を飛び出してしまった。
あの二人にこれ以上バカにされたくない。

かずき

やっぱり泣いてんじゃねーか

なおと

かずき、またしゅんに怒られるぞ

かずき

男同士の話に入ってくるからいけないんだよ

後ろからそんな会話が聞こえてくるが聞こえないふりをする。
このままだとほんとに泣き出してしまいそうだ。

はるみ

ぐすっ、二人のバカ。もう遊んでやんないんだから

ダーン ダーン

はるみ

どこからか何かの音が聞こえてくる。
この音はー

はるみ

ボールの音かな?

はるみ

体育館に誰かいるのかな

私は履き替えようとしていた靴を下駄箱に戻し、体育館に足を向けた。

ダンダンダン

はるみ

やっぱりここからだ

居残りの子だろうか。体育館を使っていいなら私たちも雨の日の放課後遊べる。

はるみ

かずきに教えたらよろこぶかも

仲直りのきっかけになるかもしれない。

ダーン ダーン

音はいまだになり続けている。

はるみ

誰がやってるんだろ

私はドアを開けてみた。

はるみ

んしょっと

はるみ

あれ?誰もいない

いつのまにかボールの音も消えていた。

はるみ

気のせいだったのかな?

はるみ

私が体育館を見まわしていると、バスケットゴールの下にあるものが落ちていた。

はるみ

やっぱり誰か使ってたんだ

はるみ

でも、誰もいない。どこかから帰っちゃったのかな

ボール出しっぱなしにしておくと先生に怒られてしまう。

私は倉庫の中にボールをしまって体育館を後にした。

数日後

かずき

おーし、晴れた!

なおと

勝負だ!かずき!

その日は晴れで朝から二人は勝負勝負と騒いでいた。

かずき

負けねーかんな!

かずきとなおとはバスケットボールを持って校庭に出て行こうとする。

はるみ

私もまぜてよ

私が言うとかずきが嫌そうな顔をする。

かずき

俺となおとの勝負だって言ってんだろ。
入ってくんなよ

はるみ

私だってバスケやりたいもん!

かずき

へたくそがなに言ってんだ。反則ばっかりするしつまんなくなるんだよ

なおと

俺ははるが入ってもいいぜ

なおとは仲間に入れてくれる気のようだ。

かずき

お前と俺の勝負だろ。
こいつが入るなら俺はやんねーかんな

はるみ

うぅ

はるみ

かずきのバカ―!

また私は教室を飛び出してしまった。

なおと

かずき!今のはさすがにひどいぞ

かずき

うるせー。男同士の勝負に口出しするからいけないんだ

なおと

明日、ちゃんと謝れよ。
じゃないと勝負はしないからな

かずき

……

かずき

わかったよ。
勝負はまたにして明日はみんなでやろうぜ

なおと

ああ

はるみ

バカバカ

私はやり場のない怒りを下駄箱にぶつけていた。

はるみ

一緒に遊んでくれたっていいんじゃん。なんでいつも私だけ仲間外れにするの

もうかずきのことなんて知らない。
明日は口をきいてやらないから。

はるみ

ふう

少し気持ちが落ち着いてきたとき

ダーン ダーン

はるみ

あの音!

またボールの音が聞こえてきた。

はるみ

やっぱり誰か使ってるんだ

私は走って体育館に向かった。

ダーン ダーン

はるみ

まだやってる

今日こそ誰が使っているのか突き止めてやろうと思った。

私は躊躇せずに体育館の扉を開けた。

……

そこにいたのは眼鏡をかけた子だった。

はるみ

誰だろう。見かけない子だ

…!

その子は私に気付くと笑顔で駆け寄ってきた。

こんにちは

はるみ

こ、こんにちは

やっぱり見たことがない子だった。この違う学年の子だろうか。

はるみ

君、何年生?

僕?僕は5年生だけど

はるみ

同い年!?

それなら同じ学年のはずだ。見たことがないわけない。

はるみ

もしかして他の学校の子?
勝手によその学校入っちゃダメなんだよ

ははは

なにがおかしいのかその子は笑っていた。

ちょっとバスケがしたくてね

そういうその子の手にはバスケットボールが握られていた。

はるみ

バスケするの?

うん!大好きなんだ!

そういうとその子はボールを持って構えた。

テレビで見たことがある片手のシュートの構え方だった。

ほっ

その子の放ったボールは綺麗に飛んでいきゴールにすっぽりと入った。

はるみ

うわあ!すごい!

へへへ

その子は照れたように笑った。

でも、練習すればだれでもできるよ

はるみ

ほんと!

はるみ

お願い!そのシュートのやり方教えて!

あんなシュートを決められればかずきを見返してやれる

え?君もバスケやるの?

はるみ

一応、あんまりうまくないけど…

さっきへたくそまで言われてしまったため、あまりはっきりとは言えなかった。

大丈夫。
最初はみんなそうだから

僕だって最初はゴールに届かなかったし

はるみ

ほんとに?

さっきのシュートを見た後だとそんなこと信じられなかった。

やり方がわかればきっと君もできるよ

いっしょに頑張ろう

はるみ

うん、よろしく

体育館の少年 前編

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