四月の、ある日の午後。

 観想学園高等部・生徒会役員会議室では、物々しい雰囲気の中、何らかの話し合いが行われようとしていた。

二重まな子

それでさ。
会長、今日はなんで集められたワケ?
あたしお腹痛いから帰りたいんだけど。

 彼女の名は、二重(ふたえ)まな子。
 生徒会副会長であり、文武両道かつ性格も真面目。
 難点は、何かと腹が痛くなる事である。

一之瀬創

あらあら、焦ると余計にお腹が痛くなってしまうわよ?
まあ、いざという時は、そこに居るトイレを使いなさいな、二重副会長。

九重イカロス

"トイレ"とは失敬な。
儂は美少女の幸福に貢献したいだけだと云うのに。

 彼の名は、九重(ここのえ)イカロス。
 生徒会書記であり、高等部でありながらも90回の留年をしたという、生粋の天才である。
 変態な事でも知られる。

一之瀬創

貴方にセクハラされる方は、幸福だなんて微塵にも思っていないだろうけれど……。

四方正義

オラオラオラオラオラオラオラ!
(会長、話が進みませんよ。その辺にしておきましょう。)

 彼は、四方正義(よも・まさよし)という。
 生徒会書記であり、特異な情報圧縮言語を使いこなす、優秀な男である。

一之瀬創

ええ、済まないわね。

三條実

あ、お茶汲んできますよ! お茶!
どうせグダって長引くでしょうし!

 彼女は、三條実(さんじょう・みのり)。
 生徒会のお茶汲みマシーン兼会計である。温厚な性格だが、会長以外は、誰も彼女に逆らうことが出来ないらしい。

一之瀬創

ありがとう。
それで、何故会議を開いたのかと云うと……。

 そして、彼女こそが、観想学園高等部・生徒会長、一之瀬創(いちのせ・はじめ)である。
 現在は三年生だが、入学時から生徒会長として活動をしている。
 定期テストが免除されるなど、様々な特権を有している。

一之瀬創

ついに、"現われてしまったの"。

二重まな子

ま、まさか……!
(あぁ~お腹痛いなぁ~)

九重イカロス

美少女とスケベがしたいぞい!

一之瀬創

ええ、その"まさか"よ。
<因子(ファクター)>を持つ者……。
私と同様のチカラを持つ者……。

四方正義

オラオラオラ、オラオラオラオラ!
(なんと! そんな事が……。そいつは、男子生徒なんですかね? 女子生徒なんですかね?)

一之瀬創

男子生徒らしいわ。
まだ接触はしていないけれど。

九重イカロス

なんじゃと!? 儂はノンケだから、男じゃなくて美少女とスケベがしたいぞい。

二重まな子

すっこんでろスケベジジイ!(ヤバッ、漏れそう)

一之瀬創

茶番はその辺りにしておきなさい。
事態は切迫しているのよ。
高等部、ひいては学園全体の、"性的消費"の横行が危ぶまれるかもしれない……。

四方正義

オラオラオラオラオラオラ!
(まあ、ここは一之瀬会長の箱庭ですからねぇ……。危険か否かは不明ですが、放置出来ない事は確かでしょう。)

一之瀬創

当然よ。
そこで、我々生徒会としては、"接触"を試みようと思うの。

二重まな子

"対象"の名は?
(ヤバイヤバイヤバイ逝く逝く逝くヤバイって!)

一之瀬創

対象の名は、九十九彰人(つくも・あきと)。
一年γ組所属らしいわ。

九重イカロス

なんじゃと!? 儂ら全員を足しても19だと云うのに、99とは……!

一之瀬創

ええ、彼は"99"。
私は"1"。
この事が示す意味……。

 そんな中、実が、給湯室で淹れたお茶を持ってくる。

三條実

みなさーんお茶ですよお茶!
この私が淹れたお茶です! 有り難く頂いちゃってください!
お菓子もありますよ。干し芋。干し芋です。塩昆布もあります、塩昆布。皆塩昆布好きでしょ?

 よく分からないことを捲くし立てながら、机にお茶やら何やらを置こうとした実は、うっかり、机の角にぶつかる。

 そして、あろう事か、実は前方にお茶やら何やらを放り投げた後、不自然に直角に方向転換し、転んだ勢いで、一之瀬会長にダイブした。
 椅子から転げ落ちる二人。

一之瀬創

……この、柔らかい感じ……。
また大きくなったのかしらね?

 何故か、ダイブされた側の一之瀬が、実に覆いかぶさるような体勢になっていた。
 そして――不自然にも――、一之瀬の両手が、実のそこそこ大きい胸を揉みしだくような形となっていた。

三條実

あっ、ダメです……会長ぉ……。

――続く?

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