時間はあんまり経ってない……
これは……記憶が飛んだだけ？
外に出ようとしすぎると無意識に
体育館に来るってこと？

ずるすぎる……
どうなってるんだこれは……

やっぱり謎を解かないと
出られないのか？
それなら今の私は……

床の真ん中に書いた『！』は
だいぶ乾いてきてるな……
消されないといいけど。
フローリングだから削り取れるかな……

……

もう、終わりなんだな……

あと30分弱で出来ることなんか
何もない。残せることと言ったら……

……せめて、私たちにこんなことを
やらせてる誰かにも何か残そうかな。
たしかコピー用紙をポケットに入れておいた
はず……

！

『滝沢 多岐は　滝沢 多岐』……
これは……ミヤちゃんの字？
いつの間に……

私は私……
どういう意味なんだろう。

この話をしたとき、たしか
多目的室で話をまとめてたよね……

私は……ミヤちゃんの最初の私じゃ
ないけど、その記憶を持ってた。
ミヤちゃんはそんな私と毎日会って、
話して、連れ回って……

季節が変わっても、私が違っても、
毎日今日を繰り返した。
それで……ミヤちゃんなりに、感じたこと
なのかな。

どんな私でも、私は私……
滝沢 多岐は　滝沢 多岐だった、って。
だから……

……だからって、諦めたくないよ。
ミヤちゃん……

ミヤちゃんは言ってくれたんだ。
またいつか、今日の私とも
会いたいって。
また何回今日が来ても、私のことを
忘れないって！

――決めた。

私は勝ち取りたい。

自我が無くなるなんて嫌。
最初の私みたいに、いつかの今日の
私に宿ってでも……私として生きたい。

新しい私にも、こんな今日の
繰り返しにも、絶対に負けない。
絶対に私を諦めない。

強く願うんだ……
朝は来る。人は目覚める。
だから……

……明日のために、今日は……