雨の音で目が覚めた。
俺はあれからまた、三日間気を失っていたらしい。
どうもあの式神の剣を使うと疲れる。
雨の音で目が覚めた。
俺はあれからまた、三日間気を失っていたらしい。
どうもあの式神の剣を使うと疲れる。
お兄ちゃん! 起きて! マサル先輩が迎えにきてくれたよ!
俺たちが向かったのは、街の東にある河原だった。……俺が何度も夢で見た、川みたいなドブみたいな場所。……俺の母親の死体が発見された場所。そして、俺が生まれた場所。
雨に洗われたせいか、そこは夢で見たときよりもずっときれいな場所に見えた。
俺は、アイツ――神鬼を倒したのか?
まぁな。ただ、鬼は人が生み出した陰の部分だ。……人が死に絶えない限り、鬼も滅びない。
この国で起こっている凶悪な事件……その大部分が、鬼の仕業だ。鬼族みたいに組織的にやってるヤツらもいるし、怒りや憎しみのあまり、ある日突然、鬼を生み出すヤツもいる
よくわかんないけどさ、つまり、この日本って島全部が鬼ヶ島みたいになってるってことだろ? だったら全部倒してやる! 鬼退治だ!
ああ。俺も協力するよ
河内が大きく頷く。
私も何か、できることあるかな?
もちろんだ。佳奈、俺たち、お前の力が必要だ
えへへ。それじゃあさ! きび団子ちょうだいよ!
あん? ほんとに欲しいのか? そんなもの
それほどでもないけど、ほら、こういうのってお約束でしょ?
わかったよ! 作ってもらうって……お母さんにね!
やったー!
佳奈がジャンプして喜ぶと、差してしていた赤い傘がぴょんと揺れた。
おとぎばなしの桃太郎って、たしかハッピーエンドだったはずだ。……だとしたら、予言の通り、鬼どもをぶったおして、お宝ザクザク手に入れてやるさ
でも鳥海さんが死んじゃってるわけだから、犬、猿、キジの仲間はそろわないのよ。……どうするのよ? ももたろさん?
ふと空を見上げると、大きな虹が架かっていた。
うん。そうだ。雨が降ったあとは、虹が出るもんだ。
特大の虹を眺めながら、俺は佳奈にこう言ってやった。
予言や占いは、いいとこだけもらっておこうぜ。…… 未来を作るのは、俺たちだ!
おしまい