とある山奥
日は完全に眠り、虫の音が夜風と共に広がっている
一軒家の前、そこに人影が二つ
とある山奥
日は完全に眠り、虫の音が夜風と共に広がっている
一軒家の前、そこに人影が二つ
先生、わざわざ呼び出してどうしたんですか?
彼は守江(もりえ)ヒガタ
歳は十九歳
高い背丈に、引き締まった筋肉質の身体をしていた
意志の強そうな瞳が印象的
お、来たな
喜べヒガタ。お前、都会で住めるぞ
いきなりどうしたんですか、先生
いやーお前、行きたがってたじゃないか。だから手配してやったぞ
おおーさすがは先生!
でもあんなに渋ってたのに、なんでまたいきなり?
そりゃあ、もっと鍛えてやらないといかんと思ったからな
でももうやりつくしたような気がしてきたし……端的に言うとあれだ、お前鍛えるの飽きた
あ、飽きたって……
いや、でもありがとう。都会かー。わくわくするなあー
が、タダというわけじゃないんだな。都会で仕事をしてもらう
どんな仕事?
んー。まあ、何でも屋ってところか
横文字で言えば、トラブルシューターだ
カッコイイ響きだろう?
おおー! なんかカッコよさそうだな!
問題解決すればいいわけだ
飲み込みが早くて助かるのー
そういうわけなんだが、お前一人というのも大変かもしれない
何せよ都会だからな、数多くの挑戦者たちがその生活に適応できず、敗れ去っていった……
ゴクリ……
あそこに世界一高い電波塔があるだろ?
あの中にはな、都会の規律を守れない者にお仕置きする主がいるのだ
あいつはあまりに強く、オレでも勝てるかどうかだ
つまりお前ではちょちょいのちょーいで山猿に戻らされてしまうだろうよ
誰が山猿だっ!
でも……先生で勝てるかどうかなんて……都会こえぇ……
安心しろ。だからお前にはこいつと一緒に降りてもらう
人影が奥から現れ、そして二人へと真っ直ぐ近づいてきた
月明かりに照らされて姿をはっきりと見せたのは、先生の娘であり、ヒガタの幼馴染である灘(なだ)スオウだった
歳は十六歳
ヒガタから10cmほど背が低いけれど、それでも女の子としては大きく、そしてスタイルも良い
さらに美人ということもあり、先生自慢の娘だ
そう、私と一緒に降りてもらうことになったから
なるほど……
先生、オレのためとか言ってたけど……
スオウに頼まれたからだろう、これ……
そんなことは……ないぞ
先生、オレだとなんだかんだ言うけど……娘には甘いよな
当然
これが娘の力なの
まあ、都会に行けるならなんでもいいけどさ
不満そうね……
私とじゃ嫌なわけ?
一人で謳歌したいって思うだろ、普通はよぉ……色々自由が……
そんなだろうからって、お父さんが私をお目付け役にしたのよ
一人じゃやってけないだろうって
確かに、主になんか目をつけられたくねえもんな
ぬ、主……?
知らねえのか?
都会のあのそりゃ高けぇ電波塔にはな、先生でもギリギリ勝てるくらいの主がいるんだぞ
お父さん、なに変なこと吹き込んでるの……
まあそれくらい言っておくくらいがちょうどいいけど
そういうわけだ
二人でしっかりと都会人、シティーボーイとシティガールになってくれ
もちろん、瞬放流(しゅんほうりゅう)の教えと技を忘れるんじゃないぞ
二人とも頷く
けれど、すぐそこに待っている都会暮らしにわくわくが止まらず、瞳の星が今にでも飛び出しそうだった
さ、寂しくなったら帰ってきてもいいんだぞスオウ……
うんっ!
多分そんなことないだろうけど……
先生、オレはたまに顔出しますからっ!
お、おう……
こうして守江ヒガタ、灘スオウ
二人はこの山を降り、都会で暮らすことになったのだった
楽しい楽しい都会暮らしが、電気光輝く都会がとびきりの笑顔で二人を待っている
そして瞬放流の力を使い、困った人々を助けていくのだ