この国の名はロッサ、薔薇の花を国花とする、赤い国。スーツ工業を元に栄えた、工業大国。
隣国である黄金の国、ゴルゥトと、国境付近にて、戦争中。その期間、八年。
赤い色で全身を染めるロジャーを思い出す。知識がなくても、想像できる。
赤が大切にされるこの国で、あの色を全身に纏う、その意味を。
この国の名はロッサ、薔薇の花を国花とする、赤い国。スーツ工業を元に栄えた、工業大国。
隣国である黄金の国、ゴルゥトと、国境付近にて、戦争中。その期間、八年。
赤い色で全身を染めるロジャーを思い出す。知識がなくても、想像できる。
赤が大切にされるこの国で、あの色を全身に纏う、その意味を。
戦うことにはなりませんよ。まだ、そのような年齢ではありません
サンザシが言う。
違う、そういうことじゃない
気がつくと、固く拳を握りしめていた。自分でもわからない、異様なまでの吐き気、不安、嫌悪感――争いに対する?
頭が痛い。刺すような痛みだ。もう少しで、泣いてしまいそうだった。
自分でも驚くような、感情の動きを整理するのに、数分を要した。サンザシは、心配そうに覗きこんだまま、なにも言わなかった。
やっと出た答えは、こうだった。
なんで、あいつと友達になってしまったんだ……そう思うぐらい、今、あいつの死が怖いよ
声が震えてみっともなかった。サンザシは、少しだけ俺に近づいて、それでも、なにも言わなかった。
死が怖いのは、平和な世界に身をおかなくなったからなのか?
学校生活では感じなかった、この気持ちはなんだろう?
夕飯だぞー!
ロジャーが迎えに来るまで、俺はベッドで横になっていた。眠れはしなかった。
吐き気と、恐怖に苛まれていた。むくりと起き上がったその時の表情は、ひどいものだったのだろう。
どうしたあ
ロジャーが、目を丸くしてそう訊ねた。
言うか、言わない方がいいのか、返答に迷っていると、ロジャーが何かを察したのか、おいおい、と歩み寄ってきた。
輝くような、眩しい笑顔と共に。
何でも言えよ、言いたいことと、言えることならな。無理だけはするなよ
なんて強いんだ。
俺は、顔を歪めて、俯いて――ロジャーとは対照的な、そんなポーズを取りながら、ゆっくりと、少し迷って、それでもすぐに、訊こうと決意して、静かに言葉にする。
怖くないか、戦うことが――ほら、もうすぐ、品評会があるだろ。
あれって、そういう名前の、選別会じゃないか。
スーツの強さを競って、同時にそのスーツを着ている人の力も競って……ロジャーは……強いし
うまくまとまらない。最後はもごもごと、何を呟いているかわからないほどの声の大きさだっただろう。
しかし、ロジャーはうーん、と至極真面目に考えてくれた。本当に、いいやつ。
戦うことが怖いんじゃなくて、死ぬことに関しては怖いことが多い。よくわかんねえことが多いから。
未知は怖いんだよ、俺。
でも、そう考えると、未来も未知で、同じように怖い。未知なものは、怖い。
そしてどうにもならない。だから、考えないのが一番
赤いスーツは、太陽みたいに笑う。
単純だろ、そんでもって、サイコーだろ
太陽は、強い。
……ごめん、こんなこと、突然
いや、正直よく言われるんだよ。
戦争についてどう思われますか、死についてどう思われますか、って、去年品評会で優勝したときのインタビューでだぜ?
その前も、その前も訊かれた気がする。きっと訊くことがなくなってきたんだな、停滞してる戦況にたいして、今後はどうなるでしょうなんて訊くのも、あいつらにとっては新鮮味の無いことなんだろうし。
っつーわけで、そういうのは慣れてるし、考えあきた。そして、結論は
ロジャーは俺の横に回り、肩を抱く。
とりあえず、飯、だ!