タキ

……

ミヤ

それで……
三つの謎ってどういうこと?

タキ

……うん。
まず、今解けていることを
順に話していい?

ミヤ

え、ええ。

タキ

…………

タキ

たぶん、私達の仮説は
みんな合ってたんだと思う。
……というか、そう考えつくのが自然
なんだよ。きっと。

タキ

理科室の蛍光灯の上にあったボールは
理科室で何かを照らせってこと、
つまり照合しろってこと。
シャワールームで水に流されてたボールは、
プールの水で手がかぶれたら洗えってこと。

タキ

屋上のボールは暗号を隠すためのもの。
暗号は『◎ loop』……

ミヤ

……じゃあ、この体育館に
ボールがあったのは?

タキ

……さっき調べた時、倉庫にひとつだけ
消石灰の袋が残ってたの。
だから、それを使って何かをするべき
なのかもしれない。

タキ

問題はとりあえず二つ。
一、消石灰を使って何をするのか。

タキ

線を引いて文字を書いたらいいのか、
水をかけて熱したらいいのか、
溶かして何かに応用するのか……

タキ

二に、使う場所はどこか。
候補は二つあって、ひとつがこの体育館。
理由は、ボールが倉庫じゃなくてこの
ホールの真ん中にあったから。

タキ

もうひとつは屋上。
暗号を隠していただけにしては
理由が弱いから……

タキ

全然検討がつかないよ。
これだけ探したのに、解ける謎が
残ってないんだもん。
まるで、答えが用意されてないん
じゃないかって思うよ。

ミヤ

そうね……
もう少しで届きそうなのに……

タキ

……思うに、きっと
今回は無理なんだよ。

ミヤ

無理……って、

タキ

そう。
答えが用意しきれなくて、
謎は解かせてあげられませんでした。
ちゃんちゃん。

タキ

だからさ、明日来る今日――
忘れないでほしいの。
ここまで辿り着いたことを。

ミヤ

そんな……

ミヤ

み、三つ目の謎は何なの?
それが解ければ……

タキ

ううん。
三つ目はね、誰がこんなことしているのか、
ってこと。
だってこんな不完全な謎、人為的としか
思えないよ。

ミヤ

……
そうね……

タキ

私、楽しかった。
誰もいない学校を一日中ぐるぐる歩いて、
キーワードで謎を解いて。
アトラクションみたいだった。

タキ

あなたともたくさん話して……
仲良くなれたし。

ミヤ

……私も嬉しかったわ。
さっき言ったけれど……ここ最近は
ずっと一人で探してきたの。
あなたは毎日来たけれど……
ほとんど話さなかったから。

タキ

えへへ。
なんかこんな会話、前もした気がするな。
今朝……だよね。前の記憶があると
ごちゃごちゃになっちゃう。

ミヤ

ええ。……あのね、
あなたが持っている……と言って
いいのかしら、前の記憶は……
最初の日のあなたのものなの。

ミヤ

自己紹介をして、名前のことを
話して……仲良くなって、
奇妙な光景と慣れない探索に
戸惑いながらたくさん怪我して……

ミヤ

だから今日、あなたがはじめに
「ミヤちゃん」って呼んでくれて、
とてもびっくりしたの。
世界が元に戻ったんじゃ
ないかって……嬉しかった。

タキ

……

ミヤ

こんなに解決に近づいたこともなかった。
よく喋るあなたも、凛として
引っ張っていってくれるあなたも
初めてで……

ミヤ

ありがとう。今日来てくれて。
またいつか、今日のタキちゃんとも
会いたいわ。

タキ

……っ
ごめん、なさい……

タキ

私、以前の私は今日の私と
違うからって……
あなたに距離を取ってた。
記憶に寄りかかって馴れ馴れしく
するのはいけないと思って……

タキ

私も嬉しかった!ずっと楽しかった!
また会いたいよ、もっと話したいよ、
ミヤちゃん……!!

ミヤ

……ありがとう。また
友達になってくれる?

タキ

もちろんだよ……!

ミヤ

よかった。
……時間ね。

ミヤ

約束する。忘れないわ。
これから先、また何回今日が来ても。

タキ

うん!
ありがとう、ミヤちゃん!!

ミヤ

ありがとう、タキちゃん――……

夜編につづく

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