僕は咄嗟に美香の身体を引っ張って玻璃さんに背を向ける。

ケンスケ

 お前、どういうつもりだよ……! 無茶ぶりにも程があるだろ……!

美香

 大丈夫だよケン君、もっと自分に自信を持って! 
 いつもの調子でババーンと馬鹿みたいにどうしようもない発言をしてやって!

ケンスケ

 それ褒めてねえよな……。
 というか、どうして僕がそんなことしなくちゃいけないんだよ

美香

 だって、そういうキャラで売っていこうって決めたじゃない

ケンスケ

 そりゃお前が勝手に決めたんだろ!

美香

 玻璃ちゃんと仲良くなるチャンスだよ!
 友達百人の二人目!
 大丈夫だってー。滑ったら私がうまく持ち上げるからさー

ケンスケ

 ……全然納得は出来ないが……まぁ、分かったよ

 しかし相手が悪すぎやしないだろうか。

 ただでさえ表情の硬い玻璃さん相手に滑ったりしたら、教室どころか学校全体が氷河期一直線間違いない。

 そしてその後はとてつもなくギクシャクとした関係が続くのだ。

ケンスケ

 …………

 ……いや、どうせ僕は友達なんて作らない。
 だからまぁ、ここで多少恥ずかしい思いをしたところで、後に何も残らないのなら一緒かもしれない。

 僕は無理矢理そう納得させて、美香と共に玻璃さんの方へ振り返る。

玻璃

 ……?

 これまた子犬のように首を傾げる玻璃さんに向けて、僕は大げさに口を開く

ケンスケ

 じゃあ、玻璃さんのダーツテクニックを称えて……

ケンスケ

 その能力を
『夢中の核心(ニュークリアデッドネス)』
と名付けよう!

 過去、こういう発言をした際、大抵の相手は口をぽかんと開けて反応に困っていた。

 いや、僕自身は物凄く恰好良いと思っているのだが、かなしきかな僕のセンスについて来られる人間はほとんどいない。

 美香が軽くあしらってくれる程度である。

 しかしこのとき、玻璃さんは口をぽかんと開けなかった。

玻璃

 ……香田君、なかなか良いセンスを持ってるのね

 相変わらずの無表情を崩さず、そんな予想外の言葉を返してきた。

玻璃

 でも、残念

 そして、玻璃さんはその口から、もっと驚くべき台詞を放つ。

玻璃

 この能力にはもう名前があるの

 玻璃さんはダーツを僕と美香に見せつけるようにして構え、片方の腕で顔を隠しながら言い放つ。 

玻璃

『不敵の均衡(ジャイロジャストジャスパー)』。
 それが私の、全てを貫く不屈の意志!

ケンスケ

 !?

美香

 !?

 僕と美香は口をぽかんと開けた。

玻璃

 !?

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