いつも通りやる事の無いオフィス。

　茶を飲みながら雑誌を読みあさるガイア。
　ミーちゃんを捕獲し、抱いて眠っているアシリア。
　アシリアの怪力の前に脱走を諦め不貞腐れてるミーちゃん。
　そして、デッキブラシとトイレの詰まりを取るアレを持ってるテレサ。

　ソレは掃除用具では無くあくまでトラブルを解決するための物だ。

　急に勝ち誇った様に笑い出すテレサ。

　鬼の首でも取ったかの様に自慢げなテレサだが、ガイア的には正直どうでも良すぎて全く悔しくない。

　基本ここでは暇なので、漫画読むかＰＣいじるか掃除するかくらいしかやる事がない。

　テレサが取り出したのは、ちょっと前に結構流行ったとある楽曲のCD。

　ああ、何と言うか、子供は純粋に生きてるモンだなぁ、とガイアは思う。

　その精神はご立派だ。
　成長したと言える。

　だが、子供故に発想がまだ子供の域を出れていない事に気づいていない。

　美人を見たら地を這うって、完全にパンツ見たいだけの変態では無いか。

　いいや無理だ。
　いくら神様と言えど、テレサを大人びた女性に変えるなどという所業は荷が重い。
　スッポンを月に変えるレベルの所業だ。

　ガイアが知っているのはせいぜい基本的な掃除知識とトイレ内で汚れが溜まりやすいポイントくらいだ。

　それに、今は気分が乗らない。
　何となくダラダラしていたい気分だ。

　テレサが掃除できないままでもガイアは特に困らないし。

　しかし、このアホはただ制止しても止まるまい。
　適当にそれっぽい理屈で納得させて、諦めさせよう。

　フゥ、とガイアは溜息。

　ガイアは雑誌を閉じ、テレサに断言する。

　全国のトイレ掃除おばちゃんには少々失礼だが、このアホに無駄に掃除の仕方教える時間を短縮するためだ。

　それでも神様が動かない理由、それは―――

　だから辞めとけ。それだけ言って雑誌を開くガイア。

　ど適当に思いついた事を言ってみただけだが、テレサはアホなので正論っぽく聞こえればそれで納得するだろう。

　……ああ、アホ過ぎて予想を飛び越えて行きやがった。
　心頭滅却してトイレ掃除ってどんなシチュエーションだ。
　どっかの宗派の苦行か。

　目的を見失うどころか自分から封印するとか言い出した。
　ここまで見事な本末転倒は初めて見る。
　……もうこれは、アレだ。こっちが諦めた方が良いパターンだ。
　ガイアは静かに悟った。

　トイレの神様とやらにお願いしたい。
　こいつに関しては美人云々の前に、もう少し頭を良くしてやってくれ、と。

　……いや、いくら神様でも、それは荷が重いかも知れない。