そんなことを思っているうちに、自己紹介は最後の生徒に差し掛かる。

 瑠琵 玻璃(るび はり)です……

 ちらり、と僕はその……玻璃さんに視線を向ける。

 全体的に刺々しく跳ねた髪型。
 攻撃的なツリ目は睨まれただけで即死しそうなほど鋭い。
 クールでどこか怖そうな印象を受ける。

ケンスケ

 というか、めっちゃ名前に『王』がついてる……

 否。
 注目すべきはそこではない。

 目を引いたのは、彼女のビジュアルである。

ケンスケ

 超可愛いし、美香に負けないくらいおっぱいがでかい

 否、断じて否。
 決してそこは重要ではない。

ケンスケ

 白髪……か

 彼女の髪は真っ白だった。

 遺伝? 病気? アルビノとかいうやつだろうか?

 しかしここで思い出されるのは、今朝の美香との会話である。

ケンスケ

 ……白い女

ケンスケ

 ……いや、そこに紐づけるのは、いかにもご都合主義すぎるよなぁ。
 偶然だろどう考えても

玻璃

 美咲野……先生

 透き通るように冷えた声音で玻璃さんは言う。

美咲野先生

 んあー……?

 教卓の上にだらりと貼り付けていた身体をのっそりと起こす美咲野先生。

玻璃

 動かないで

 教室中に乾いた音が鳴り響いた。

 一瞬で静まり返る教室。

 僕は彼女をずっと見ていた。

 彼女は、『何か』を投擲したのだ。

 美咲野先生に向かって、投擲した。

 何を?

 それは全く見えなかった。

 だから、僕は、僕たちクラスメイトは、その音が鳴り響いた場所に、視線を集中させる。

 蜂、である。

 蜂が、『ダーツ』の矢によって串刺しになって黒板に突き刺さっていた。

 つまり、先ほど玻璃さんが投げたのは、ダーツの矢だったのだ。

 黒板に突き刺さるほどの威力と、頑丈さ。
 そして蜂を射抜く正確さ。

 どう考えても半端ではない。

玻璃

 蜂が居たので、撃退しました

 さらりと言って、玻璃さんは席に座った。

ケンスケ

 …………

ケンスケ

 ……

ケンスケ

 ……か

ケンスケ

 格好良い~!

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