満開の桜の下、花見酒を楽しんでいた。
ふと視線を上げると、金色の布が目に入る。
何だろう?興味本位で引っ張ると
「きゃあ!」
赤い着物に、金色の帯を絞めた女の子が降ってきた。
どうにか受け止め、顔を覗き込むと、桜色の頬、紅色の唇、長い睫毛。全てが美しい顔に見惚れた。
僕を見上げた女の子は、ニッコリと笑み、そのまま僕の手を引いて歩き出す。夢見心地で、フラフラとついて行く。
「知ってる?桜の木の根元にはー」

桜の精霊(spoon企画『200字文庫』提出)

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