ここに1つの噂があった。その噂とはどんな傷や病気でも一瞬にして直してしまう万能薬があるという。その万能薬はどこにあるのか、名前さえ分からない伝説の品物である。存在するかどうかすら怪しい万能薬。この万能薬を探す2人の旅の異世界物語である。
「なあハット、こんなところに万能薬の情報があるのか?」
「高い金を払ったんだ、きっと大丈夫さ」
 2人は暗く、ジメッとした脇道へ入っていく。
 そして脇道の行き止まりにある1つの小さなお店へ入っていく。
「やぁお兄さん達、話は聞いているが、一応自己紹介をしてくれんかね」
「構わないよ。僕の名前はハット。魔術師をしている」
「白い髪か。珍しい髪じゃのう」
「私の名前はクリア。魔法使いをしているよ」
「お嬢ちゃんは魔法使いなのか。魔術師と魔法使い。異色のコンビじゃのう。わしはここの店主をしておるライムというものじゃ」
「早速で悪いが爺さん、万能薬について知っていることはあるか?」
 ハットがそうライムに問いかける。
「ここから森を抜けた先にある王都で目撃したってことぐらいしか分からんのう」
「そうか。情報ありがとうな爺さん。行くぞクリア……」
 クリアの方を見るとクリアは棚に置いてある小さなスノードームに目が釘付けになっていた。
 クリアはハットに気が付くと欲しそうな目で見てきた。
「そんな目で見てきても買ってやらんぞ。」
 クリアは残念そうな顔をすると口々に文句を言い始めた。
「えーいいじゃんケチ。ハットの馬鹿!」
「そのスノードームの値段を見てないかクリア。金貨10枚だぞ!これで何日暮らせると思ってんだ!」
 金貨、現実世界で言うところの1万円である。他には銀貨、銅貨、があり、1000円、100円となっている。また、白銀貨という1枚100万円のものがある。
 ライムの店主から不意に1つの質問をした。
「お主達は何故に万能薬を欲しいのじゃ」
 二人が顔を合わせしばらく黙っているとクリアがポツリと答えた。
「幼馴染みの為……」
 店主は察したのか少し落ち込んだ雰囲気になった。
「もう店はしまる。帰ってくれ」
 そう言われると2人は店を後にした。
「ハット、これからどこへ行く?」
「聞いてなかったのか?王都へ向かうんだ」
「王都かぁ。美味しもの食べられると良いなぁ」
「全く……」

プロローグ

facebook twitter
pagetop