基本的に自分はどんなクソ客が来店しようとも一応は御客なので怒鳴ったりブチギレなどはいたしません。
しかし、17年間も居酒屋をやってきて一度だけクソ客にブチギレを起こし「帰れ、クソ野郎!」と怒鳴りつけたことがあります。
今回ご紹介致しますのは少年野球チームのコーチをやっているクソでクズ男のお話です。
後にも先にも営業中にブチギレて「帰れ、クソ野郎!」と御客に怒鳴りつけたのはあの時の一度限り。
その時、お店ではどんな事件が起こっていたのか?
事の発端はお店にとある少年野球チームのコーチ等が訪れた時に起こりました。
人数は三名。いずれも若い男性で年の頃は30代半ばくらいでしょうか。
話を聞いていると自分の住んでいる地域の少年野球チームのコーチをしていることが分かりました。
三名のコーチ達はしばらくの間、練習方法やチームの問題児などの話題で盛り上がっておりました。
すると、その内の一人に自分は話しかけられます。
「ねえマスター、あの掲示板に今度休むって書いてあるけれども、何かあるの?」
掲示板には来週の月曜日から水曜日まで臨時休業をする、と書いておりました。
その理由がこちら。
「ええ、東京から祖母が遊びに来ているんで、ばあちゃん孝行で温泉旅行に連れて行ってあげようと思いまして」
「そうなんですか! それじゃ、これをおばあちゃんにプレゼントしてあげてください!」
その時、そ奴は信じられない行動に出たのです。
なんと、空いた皿に鼻をかんだティッシュなど様々なゴミを乗せて自分に
「プレゼントです!」と差し出してきやがったのです。
その時、真面目にフライヤーで煮えたぎっている油をそ奴にぶっかけてやろうかとブチギレかけましたが、他の二人が
「止めろ、失礼だろ!」と怒ってくださいましたので辛うじて自分は思い止まることが出来ました。まあ、本当にはやりませんが、そのくらいブチギレそうになったということでして。
しかし、それで止めてくれれば自分もブチギレることもなかったのですが、そ奴の愚行は更に続きます。
「あ、ごめんごめん、マスター! オレね、市役所の水道課にいるんだけれどもさ、お詫びに水道料金タダにしてやる……わけにはいかないんだな!」
と、何故か爆笑をし始める始末。
そして、そ奴は最後にこんなことをほざいてきやがったのです。
「あのさ、マスター。今度うちのチームがさ、全道大会に出るからさ、遠征費用のカンパとして料金タダにしろや。なあ、いいだろ?」
そして、遂に自分はブチギレました。
「ざけんなや、帰れ、クソ野郎!!!!! 料金踏み倒すつもりなら警察呼ぶぞ⁉」と自分の怒声が店内に響き渡りました。
自分の剣幕にそ奴は大いに驚き、ただ一言、
「すみません……」
と謝罪してきました。
この時、他の席には常連のお客さん方もおり、自分と一緒に怒ってくださいました。
「今のはないわ。オレ、最初のばあちゃんのくだりでキレかかったぞ?」
「お前、市役所の水道局の人間だってさっき言ってたよな? マスター、オレ、明日、市役所に苦情の電話入れておいてやるから。おい、あんた、名前教えろや。しらばっくれてもダメだぞ。某少年野球チームのコーチだってさっき言ってたよな?」
と、常連のお客さん方が怒り心頭で詰め寄ったことで店内は騒然となりました。
見ると、そ奴はすっかり酔いが醒めた様子で、顔が蒼白しておりました。
「ごめんなさい……」
と、何度も小声で謝罪の言葉を述べて参りましたが許すつもりはありません。
「もうお勘定でいいっすね? あと、二度と来ないでください」
三人のコーチ達は「分かりました、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と謝罪の言葉を口にして帰って行きました。
後にも先にも営業中に御客にブチギレて怒鳴りつけたのはこの一度限り。そして、出禁にしたのも初の出来事。
最後に一つだけ言わせてもらうならば、お前に子供達を指導する資格はねえよってことっす。
以上が自分のブチギレ話でした。