ある日の仕事帰りに、中庭のある素敵なカフェで友人の沙都子と待ち合わせをしていました。
少し早めに到着した私は、沙都子が到着するまでの間、ひとりで席に座って待っていました。
その時、隣のテーブルにいた男性が私に話しかけてきました。
彼は端正な容姿と、自信に満ちた態度を持った魅力的な男性でした。

男性は微笑みながら言いました。
「こんにちは。どなたかと待ち合わせですか?」
突然声をかけられて驚いた私は、黙って頷きました。
「実は、私もここで友人と待ち合わせをしているのですが、彼が遅れてしまったようです。時間潰しに、少しお話ししませんか?」
私は快く応じました。
初対面の人との会話は好きではなかった私ですが、彼の物腰の柔らかさ、魅力的な外見が、私の心を惹き付けたからです。
彼は涼介といい、聡明で教養もあり、短い時間ではありましたが、とても楽しく会話しました。



連絡先を交換した私たちはその後、数回のカフェデートを重ねました。
涼介と過ごす時間は私にとって幸福でしたが、同時に罪悪感も抱かせるものでした。
私には既に、付き合っている男性がいたからです。
そんな私の苦しい気持ちとは裏腹に、涼介は次第に、私に真剣な関係を求めるようになりました。
彼は、私を大切に思っていることを繰り返し伝え、気持ちに応えてほしいと言ってきました。
私は悩みましたが、彼氏がいることを正直に告白しました。
涼介は落胆した表情を浮かべましたが、私を諦めようとはしませんでした。
むしろ、私に対して情熱的な愛を示してくれました。
「いつか必ず一緒に幸せになれると信じている」
涼介のこの言葉に、私の心は強く揺れ動きました。



カフェで初めて涼介と出会った日に、沙都子は私と涼介が話している姿を目撃していました。
沙都子とは大学のサークルの同期で、私の彼氏も含めてよく3人で連んでいました。
両方の相手のことを知っているのは沙都子しかいなかったため、心苦しく思いながらも今の状況を正直に相談しました。
「慶ちゃんとは別れて、その人と付き合った方がいいと思う」
沙都子は迷わずそう言ってくれました。
その後押しもあって、私は、慶との関係を見つめ直し、自分自身の幸福を優先する決断をしました。
簡単にはいきませんでしたが、慶は最終的には別れること同意してくれました。



そのことを涼介に伝えると、涼介は私の決断を喜んでくれました。
私たちは本格的に交際を始めました。
涼介との関係は少しずつ深まり、私は涼介の熱烈な愛に包まれる日々を過ごしました。
涼介はとても穏やかで優しく、私のどんなわがままも、いつも笑って許してくれました。



しかし、ある日突然、涼介と連絡が取れなくなってしまいました。
何度も何度も電話をかけましたが、彼からは一切の音沙汰がありませんでした。
不安と孤独で押しつぶされそうになった私は、藁にもすがる思いで、慶に電話をかけました。
すると、電話に出たのは沙都子でした。
「ちょっと、人の彼氏にちょっかい出さないでよ」
沙都子は、今は自分が慶と付き合っていると言いました。
何が起きたかわからず混乱しましたが、とにかく今の心配事は涼介と連絡がつかないことなので、それを相談しました。
すると、沙都子は、
「涼介なんて人、はじめからいなかったんじゃない?」
そう冷たく言い放ちました。
私は、沙都子が何を言っているのかひとつも理解できませんでした。
「とにかく、浮気して別れたんだから、慶ちゃんにはもう関わらないでね」
そう言って、沙都子は電話を切りました。



沙都子の態度から、私は一つの真実に辿り着きました。
慶は、沙都子と付き合うために、私のことが邪魔だったのだと。
そして、慶と、慶の思いを知った沙都子とが共謀して、涼介に私を誘惑させたに違いありません。
私は衝撃を受け、涼介と慶への愛情と憧れが一気に崩れ去りました。
そして、今までの慶との関係も、涼介との出会いも、どちらも偽りだったこと、そして私が騙され続けていたことに、悲しみと怒りが込み上げてきました。

ふたりの男に弄ばれた話 #クズ男の話聞いて

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