「ローズ・バランド!貴様との婚約を破棄する!」

 王立魔法学校の卒業パーティーの最中、王子の声が響く。名指しされたバランド嬢は王子を真正面に見据える。王子の腕に抱かれ、見目麗しい殿方に囲まれた令嬢は彼女の鋭い眼差しに震えた。

「大丈夫、私が君を守るよ」

 王子の優しい声に令嬢は笑顔を見せる。健気な彼女に王子は、婚約者であるバランド嬢の前で彼女の唇を自らの唇に重ねた。




「あああああッ!!!」

 何故今になって記憶が蘇ったのだろうか。卒業パーティーの前夜。この世界が、前世の自分がプレイしていた乙女ゲームであったことを唐突に思い出してしまった。プローグ王国第一王子カミーユ・プローグは悪役令嬢ローズ・バラントに婚約破棄を言い渡す。そしてカミーユはヒロインである平民ユーリを正妃に迎え、ローズを処刑する。……というのがシナリオだ。前世の俺は泣いた。推しが処刑されたのだ。ヒロインの言動を嗜めただけで。そんな理不尽なことがあってたまるか。王子などではなく俺がローズを幸せにする。そう何度思ったことか。だがしかし、俺が転生したのはよりによってあのカミーユだったのだ。
 断罪は勿論しない。が、ローズの前でユーリと何度イチャついたことか。死にたい。俺はこれからローズとの関係を改善することができるのだろうか。俺は前世の知識を振り絞り、ローズ幸せ計画を練ることにしたのだった。

つづく(やる気があれば)

今更ですが推しの悪役令嬢を幸せにします

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