【週3のお姉さん、週4の妹。】
占いや人間の話を聴く事を生業にしていると、たまに変わった人がやってくる。
今回はその1人?の不思議な出来事と恋愛について私側で体験した事をまとめてみた。
昼過ぎ。駅近の商業施設の占いコーナー。最上階で人通りも少なく、いつものごとく私はのんびり待機していた。
すると、のそっと…恐る恐る若い小柄な女性が入ってくた。
「あのぉ……。怪奇現象とか専門ですか?」
私は一瞬、うわっ。ヤバいの来た。さっさとスピ系の先生を紹介して除霊でも浄化でも何でも(笑)していただいた方が良いかな?と思った。
ただ、一応何が気になっているか?
だけは、立ち話で聞いてみる事にした。
「えっと…お化けとか霊的なモノは私は扱っていないのですが…何があったのですか?」
女性は話をし始めた。
「記憶がないんです。土曜日に寝たあと今日…火曜日になっていて。私、そんなに寝ていたのか?って。あと日曜日に彼氏とデートの約束してたからすぐ謝ろうと思って、電話かけて……。」
かなり慌てていたので。
とりあえず私は、今回は占いは10分のみの料金で話を聴いてあげるだけ聞こうと決めた。
「まあまあ。霊的な作法はできないけど、今日はお話はお聞きします。それでスッキリして満足でしたらお受け致します。」
女性は表情が優しくなり、コーナーの椅子に座り受付表を書いてくれた。
「甲斐まり」生年月日2000年代。大学生だと言った。
私は話の続きを聞いた。
「そうそう。で、彼氏に電話したら日曜日会ったじゃん。って言われて。しかもメイクも綺麗でどうやら私…彼氏の服コーディネートしてあげてて、その服で昨日ダンスの仲間に会ったらめちゃくちゃ褒められた。って……ありがとう言われた。」
「かなり怖い話ですね。」
「そう!!だって私全く知らないのに。あと……LINEのメッセージも……。」
まりさんは初対面の私に彼氏とのLINEのメッセージを見せてきた。
確かに……日曜日、昨日の月曜日もなんのおかしな文章もなく彼氏とLINEのやり取りをしている。
「怖くない?私こんなメッセージ送った覚えもないんだけど。」
うーーん、参ったなぁ。
そもそも論で考えられるのは
心身に疲れやストレスがたまって発症する心因性の健忘。解離性障害。私も思春期の時に少しなったりしていた。
でもこの判断は精神科医の仕事だから、どーも言えない。
ただ、占いを通しては緩く対処を云える。
それが占い師。
私は生年月日の占いで伝えてみた。
「うーん。お星様の巡りで観ると…期待に応えなきゃ。とかストレスが掛かって自分を見失いやすい。とあるからねぇ。」
まりさんはあっ。そうなんだぁ。そんな時期なんだぁ。と受け止めてくれた。
そこにプラス私は対処法(開運アドバイスと云った)を伝えた。
それは、ノートに【自分は今日何をしたか?】だけ書いて机に開いたまま置いて寝る。
もしこの変な出来事がなくなったらノートはそのままの状態。もしまた同じ事を繰り返していて、ノートに異変があったら
そのノートを持って今度はメンタルクリニックで話を聞いてもらう。
もう、占いはこれ以上は関与できないからね。
まりさんは素直に聞き入れ10分の鑑定料だけ支払って帰っていった。
これで大丈夫かな?
まあ…リピートしてもさらっと話のみ聞いて占いはしないで終わらせよう。
今日はなんとかなった。
そして、次の日。私は別の占い師の代行で同じ店に出演していた。
すると、開店と同時にまりさんがやってきた。
でも雰囲気が違う。
「こんにちは。昨日はよく眠れました?」
聞くと瞬時に真面目な顔付きで私に答えた。
「……昨日はお姉さんがお世話になりました。妹のサキです。」
ん?
もしや、一卵性双生児?
私は確認をすると、サキさんはそうだ。と答えた。
「とても話を聴く姿勢が良いと聞きましたので、私の恋愛も占っていただけますと嬉しいです。」
私はどうぞ。とコーナーの席へ誘導し、受付表を書いてもらい、昨日と同じ生年月日を拝見した。
「まぁ。Twitterのアカウントまで書いていただきありがとうございます。」
「ええ。もし先生のお知らせ等ありましたらご連絡頂けたらと思い…。」
妹のサキさんは全く正反対な上品な人だった。
私は早速、本題の恋愛の悩みを聞いてみた。
「実は……私。お姉さんと同じ人を好きになってしまって。付き合っているのは分かりますが、どうしても諦めきれなくて…。」
……別の意味で参ったなぁ。
「うん。そうですねえ。どうすれば良いか?対処法をカードで見てみましょう。」
私は占いカードに意識を乗せて一瞬で全ての気配を消してそのあと醸し出されたコトをカードが出せるように設定した。
その際不思議な事を感じた。
意識は違う。でも香りが一緒。の感覚。
私は並べたカードを開いて対処法を伝えた。
「戦車のカード。真っ直ぐにお姉さんにまず、本当の事を伝えてみよう。と出てます。あとは、変にお姉さんを怖がらせない事とお節介をしない事。」
サキさんもこの結果に納得はしていた。
「はい。たぶん。自分が好きというより、お姉さんが心配なんだと思います。彼は昔の大和撫子のような方がタイプだっておっしゃって、なかなか彼好みになれずにお姉さんはずっと悩んでいました。」
私もやっと原因が分かって一安心。
お姉さんと緊張せずにお話しができるように魔睡香り守りをその場で作って渡した。
サキさんは私にお礼を言って、支払いも兼ねて財布を取り出して香り守りも入れた。
支払いはクレジットカードだった。カード決済をしてカードとレシートを渡しにいった瞬間…私は思い出した。
そしてサキさんにこんな質問をした。
「お財布もお姉さんと同じなんですね?」
「ええ。前の誕生日にお揃いで買ったんです。」
そして私はもう一言。
「お姉さんの机に交換日記があると思うからお返事してね。お姉さん書いてくれないと拗ねるだろうから。」
サキさんは軽く「はい。」と返事をしてコーナーを出ていった。
私は何か変だと思い受付表を昨日のまりさんのものと一緒に写真を撮っておいた。
あと…もう一つの証拠がなくならなければ……もしかしたら一致する。
来週またまりさんが来たら分かる。
私の期待はそのままの通りだった。
火曜日。いつものごとくお昼過ぎ。
まりさんがやってきた。
「先生。あの怖い話の理由が分かりました。」
私はとりあえず、話を聴く事にした。
「あのノートにちゃんと綺麗な字で今日やった事を書いてくれるんです。でも自分じゃないんです。けど自分なんです。土曜日にメンタルクリニックにノートを持って受診したら、解離性同一性障害だと診断されました。」
「そうでしたか。けど、原因だけは分かって良かったですね。」
「はい。私に危害を加えない人格だから良かった。ノート見たら私の事が心配で妹として出てきているみたい。」
私は正直に伝えた。
「実はその妹さん。水曜日に来てくれて。これ受付表…。」
まりさんはビックリ!!
「えっ。うそっ。本当に字の感じが一緒。あとTwitterのアカウント。コレ私のだ!!」
「あと、その時に私、香りのお守りを渡したんだけど、財布に入ってる?」
「あっそういえば。爽やかな香りがすると思ったら。コレ。」
まりさんが私に差し出したのは紛れもなく水曜日にサキさんに渡した香り守り。そしてクレジットカードも同じカードが入っていた。」
「えー。ノートにフェネクス聡志先生に会って占いしてきたことノートに書いてなかったなぁ……。」
「もうひとつ証拠にクレジットカード決済に水曜日3,000円の明細があるはず。」
まりさんはすぐ調べてまたビックリ!!
「ホ・ン・ト・ダ。カード勝手に使わないでってノートに書いておこう。」
「そうだね。そこの金銭トラブルはどちらがやってもまりさんに責任が来るから伝えておこうね。」
あと、これからの事を聴いてみた。
どうやら、メンタルクリニックで薬も飲みながら、カウンセリング。そしてお互いに心で対話が出来るようになったら歩み寄って共存か統合か。それもゆっくり決めるようだ。
ただ、まだ彼氏には言ってないらしい。
デートはとりあえず、自分が起きている火曜日、木曜日、土曜日にしてもらっているそうだ。
という事でもう占いではなくメンタルクリニックでの治療に切り替えられた。
このようにちゃんと必要な専門家に繋ぐのも私は大切だと思っている。
よくここで、占いのリピートをさせる同業者もたくさんいるが、私は違う。
その専門家さんの仕事を奪ってはならないし、ましてやお客様がどうれば笑顔になる生活が送れるか?
それだけを考えて私は活動している。
そして、1週間後少しだけ。まりさんのTwitterを覗いてみた。もちろん、いいねもリプもDMもしない。
結構向き合おうとしている投稿と少し不安定な投稿もあった。
「いきなり土曜日デートだったのに日曜日にされた。もうコレで2回目。」
「やっぱり、妹の方が好きなのかな?」
など、でも逃げずに生きているのは偉いと思った。
そして火曜日の夜に少し続きを見てみた。
「やったーー!!明後日のデート久しぶり。すごく楽しみ。」
本当にワクワクしている気持ちが伝わる内容だった。
そして、土曜日にまた投稿を見てみた。
……あの投稿からつぶやきがない。
なにかあったのだろうか?
私はちょっと気になっていた。
そして、1週間後に衝撃的な事実が。
まりさんの母親が代筆つぶやきをしてくれていた。
……まりさん、サキさんはOD(オーバードーズ)で水曜日の昼に亡くなっていた。
水曜日だから、サキさんが施行したのだろう。
アカウントもその次の日に消されていた。
21歳という若さだった。
そういえば……アイツも21歳で……。
私は昔の仲間の死も思い出した。その仲間もODで亡くなった。
しかも解離性同一性障害だった。彼は10人の人格がいた。
亡くなる話は20歳過ぎれば誰でも多くなる。
彼ら彼女達の死に向かう意志は他人にはどうしても分からないところはある。
けど、今回に関して云えるのは
「サキさんはどうしても諦められなかった。許せなかった。そしてまりさんと向き合おうとしなかった。破壊する選択肢を選んでしまった。」
という動機はあるのだと。
それは私にしか話していなかった。
私は話なら聴く事は出来る仕事である事。
つまり、それ以外はお客様を信じるしか、俯瞰して見守るしか出来ないのである。
以上。
ちょっと変わった秘密の恋愛話だった。