アカシックレコードには死んだものの記憶が飛んでくる。それを再生して名前と分類、概要を記録して棚にしまうことを仕事にしている者が彼だった。

永遠の命を持っているので毎日毎秒次々に飛んでくる記憶を、再生して、記録することをずーっと続けている。飽きて途中でやめてもいくらでも時間はあるのでまたやる気が出たら続けるということを繰り返していた。

そんなあるとき、突然これまでの数十億倍の記録が飛んでくる。
一体どうしたんだ、と、手近なところに転がった記憶を再生すると、どうやらこの生命が棲んでいた惑星が消滅してしまったらしいとわかった。自分が記録していた生命体は絶滅をしてしまったようだった。
それはつまり永遠に続くと思っていた仕事に終わりが訪れることを意味していた。
もし、自分がこの記憶を全て記録してしまったらどうなるのか?
永遠の命を持っているのに、仕事がなくなってしまうというのは恐ろしいことだった。なにも飛んでこない空間の中で、終わったもののなかで、変化のないなか永遠に生き続けるというのはどんなに退屈だろうか。

その日から記録の速度をゆっくりゆっくりに変えたが、それでも永遠の時間の中でどんどん記憶は記録され、残りはもうあとほんの数十だけになってしまった。

これまで、記憶を再生するたびに「死ぬのは怖い」という声を聞いて、命に終わりのあるものは大変だと他人事のように思っていたが、その気持ちを痛いほど感じるようになっていた。
美しい死にかたをした記録を何度も再生して見たが、ルーチンワークで無為に過ごしてきた自分には、なんの参考にもならなかった。
いっそ記録を全て壊してしまおうか、そんなことも考えてみたが、自分の無意味さが際立つだけで実行する気にはなれなかった。
ついに最後の記憶に手を伸ばした。
これから始まる永遠の無に怯えながら。覚悟なんてできていなかったが、それでも進むことしかできなかった。
中身を確認すると、それは胎児の記憶で名前も無く、一瞬で終わってしまったなんと書こうかとしばらく考えて、「人類最後の生命」と記録した。

そのとたんに、新しい記憶がポコンと飛び込んできた。
記憶を再生すると、長い冷凍睡眠から目覚めた人類が、新たな営みを始めたことが確認できた。「やったぞ!」思わず叫んで立ち上がった。このような気分の高揚ははじめて感じるものだった。

そこからは、また変わらない日々が始まったが、少しだけなにかが変わったように感じたのだった。

アカシックレコードの管理人

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