「死んだ!?」
店内で、咄嗟に叫んでしまった。高校から5年間付き合っていた彼女が死んだと、彼女の友達が伝えてきた。
「そうなの。あの子、病気になった事、颯太くんには伝えないで欲しい。って言ってて、私が亡くなったあと、この手紙を颯太くんに渡して欲しいってお願いされて、受け取ってくれる?」
そんな事を、突然言われたから、考えが追いつかないで、長い間沈黙になってしまった。
「この手紙、ここに置いとくね。」
彼女の友達が、手紙を机の上に置き、カランカランと、店のドアをドアを閉めた。


「颯太!将来結婚しよう。」
「なんだよ急に〜。」
「颯太の作るご飯すごく美味しいから、このご飯毎日食べたいなって思って!」
「飯だけかよ笑」
「あと、大好きだから。」
彼女は、照れながら、俺に抱きついてきた。そんな幸せな出来事を思い出しながら、手紙を持って、家に帰っていた。

家に着いた後も、手紙を開ける勇気がなく、手紙をもらってから、数日経ってしまった。


「本日の売上、no.1は、リオ!おめでとう。」
騒がしい店内で、順位発表が行われていた。彼女と別れてから、何もやる気が起こらないで、夢だった、料理人にもならないで、しがないホストになっていた。ホストになって2年経つが、売上は底辺で、先輩にこきをつかわれる毎日を過ごしていた。


「好きじゃなくなった。私と別れて。」
「はぁ?なんでだよ!」
「怒るなんて、キモい。マジで、あんたのこと嫌いだわ。」
淡々と、別れ話をする彼女をふと思い出していた。

「颯太。大丈夫か?」
リオさんが、俺を心配してくれた。
「大丈夫っす。」
リオさんに、迷惑をかけないように、笑顔で答えると、
「笑顔下手すぎ。なんか、あったら、俺に言えよ!」
と、笑いながら言われた。
「うっす。」
そう返事しつつ、やっぱり、no.1は、かっこいいなと思っていた。

深夜に、家に着き、酒を飲んでいたこともあって、勢いで、
手紙を開けた。



颯太へ
この手紙を、颯太が、読んでいるってことは、この世界に、私は、もういないってことだよね。
元気にしてるかな?
突然、好きじゃなくなった。とか言ってごめんね。本当は、今も、大好きだよ。
颯太に、お願いしたいことが3つあるの。
まず、1つ目は、颯太は、料理で人を幸せにする才能があるから、この才能を活かして、料理人になってね。
2つ目は、絶対幸せになってね。幸せになって、毎日笑顔で過ごしてね。
3つ目は、私の事を忘れないで!って書きたいところなんだけど、私の事を忘れて、早く、良い人をみつけてね。でないと、私、颯太のこと諦められないから!
今まで、ありがとう。颯太の彼女になれて、幸せだったよ。

ポロポロと、勢いよく、蛇口をひねったように大量の水が、目からこぼれ落ち、手紙が、濡れていった。

「あー。俺、全然ダメじゃん。」
と、独り言を呟き、ぼーっと天井を見上げたまま、時間が流れ、朝になった。

 働いている店に、辞めます。と電話で伝えた。代表は、急に辞められたら、困ると怒っていたが、リオさんが、説得してくれたらしい。

 そして、専門学校の頃の、先輩で、自分の店をオープンしている人に、連絡を取り、そこで、働かせてもらえるようになった。働き始めてから、2年間ブランクがあったので、少し、大変ではあったが、彼女の願いを叶えるため、努力を重ね続けた。

「そろそろ、2店舗目をオープンしようと考えているんだ。そこで、颯太には、そこの店長になって欲しくて、良いかな?」
その言葉を聞いて、とても嬉しくなり、二言返事で、店長になることが決定した。

とても嬉しくなり、買い物に行き、家に帰ってから、久しぶりに、台所で、2人分、料理をした。

 彼女の好きだった、ハンバーグや、チョコレートケーキを作り、彼女がいつも食べていた席へ、まるで、彼女にいるみたいに、料理を運んだ。

「俺は、少しは、変われたかな?」
と、彼女に話しかけるように、独り言を吐いた。

すると、「颯太、かっこよくなったね。」と、窓風にのって、彼女の声が聞こえた。

俺は、涙を堪えながら、笑顔で、ありがとう。と、心の中で呟いた。

ありがとう

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