彼女と私は
イラスト描きや漫画描きをつなぐ通話用のSNSで知り合いました。

私はイラストレーター志望、
彼女…(Aさんとする。)は漫画家志望、
お互いいつかプロになれるといいなと話は盛り上がりました。

もう一人漫画家志望の(Bちゃんとする。)と合わせて3人で通話することが多く、
Aはイラストとアートの関係や哲学、描画技法について語るのが好きな人で
私も描き方について本を読んだり、有名な先生の絵の描き方動画を見たりして勉強したことを語るのが好きで
Bちゃんは何本も漫画の完成作を持ち込みしている本気度の高い子であり
波長が合ったのがたまに通話する関係で1年くらいが経ちました。

Aはとにかく褒めてもらうのが好きで
完成するまで人に見せるのが待てないのか
1ページラフが進んだ、0.5ページ線画が進んだ毎にグループに画像を送って反応を待つことが多く、
承認欲求が強い人だなと思ったけれども
創作する人あるあるかと思い
私は送られてきたページの良いところを見つけては感想を返していた。
自分も褒められると嬉しいしね。

Aは同性の友達ができないのが悩みなんだそうで、
それを同性の通話友(と私は思っている)の私やBちゃんに向かって直接言ってくる無神経さにイラっとすることもあったが
Aにとっては通話するだけの関係だと友達ではなかったのかもしれないと思い
流すことにした。

Aは「頭が良いね」と言われるのが好きで
自分でも自分が頭が良いと思っているようで、
自分のIQが高すぎるせいで周囲と話が合わないのでは、と仮定したらしく
IQの高い人間だけが集まったコミュニティ「メンサ」に入れば友人が作りやすいのではと思ったようだ。
しかし専門機関に知能検査に行ったが結果、思ったよりもIQが低くてメンサに入会を断念した経緯がある。

Aは漫画家志望であるが1本も漫画を完成させたことはない人だった。
すぐに作業に飽きてしまうのである。
とても飽き性の人だった。

芸大を出ているだけあってクリエイティブ方面に強い関心はあるようだが
いかんせん何事も長続きせず、
2週間もすると目標が変わってしまうことが多かった。

ある週は漫画を進め、その漫画が未完成のうちに翌週にはやっぱりイラストを販売する!と言い出し
イラスト販売サイトに出品登録をする。
オーダーが入らないとやる気が削げたのか
今度はデザインの勉強すると言い出す。
WEBデザインの勉強サイトを探してくるも全部読む前に飽きたのか
次は3Dソフトを勉強すれば漫画の背景に役に立つのでは!と言い出す。
某文章投稿サイトに小説を連載はじめたかと思えば4話で飽きる。
そして巡り巡って気分が漫画に戻ったのか今週は漫画の続きをまた再開。
終始そんな調子であらゆる方向に迷走をする人でした。

何事も結果を出す前に他に気移りしてしまうAと、
その間にちゃくちゃくと漫画を1本、1本と完成させ持ち込み、編集さんとコンタクトを取り始めるBちゃん。

Bちゃんこと彼女は心の病気を患いながらもフルタイムで働きながら漫画家を目指している頑張り屋さんで
どちらかというと遠い未来の先の話や大きな抽象的な話題よりも
目の前の現実的なことに向かい合うことを大切にする子でした。

一方のAの口癖は「漫画やイラスト業界はレッドオーシャン」で、
漫画やイラスト業界の遠い未来の時代予想や哲学やアートなど抽象的な話題を好み
最近ではお絵描きAIの登場による未来のイラスト界隈を嘆き
「絵を描く気力がなくなったわ」と愚痴るAをしり目に
ちゃくちゃくと現実で地固めをしていくBちゃんがが気に入らなかったらしく
マウントを取るようになっていました。

その頃のAは漫画の気分だったのか
相変わらず0.5ページ作画を進める度にグループに画像を送って反応を待っていたのですが
Bちゃんは無反応になってしまい
Aに返事をするのは私の担当になっていました。
Aは某つぶやきSNSもやっているけれどもアップしてもあまり反応がないのでこちらのグループに送ってくるのです。

Aの投稿がどんどん雑になり、ついにはキャラクターの顔を書く間も集中力が持たなくなったのか
「ここにキャラクターを描く」という青いあたり線だけの絵を送ってくるようになった頃には
私も褒めるのが嫌になってしまい反応がおざなりに。

思った通りに褒めてもらえないことに
Aは気分を害したようで私のふった雑談に2回連続で無反応スルーし
自分の描いている漫画語りを2回被せることで
「私は不快です」という意思表示をしてきました。

それを見かねたのかそれまでAに無反応を貫いていたBちゃんがAに言い放ったのです。

「Aって漫画家に向ていないよね。
このあたり線だけのラフを見せられた相手がどういう気分になるのか想像が出来ていない。
漫画って、読ませることによって相手を楽しませるものじゃん。
漫画家って漫画を見せられた相手がどういう気分になるのか想像する仕事だよね。
ゴミみたいなラフを送り付けて褒めてもらうのを待つ承認欲求の塊には無理な仕事だよ」

とてもすっきりしました。

褒められないと描けない女

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