ここは、とある会社の角を曲がった所である。
ここは、とある会社の角を曲がった所である。
およびですか?マタンゴ課長
突然だが、
君にはシュール工場に異動してもらう。
シュール工場?聞いたことがないですね。
今さっき私がバイオデオドラント除菌ウイルスで作成したものだからな。
わーお、さすがはマタンゴ課長だ。でもそんなことを急に言われても困りますね。
頼む、胞子に免じて行ってはくれまいか。
テーブルに置いてある普段は絶対買うことがないであろう飴セットを全部持って行ってもいいから。道中はお腹が空くであろうしね。
ええ、空腹で歩けなくなったら困りますからね。飴さえあればどうにでもなる。
それとお詫びにハイパーワープ次元転送機をあげよう。
これは凄い。
ドクドクと脈打っていかにもハイパーだ。
これでいつでも外宇宙に行けますね。
では、さっそく行ってきたまえ。私はほくろから出る毛を一人一人抜いていく仕事に戻るから。
では、行ってきます。
うむ、この突っ込み不在のオフビートな会話と不条理を受け入れてしまう物分かりの良さ。じつにシュールだ。
ようこそシュール工場へ。
私が工場長兼そば打ち職人です。
工場ではなくキレイな砂浜と海ですね。
実にシュールでしょう?
それにしても良い天気だ。
ひとまず寝てしまいましょうか?
賛成です。では、お言葉に甘えて。
コラコラ~ダメですヨ~、話が進まないから寝ないでくだサーイ。
あ、唐突に出てきてメタ発言をする人だ。
奇抜すぎないけどこの場にはふさわしくない感じが実にシュールだなあ。
というわけで、あなたが働くことになる作業場を見てみましょう。
えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ
みんな一生懸命働いてますね。
いえ、あれはただの風神です。
この場にそぐわない人が働いてるボケだと思いきや本当に見た目通りというパターンのボケか、実にシュールだなあ。
よう、俺がお前の先輩になるアゼルバイジャン出身の谷崎潤一郎だ。よろしくな!こう見えてもマトリョーシカ早開け選手権の準優勝者なんだぜ!
どうだ?この「マトリョーシカ早開け選手権の準優勝者」って設定が実にシュールだろう?これだけで一個シュールな物語が作れそうだろう?
他の人も紹介しますね。
俺はタンスの角に小指をぶつけると1分だけ魔法少女に変身できる男だ。じつにシュールだろう?
私は酢豚に入っているパイナップルだけを食べ続けてシベリアマントヒヒのような猫背を手に入れたいと思っていたところよ。じつにシュールでしょう?
私以外私じゃないの。当たり前だけどね。
だから…
よし、作業を始めるぞ。
Don't wanna close my eyes♪
I don't wanna fall asleep♪
'Cause I'd miss you, baby♪
And I don't wanna miss a thing♪
これは何をしているのですか?
5兆年前にこの星にやってきて、地中深くに眠っているシュール星人たちを砂から呼び起こしているんです。歌の力で引き上げるのですよ。
引き上げてどうするのですか?
引き上げた後は彼らの目にレモン汁をかけます。そうすると目覚めます。
たくさん上がってきましたね。じゃあ、さっそく品評会を始めまっしょうっ。
まずは俺の星人からだ。そら、レモン汁ッ!
ギャアアアアアアアア!!!!
「前世は一円玉だった深爪ぎみの魔導師が、かつて一緒の貯金箱に入っていた10円玉だった独身中年女性に恋をするハートフルファンタジー」
次は私の選んだ奴ね。それっ!
目がああああああああ!!!!
「愛読書が卒業文集である腐女子の気象予報士が、異次元人に誘拐され卒業文集の代筆を頼まれるSF小説」
最後は俺だ!うぉおおおおおおお!
い、痛いいいいいいい!!!!!!!!
「引き出しを開けるたびに誰かの愛妻弁当がぎっしり詰まっている能力を持ってしまった読者モデルが、その弁当を毎回辛口に評価するグルメ小説」
私は下衆の極みなのでやりません。
…なんですかこれは?彼らはなにか言っているようですが。
ええ、彼らが語るこの「なんだかわからないけどシュールっぽい設定の物語」が重要なのです。この中から一番「シュール風」な物語を選ぶのですよ。
あ、ちなみに彼らの語った小説たちの内容は、彼らとハイパーワープ次元転送機で交信すれば聞くことが出来ますよ。やってごらんなさい。
はい。やってみます。
…どれもただ単に脈絡がない要素を組みあわせたあとに適当な小ボケを混ぜただけで、ひとつも面白くないですね。こんなものの中から選んでどうするのですか?
君は分かっていないようだね。シュールなんてものは、王様がシュールだと決めたものが「天才的な発想www」と評価されてしまうものなのだよ。
課長、いつからいたのですか?
最初からずっと君の真後ろにピッタリと密着していたよ。途中からは寄生した。
どうりでずっと背中が暖かく途中からは気だるかったわけですね。
この会話、実にシュールだね。
では王様、お願いします。
私は王様。マトリョーシカ早開け選手権の優勝者だ。
では決める。ど・れ・に・し・よ・う・か・な?か・み・さ・ま・の…
酷く適当な決め方ですね。
本当はもっとシュールな決め方をしてもいいのですが、ここはパパっと進めます。
よし、これに決めた。「愛読書が卒業文集である腐女子の気象予報士が、異次元人に誘拐され卒業文集の代筆を頼まれるSF小説」だ。
では、シュール星人にお願いしましょう。
ピルピルピルピルピルピルピル…
シュール星人は何をしているのですか?
スマホで「愛読書が卒業文集である腐女子の気象予報士が、異次元人に誘拐され卒業文集の代筆を頼まれるSF」を小説サイトにアップロードしているのです。
…あ、できたようですね。
では王様、拡散お願いします。
ポチポチポチっと
王様は何をしているのですか?
王様はSNSサイト「ヒウィッター」のヴェロワーが50万と0.5人いるので、彼らに向けてこの小説をオススメしているのですよ。
ご覧なさい。
この「もはやアート」ってフレーズがミソです。
…さて、そろそろですかね。
ヒウィッターでの反応を見てみましょう。
そんな。大好評じゃないですか。
こうやって「シュール」とは評価されていくのだよ。王様が「シュール」「アート」「天才」と言ってしまえば、意味不明な小ボケの羅列でもみんな何だか”計算しつくされた高尚な何か”な気がしてしまうのだ。
ちなみにRTしている人たちの半分は王様の内輪で、残りはそれに乗せられて何となく面白い気がしてしまった人たちです。
さらに言えば、小説を投稿する本人がヒウィッターをやり普段から時事ネタに口を出して正論っぽいことを言いつづけてヴェロワーを獲得していれば効果は抜群なんだがね!
ヴェロワーが多いだけで完全に滑った作品を作っても許されますからね。みんな無意識に「この人の作品がつまらないはずはない」と刷り込まれているんです。今回の場合は「この人(王様)が笑った作品がつまらないわけがない」というパターンです。
なるほど。勉強になりました。
つまり、あまりに意味不明すぎてはいけないから、あくまで日常的なシチュエーションに変な要素を何個か入れて、そこに誰も突っ込みがいなければ「シュールな作品」だと評価されるんですね。
会話はオフビートに、謎のアイテムを出すことも忘れずにな。オチなんかなくても適度に小ボケを入れて自信満々で出せば、とりあえず「凄い発想の上に成り立っている」かのように思ってもらえるので便利だぞ!
他にも、とにかく脈絡のないモノ同士を組み合わせたら、後から適当につじつまを合わせていけば良いという手もありますね。
それを影響力のある人間が褒めれば、もはや「天才的な発想の持ち主」の名は欲しいまま、と。
シュールって簡単なんですね。
わんわん!
というわけで、君は知りすぎたようだ。この秘密を知ったからには死んでもらう!もしくは何にでもポン酢をかけて生きてゆくのだ!
そんな。つらすぎる選択だ☆
お、その星、その吹き出し、そのリアクション、実にシュールだね。ブジュルブジュルブジュルブジュル(笑)
やあ、私は天狗!この物語の終わりを告げに来たぞ!どうだ、実にシュールだろう?