四条堤高校には「売店部」というクラブが存在する。
その名の通り、売店の運営を生徒たちが担っているのだが……。
四条堤高校には「売店部」というクラブが存在する。
その名の通り、売店の運営を生徒たちが担っているのだが……。
らっしゃーせー!
らっしゃぁーせぇー!
落ち着け。
何なのよ、いったい。
正統派コンビニ店員のあいさつだって!
うちの裏山に棲んでるヴィルヘルム熊さんに教えてもらったんだ。
そんな人いたっけ?
ていうか、絶妙に格調高い名前ね……。
こんにちは、ヴィルヘルム熊です。
ああ、どうも。こんにちは。
えっ、ここ驚くところじゃないの!?
今さら喋る熊なんかで驚くもんですか。
まったくだぜ。
げぇっ、テトリスブロックが喋った!
商標に触れる発言は危険だよ、ヴィルヘルムさん。
「熊さん」じゃないのかよ……。
そういや、こっちに引っ越してきてから、驚かれたことなかったわ。
何ここ怖い。四条清水めっちゃ怖い。
京都にありそうな雅な地名なのに。
それはそれとして、フライドチキンください。
ハイライトくれや。
もう、テトさん。吸い過ぎですよ?
ボンブリスになっちゃいますよ?
ならねえよ。
このように。
何かいろいろ怪しいナマモノが集うコンビニを運営しているのが、四条堤高校売店部なのである。
そして、この四条清水という現代文化の辺縁部にある土地で生まれ育ったミライとリサ……。
彼女たちこそが売店部のただふたりの部員であり、コンビでコンビニを経営する生徒なのであった。
これは、そんなふたりの日常を描いた、狂ってそうで狂ってない少し狂ってるコンビニコンビの物語である。
音声さん!
今めっちゃ音入りましたよ!
ごめーん。
ちょっとカブトムシが鼻に入っちゃってさぁ。
というわけで……。
売店部である。
「よりコンビニらしいコンビニを」
これをモットーにしているミユキとリサ。
開店時間は10時から18時までの健全経営である。
前から思ってたんだけどさ。
わたしたちって、ホントに普通の勉強しなくていいのかな?
いいんじゃないかな?
この経営経験がすなわち勉強だって、先生たちも言ってるし。
高卒資格が出るのかどうか知らないけど。
もらえないと思う。
正直に言って。
らっしゃーせー!
いらっしゃいませー。
すみません。幸せひとつください。
あー、特殊な吸引を行うことで幸せになれる「しあわせ草」ならありますよ。
そういうネタはやめい!
すてきなハーブでも何でもいいから、幸せになりたいなぁ……。
差し出がましいとは思いますが、あなたにはコンビニよりメンタルクリニックが必要だと思います。
ダメだよ!
お医者さんに頼るのも大切だけど、わたしたちにできることがあるかもだし!
例えば?
人に尋ねてばかりではなく、自分で考えてみてはいかがでしょうか。
このやろう。
お金ください。幸せになります。
現代が生んだひずみ、ゆがみ!
即物的すぎるわ!
でも、保健室のヒトミさんが心身のバランスを崩してるって、「医者の不養生」だよね。
お医者さんほど偉くも年収高くもないけどね……。
玉の輿が手っ取り早いんじゃない?
あのね。現実を見てよ。三十路ラインをオーバーランしたヒトミさんを嫁に迎える医者なんていないんだから。
そうね……。わたしが間違ってた。
ヒトミさん、リアルPayDayしないようにしてね。
しない!
とりあえず、何か食べるのはいいかも!
やっぱり、食べるのはストレス解消にいいからね。
何がいいかな……?
ホットスナックならフライドチキンにアメリカンドッグ。つくね棒もあるし、唐揚げ棒もある。
そんな、彼氏のいないヒトミさんに棒だなんて……。
安易な下ネタは魂のレベルを下げるから、気をつけなさい。
魂のレベル……! 存在の階梯!
スイッチ入った?
どうやらSF脳を刺激した結果、カッコーの巣の上へ行ってしまったみたいね。
おいおいロボトミーか。
ありがとう、ふたりとも!
おかげで、すごく元気になった。
肉体という呪縛から解き放たれる……そんな予感がするの!
これアカンやつや……。
コンビニに来れば、何でも手に入る。
そう、魂の安息さえも。
悠遠を生きる我が友たちにも、そう伝えておくわ。
ああ、そっか……。
コンビニって「便利」だからこそ、こういう心のケアもしなきゃいけないのか。
すごいね。癒し系カフェみたい。
まごころ売ります。
人の心も売ります。
ようこそ、コンビニ「人面獣心」へ!
いや、ダメだろ!
ナイス、ノリツッコミ。
また来ました。
あ、獣面人心。
らっしゃーせー!
今日もまた、売店部の活動は続く。