突然ですが、質問です。

あなたは鎌倉幕府を知っていますか?





 鎌倉のシンボル鶴岡八幡宮。石段を登り切った拝殿前からは、鎌倉時代に作られた参道・段葛を始めとする鎌倉の街並みや、海までも見下ろせる。今も、二人の女性が青空を背景に、眼下の街並みを見下ろしていた。

将軍(頼朝)

いい国作ろう、鎌倉幕府!いやー、ぴったりなフレーズだね!

政子P

少し前の暗記法ですね。最近は使わないそうですが。

将軍(頼朝)

そもそも、幕府設立が何年だったのか、はっきりしないよねー。1180年や1185年だった、て、説もあるし。

政子P

ちなみに、先ほどの「いい国作ろう鎌倉幕府」の語呂合わせは、鎌倉幕府創始者である源頼朝様が、征夷大将軍職に任命された1192年を幕府設立としたものです。

将軍(頼朝)

まあ始まりはあやふやだけど、鎌倉幕府とか初代将軍のことは有名でしょ?教科書に載ってるし。皆知ってるよね?

政子P

あなたが本気でそう思っておられるなら、我々がここにいる必要はありませんね。

将軍(頼朝)

政子、話の振り方が意地悪だよー。でも、確かに将軍は怒っているね。ドラマや漫画では義経の方が美形扱いで人気だし!

政子P

将軍や妻であった私・北条政子はともかく、主要な御家人たちすら現代人にはほとんど知られていませんしね。

将軍(頼朝)

みんな、懸命に命散らして生き抜いて、素敵な明日を目指したのに、忘れ去られてしまうのはとっても悲しい……。

政子P

その無念や嘆きを救うため、私たちが考え出した策。それこそが――

「KAMAKURA☆892」
計画!!

将軍(頼朝)

簡単に言うと、将軍こと源頼朝をはじめとする、鎌倉幕府の皆が、現代美少女に転生し、アイドルになって人気と知名度獲得する作戦だよ!

政子P

私・北条政子がプロデューサーとして、皆さんを支えていきます。アイドルユニット名は「かまくらばくふ」と読んでください。

将軍(頼朝)

そのまんまだねー。

政子P

では、早速他のメンバーたちを探しに行きましょう。

将軍(頼朝)

えー。せっかく二人きりなんだから、もうちょっとゆっくりしていこうよー。久しぶりの生身だよ?ぎゅー。

政子P

こ、こんなところで抱きつくなんて……

将軍(頼朝)

慌てる政子も可愛いー。ちゅー

政子P

ま、まずは将軍と私の愛の深さを現代人に知らしめるべきか……

義時

何やってるんですか!二人とも!

将軍(頼朝)

何って……元夫婦ならではのスキンシップ?

義時

堂々と答えないでください!姉上も、将軍のペースに呑まれないでしっかりしてください!

政子P

よ、義時……いや、これはその……

将軍(頼朝)

義時いつからいたのー?覗きはよくないと思うな

義時

最初からいましたよ……。紹介されるの待っていたら、あなたたちが勝手に始めたから……。将軍はまだしも、姉上まで私の存在忘れるなんて……。

政子P

すまん……忘れていたわけではないのだが、将軍への愛を抑えきれなくて、つい。

将軍(頼朝)

ごめーん、自己主張の薄い胸してたから、将軍ちっとも気がつかなかったよー。

義時

胸のサイズは関係ないでしょう!

政子P

まあまあ、ここにある鳩サブレでも食べて落ち着きなさい。ほら、将軍も。

将軍(頼朝)

さっすが政子!気が利くねえ。おいしーい!

義時

私が買ってきた差し入れなんだけどな……

政子P

いつも気を遣わせて、悪いね。ありがとう

義時

! い、いえ!姉上に喜んでいただけるなら、このくらい!

義時

姉上に撫でられた!今日は髪の毛洗わない!

将軍(頼朝)

じーっ(氷のような眼差し)

政子P

どうかしました?

将軍(頼朝)

んー……まあ、初登場だし許してやろう。
ところで、義時。他の皆はどうしたの?

義時

大江さんと盛長さんは途中まで一緒だったのですが、先に事務所で待つとのことでした。

義時

私がメンバーを代表して、お二人をお迎えに上がりました!

政子P

前世でも頼もしい弟だったけれど、女の子になっても真面目なところは変わらないね。

将軍(頼朝)

将軍と政子の邪魔さえしなければいいんだけどなー。

義時

……何か言いました?

将軍(頼朝)

何にもー。じゃあ、早速新しい鎌倉御所……じゃなかった。事務所に向かおうか。あっちかなー。

政子P

そっちではありませんよ。子供じゃないのですから、はしゃがないで。

将軍(頼朝)

だって、皆に会えるの楽しみだもん!
あ、義時先に行って、「すぐ行く」って伝えておいてよ。

義時

構いませんが……本当にすぐ来てくれますよね?

将軍(頼朝)

うん、政子と軽ーく現世デートしてから行くよー。

義時

でしたら、護衛も兼ねて私もお供します。

将軍(頼朝)

むー。このお邪魔虫ー。前世みたいに空気読めー。

義時

読んでいるからこそです!姉上を強引に連れ回して、夜まで戻らないつもりでしょう!

将軍(頼朝)

夜までなんて中途半端なことしないよー。明日の朝までしっとりしっぽり桃色吐息だよ?

義時

…………

政子P

……頼朝様、お気持ちは嬉しいですが、今の発言はさすがにいかがかと……。仮にもアイドルなのですから。

将軍(頼朝)

もー、やだなあ、二人とも。軽い冗談だってばぁ。あんまり待たせると悪いから、そろそろ行こうか。政子、腕組んでいい?

 政子が返事をする前に、頼朝は腕を組む。政子も微笑んで受け入れた。

義時

前世から熱愛夫婦だったけど、ここまで堂々とされると突っ込む気力も萎えるなぁ。

将軍(頼朝)

義時ー?ぼさっとしてると置いていくよ?

義時

あ、はい!すぐ行きます!

政子P

大丈夫?荷物なら私も持とうか?

義時

このくらい大丈夫です!お気遣いなく!姉上は将軍のお手を離さないでください!

将軍(頼朝)

将軍を何だと思ってるのさー。子供じゃないんだからね!

序 鎌倉幕府、再始動!?

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