移動学校 『ゴーレム』

災害等が起きた際、学校ごと避難できる優れモノ

遠足も修学旅行も学校が移動するから楽ちん

❏ 図書室

…先生

なんだい?

もう正直、嫌になってきました…

私、本が好きで図書委員会に入りました

でも、誰も本なんか借りに来ないし…

毎日毎日、
倒れた本をしまうだけの作業…

私のしてる事って
一体何なんだろうって…

しかも、
何で毎日なんですか?

この学校
普段は動かないでしょう?

……

キミは
眠る時にどんな体勢になる?

…え?

普通に…寝転がりますけど…

同じさ

この学校は生きているんだ

夜になると
僕らと同じように

仰向けで寝たり
うつ伏せになったり
横向きになって丸まったりする

…始めて知りました

でもそれだったら
机とか椅子とかは…?

そりゃ
しっちゃかめっちゃかさ

僕が毎朝元通りにしてるんだよ

…そうだったんですか

教師って大変ですね

でも、それだったら

ついでに本も…

申し訳ないが

それは出来ない

僕は本の事は詳しくないし

何より字が読めないからね

……

…先生は

先生はどうして
図書委員会の担当になったんですか…?

……

どうしてだろうね?

考えたことも無かったよ

運が悪かったのかな

どうして? か

僕が聞きたいくらいだよ

……???

…えっと

ごめんなさい
私、冗談とかよくわからなくて…

冗談でもなんでもないんだよ

僕はね

この学校の心なんだ

…え?

正確に言えば
学校の心の一部かな

朝の教室片付けと

図書委員会の担当

それだけの役割を持って生きている

…妖精みたいなものさ

……

…人間じゃないんだ

ビックリさせてしまったかな?

……

それ

正直、信じるのに無理があります…

…すぐに信じる事になるよ

この事は、
生徒に伝えちゃいけない事なんだ

でも僕は今キミに話してしまった

タブーを犯してしまったんだ

…だから僕はもうじき消える

あと数分で消滅してしまうんだ

…えっ!?

なんで!?
どうしてそんな!?

何故かは解らないよ

でもルールなんだ

…ちがいます

私が聞きたいのは

話したら消えてしまうのに
なんで私に話したんですかって…

キミと同じさ

…えっ?

キミが最初に言ったじゃないか

正直、嫌になってきたって

僕もそうさ

毎朝、教室を片付けて

夕方、図書委員会に顔を出し

ほぼ毎日、愚痴を聞く日々

僕のしている事は
一体何なんだろうって

200年間、思ってきた

200年も…!?

そうさ

普通に人間として生きていたら

とっくに死んじゃってるだろうね

……

死ぬのが怖かっただけなのかもしれない

今もね

もう数分で消えてしまうんだと思うと

怖いんだ

……

本当に
消えてしまうんですか…?

うん

……

消える前に

お願いがあるんだ

…何ですか?

手を握らせてくれないか?

……

嫌です

そうか

残念だよ

……

最後に

キミに良い知らせと悪い知らせがある

…なんですか?

良い知らせは

キミは明日から
本の片付けをする必要が無くなる事

悪い知らせは

…言わなくてもわかるかな?

…今なんとなく予想は出来ました

冗談じゃないって思ってます

僕も同じさ

冗談じゃないって思ったよ

……

まぁいいや

間もなく僕は消える

それと同時にキミは僕の姿に変わるはずだ

キミは学校の心の一部になるんだ

……

消えそう

じゃあがんばってね

……

本当に消えちゃった…

私の姿は…?

それから500年間、

私は毎朝教室を片付けて

図書委員会の担当をしています。

おしまい

図書室の妖精

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