『ハムスターバトル』

それは読んで字の如く
ハムスター同士を戦わせる
非常にエキサイティングなスポーツである。

経営難にあえぐペット業界が
苦肉の策として打ち出したこの遊びは
若者を中心に爆発的な人気を博し
今や日本を代表する娯楽の一つとして
数多くの人に楽しまれている。

かくしてハムスターは消耗品となり
全国のペットショップは安定した収入源を得ることとなった。

そして今日ここにも
『ハムバト』の魅力に取り憑かれた若き少年が一人……

公太郎

母さん!オレ、『ハムバト』がやりたいんだ!!

あら公太郎、どうしたの帰ってくるなり

彼の名は山本公太郎。
地元の市立中学校に通う
ごく普通の男子中学生である。

公太郎

今日学校で馬鹿にされたんだ、「お前まだ『ハムバト』やってねぇの?」って!

公太郎

母さんも知ってるだろ、『ハムバト』。周りでやってないのオレだけなんだよ

『ハムバト』は今やテレビで専門チャンネルが設けられるほどの人気スポーツとなっており、日本で知らない人間はまず居ないと考えてよいだろう。

そりゃもちろん知ってるけど、あなた生き物なんて飼ったことないじゃない

ちゃんと世話できるの?エサ代だって……

公太郎

まったく……わかってないな母さんは

公太郎

『ハムバト』のハムスターはペットじゃない、戦闘の道具なんだよ

公太郎

過酷な環境に身を置くことで強くなるから、世話なんて一切いらないのさ

公太郎

エサだって倒した相手のほほぶくろから勝手に奪い取るから、勝ち続ける限りエサ代もほとんどかからないんだ

あら~よく出来てるのね~

でも負けたら逆に取られちゃうんでしょ?結局エサ代が……

公太郎

それも大丈夫、負ける時は死ぬ時だから

公太郎

死んだハムスターはエサを食べないでしょ?

どの道エサ代はかからないのね

まったくあなたの熱意に負けたわ。いいわよ、好きにしなさい

公太郎

やった!ありがとう母さん!

こうして母親の了承を得た翔太はハムスター代の500円を握り締め、駅前のペットショップへと走った。

公太郎

こんにちは~、ハムスターください

ペットショップ店長

おっ、いらっしゃい!『ハムバト』かい?

公太郎

もちろん!強いハムスターが欲しいんだ

ペットショップ店長

キミ運がいいね、今朝ちょうど大量に入荷したところさ

ペットショップ店長

最近の『ハムバト』ブームはすごいからね、入荷してもすぐ売り切れちゃうんだ

公太郎

ひえ~、やっぱりすごいんだなぁ

関心する公太郎を尻目に、店長はゴソゴソとハムスターのケージを漁った。

ペットショップ店長

そうだな……この毒ジャンガリアンなんてどうだい

ペットショップ店長

口から致死性の猛毒を吐いて攻撃するんだ、毒耐性の無いハムスターならどんな相手でも一撃さ

公太郎

へ~かっこいい……うわっ!1200円!!

公太郎

欲しいけど……500円しか持ってないんだ、それで買える奴はいないかな

ペットショップ店長

そうだな……ならこのスメルゴールデンはどうだい?

ペットショップ店長

戦闘力は無に等しいけどお尻からいい匂いがするんだ。ちょっと嗅いでみなよ。

公太郎

あっ本当だ、いい匂い!しかも安い、300円!?

公太郎

決めた、オレこいつにするよ!

ペットショップ店長

まいど!このヒマワリの種はサービスだよ、頑張れ少年!

こうして念願のハムスターを手に入れた公太郎は
意気揚々と家路についた。

公太郎

やるぞ~!勝って勝って勝ちまくって、最強のハムバトマスターになってやるんだ!

公太郎

……よろしくな、相棒!

これは戦いの物語――

『ハムバト』を通して大きく成長する
一人の少年の戦いの物語である。

To Be Continued...

ハムスターバトルフロンティア

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