中華風の屋台、眼の前の皿にはチキン南蛮がうず高く盛りつけられ、その標高は3000 kmに達していた……
中華風の屋台、眼の前の皿にはチキン南蛮がうず高く盛りつけられ、その標高は3000 kmに達していた……
おい店主、血が足りねえんだよお前のチキン南蛮にはよ
と、言いますと……
だからさ、まだまだまだメシに対してビビってんのよ。畏敬の念があるのよ。そんなんじゃダメ。お前そんなんじゃ春雨前線で春雨に喰われるの。もっとこう、天然の女子高生切り刻んで眼球に詰めながら食べなきゃ倍額とかさ
はぁ……
あたしゃもっとこう、女子供に媚びないメシを期待してたのよ
なんだこの客、せっかく七万年もかけて丹念に積んだわたしのチキン南蛮造山帯を……
まあでも最下層はもう殆ど化石化していましてですねえ
フンっ。だったらなんだってのさ
でしたら……
その時だった。轟音とともに白い塊が大挙して路へ転がってきたのは。
店主、これは一体!?
まあ、あなたのようなワガママ女子のご要望にお応えするべく、当店が用意させて頂いたものですな
そのこころは
歩く!天然女子高生の脂肪細胞オンリー。でございます
ほほう!
今ならタイムサービスで……全部載せ放題!半ライス無量!
なるほど、見直したぞ店主。して、半ライスムリョウとは無料ではなく無量なのだな
あちらに!
おお……
私は歓喜していた。
限界を超えたカロリー制限の果て、反旗を翻した脂肪細胞の成れの果て。歩く!天然女子高生の脂肪細胞オンリーの群れが互いに衝突しては宙にふわふわと舞い上がる。
視線の先には静かに陽光を反射する飯櫃衛星。冷たい蒸気が夜の繁華街に降りてくるようだ。
チキン南蛮山脈の真新しく粘稠性の高いタルタルソースに脂肪の塊が捉えられてゆく。
脂肪を吸って際限なく膨張を続けるチキン南蛮山脈が天体の自転を停める音を聴く。飯櫃の底へと到達するチキン南蛮はようやく伴を虚空の彼方に見出したのだ。
煩い星々の煌きは永劫の停止を謳う天体へと賛辞を惜しまない。ついに白むことのない東の空は未だに繁華街の赤い星々に照り映えていた。