畑のラードと呼ばれるちんすこうが、あたり一面に咲いていた。
麦わら帽子をかぶった僕の幼なじみは、両手を広げてくるくる回っている。
遠出してきた甲斐があった。足元を埋め尽くすちんすこうに、彼女も満面の笑みだ。
ちんすこうは冬に春に種を蒔けば夏の始まり辺りに収穫の頃を迎える。
結構なスピードで成長する良い農作物だ。
おまけにこいつは、二本抱き合わせで袋に詰めて駄菓子屋さんに持って行けば20円で売れる。子どもたちの良い収入源だった。
ちんすこう泥棒と呼ばれる畑荒らしが頻発することになるが、すぐにチン圧されてしまった。不法売買は禁止になり……というかも元から不法なのだが……今では資格を持っていなければ、ちんすこうを売ることはできない。
今ではこうして夏になると、たくさんの農家がいちごやミカンと並びちんすこう狩りを開くほど、ポピュラーで生産量の安定した農作物になった。
幼なじみは白いワンピースを翻し、僕に両手いっぱいのちんすこうを見せてきた。