1 プロローグ
1 プロローグ
静かな空き教室。
外は放課後特有の喧騒に包まれている。
校庭からは運動部の元気な掛け声。
校舎からは吹奏楽部の整いきっていない演奏。
いつもの賑やかな放課後。
ん?まだ誰も来てないのか
カギ取りに行くか〜
今日も一番乗りね
教室に入ってきた少女はそう呟くと空き教室の中に置いてある椅子に腰掛けると、カバンからブックカバーに包まれた本を取り出し広げる。
その空き教室には真ん中に大きな机が置かれその周りに椅子が設置されている。
普通の教室よりは少し小さいこじんまりとした教室だった。
勢い良くドアが開き、跳ねるように少女が入ってくる。
あ〜さやかちゃんもう来てる!
いつも早いよね
こんにちは、ひとみさん
ええ、私のクラスのホームルームは早く終わるから
担任の先生がせっかちなの
え〜いいな〜
あたしのクラスの担任の話は長いんだよ
今日はたまたますぐ終わったけど
早く終わるのが一概にいいとは言えないのだけれど
ええ〜いいじゃん
あたしは早くさやかちゃんに会いたかったよ〜
そ、それは私もそうだけれど……
やっぱり早く終わるほうがいいよ
こうやって楽しくおしゃべりできるんだから
確かにそうね、私も早く終わって嬉しいわ
再びドアが勢い良く開き、今度は少年が入ってくる。
ちょっと〜先に来てるなら言ってくれよ
完全に入れ違いになったじゃないか
ごめんなさい
でも、あなたが先に来るなんて珍しいじゃない
だよね〜
いつも最後に来てたのに
い、いやまあそれは……
なんというか今までは友達と喋ってから来てたんだけど……
あ〜
友達いなくなっちゃたんだね
い、いや違うというか違わないというか……
その言い方だと転校したとか死んじゃったように聞こえて
なるほど、クラス替えで友達と違うクラスになったのね
そうだよ、さやかさん
友達はいるんだけどクラスが変わっちゃったからまだ馴染めてないだけだよ
ん〜でもそれですぐに逃げてここに来るくらいだと新しい友達出来ないんじゃないかな
そ、それはそうなんだけど……
ひとみちゃん可愛い顔して結構言うよね
え〜そんな事ないよ
まことくんに友達いた事のほうが驚きだよ
おい!
あはは
あははじゃないよ……
僕の心は傷ついたよ
ま、そんな訳だからこれからは先に鍵取りに行くとき連絡をすることにしよう
あ〜結局友達つくりからは逃げるの?
逃げるわけじゃないけど、まあそういうこともあるというかなんというか
とにかく、今は連絡のことだ!
悪いけれど、わたしあなたの連絡先知らないの
え……?
マジで……
一年も一緒にやってきたのにそうだっけ……
あっ!
あたしも知らないや
ちょい待って
交換してなかったっけ、確かにメールとか送った記憶はないけどてっきり既に交換してると思ってた
だから……ごめんなさい
ごめんね……
なら、ゴメンじゃなくて交換しようよ!
えっ……
おい、本気で嫌そうな顔すんなよ……
泣くぞ
もちろん冗談だよ、しょうがないから交換しよ
そうね交換しましょう
やった〜
女の子のアドレスゲットだ!
よしオッケー
あれ、2人はいいの?
さやかちゃんとは最初から交換してるよ
ええ
僕だけ仲間はずれだったのかよ!
あはは
さて、今日も文芸部の部活を始めましょうか
ちょ、軽く流すなよ!