前回のあらすじ!!
前回のあらすじ!!
銀翼亭で開催されることになった
覆面冒険者パーティMASARIONの
素顔晒し打ち上げ会!
困惑する戦士マサヒコの前に次々と現れる
個性豊かな素顔のパーティメンバー達!
だが、名前を明かしたマサノブ、マサシ、
そしてマサツグの3人は、パーティの紅一点
マサミへの愛の告白をすると宣言する!!
顔も知らない相手への告白宣言など
もはや蛮勇に近い!
だが、彼らのマサミへの愛は本物だった!
マサミが誰を選んだとしても恨みっこなし
男たちは熱い友情の誓いを交わす!
そしてそこに現れた謎の美少女!
MASARIONのメンバーだと名乗る
彼女を見て、みんなは当然、
マサミであると確信した!
しかしマサヒコは、マサミ以外のもう一人
サイバーマサヒコがまだ到着していない
ことに気付く!
この美少女はマサミなのか!?
それともサイバーマサヒコなのか!?
確信が持てないマサヒコと
美少女を持て囃しチヤホヤするマサノブ達!
そんな時、銀翼亭の扉が開き、
とうとう最後の1人が現場に到着した!!
ごめんごめーん! 遅れちゃったわー!
MASARIONのみんなってもう来てる?
!!
!!
!!
!!
!!
あ、はい
あちらの方にみなさんお揃いです
あ、ありがと
給仕さん、あたしにホットミルクちょうだい
はい、かしこまりました!
すぐにお持ちしますねー
なによあのポーズ……
可愛いと思ってやってるのかしら……
あ、みんなお待たせー!
あれ? ひょっとしてもう飲み始めようと
してた!?
ずっるいぞー!!
あ、ああいや……
全員そろうまで待つつもりだったよ……
なんだこのブサ……
いや、ブサイクではない……か?
そうだ、ちょっと肉付きが良いだけで
えっと……
こういうのはなんていえば良いんだ……
せっかくマサミとイチャついていたのに……
なんだこのデブは……
いや、まさか、ひょっとして……
こっちがマサミ……なのか……?
そのとき!
マサノブ、マサシ、マサツグの3人は戦慄した!!
この場で名前を明かしていないMASARIONの
メンバーはわずかに2人!
マサミとサイバーマサヒコである!
今まで、あの美少女がマサミだと思っていた
3人だが、ここにきて、新たなる可能性が浮上した!!
こちらがサイバーマサヒコで
こちらがマサミである可能性だ!!
考えてみれば、サイバーマサヒコの声を聞いたことは
彼らは一度としてない!!
常に怪しい電子音でピロピロと会話していた
あの怪しげなロボットの中身が、実はこんな
美少女である可能性が出てきたことに、
一同は戦慄を隠せなかった!!
だが!!
真に恐るべきことは、もうひとつ、別に存在するッ!!
クソッ……! なんてこった!
俺たち3人、
マサミに告白するって宣言しちまったぞ!!
もしこの性格の悪そうなデブがマサミだった
場合、俺たちは3人でこのデブを取り合う
ことになってしまう……!!
だが、ここで意見を翻してマサミへの告白を
取り下げるなど、男としてあまりにも
最低すぎる……
決して取れない選択だ……!!
もちろん、この性格の悪そうな少女が
マサミであると、確定したわけではない!
ここにもうひとつ、彼らの心が丸く収まる
可能性というのも、同時に存在した!!
こちらがマサミで
こちらがサイバーマサヒコである可能性だ!
その場合、あの電子音でピロピロ会話していた
ロボットの正体が、性格悪そうなマシュマロ女子である
という誰も得をせず発展性のない真実だけが残るものの
彼女に告白をするという
意に沿わない真似をせずに済む!!
美少女を男3人で取り合うという、至極健全な
状況が完成するというわけだ!!
く、くそっ……
どっちなんだ……!!
どっちがマサミなんだ……
なんか浅ましいなあ
まぁ、私たちから見たらそうよね
あ、お待たせしましたー!
ホットミルクふたつになりまーす!!
あ、ありがとうございまーす!!
じゃあ、乾杯しちゃおっか!!
くそっ! この笑顔がちょっとカワイイと
想っちまったじゃねーか!!
それじゃあ、今回のスライム退治
みなさんお疲れ様でしたー!
かんぱーい!!
かんぱーい!!
ずいぶんと楽しそうじゃない
俺は楽しくないよ
けっこう陰湿な腹の探り合いが続いてるよ
だからこうしてバーカウンターに逃げ込んで
一人でホットミルクを飲んでるんだよ
そうなの?
どっちがマサミさんかわかっちゃえば、
話は早そうなものだけど
実はそれがまだわかっていないんだ……
………
マサノブも、マサシも、マサツグも、
あの太めの子の方には告白をしたくない
でも、どっちがマサミか本人に直接聞く
勇気がないみたいなんだ
なるほど、付き合いの長い女の子に
直接聞くなんて、取りかたによっては
失礼になってしまうものね
そういうことだな……
でも、ふと思ったんだけどマサヒコさん
なんだい?
マサヒコさんが聞けばいいだけの
話じゃないの?
………
確かにこれ俺が聞けば良い話だな
問題は聞いたところでスタートラインって
ところよね
もし美少女の方がマサミだった場合
その場で告白大会が始まるだろう……
その場合、きっと全スルーされるであろう
サイバーマサヒコさんのフォローが大変よね
太め女子の方がマサミだった場合、
告白大会が始まるのかどうか、そこが問題だ
告白すると宣言し合ってしまった以上、
マサミが可愛くなかったからと言って
告白しないのは、男の面子にも関わるし、
何より最低よねぇ
だよね……
どちらにしても、気が重いなぁ……
がんばれ♪ がんばれ♪
えぇー、そうなんだー!
マサシって普段そんなことしてるんだ!
いがーい!!
うん、意外だねー
でもマサシらしくてすごく良いと思う
いやぁ、ハハハ……
くっ マサシの野郎……
ハゲの癖に点数稼ぎやがって……
意外と言えば、マサノブが
ダークドラゴンだったのも意外だったわね
え、いや、そうか?
ア、アハハハ……
だよねー
マジでチョーウケるよねー!
トカゲみたいだよねー!
くっ、このデブ殺してやる……!!
ううん、あたしはカッコイイと思うな
!!!
!!!
!!!
くっ まずい このままでは……
俺だけが何も点数を稼げていない状況……!
意外と言えば、あれだな
?
サイバーマサヒコが女の子だったのも、
意外だったな……
おお、マサツググッジョブ!!
これで2人の反応を見れば、どちらが
マサミかはっきりする!!
なんで俺は男の方の心象を上げてるんだ……
えっ、あ、うん……
!!
この反応はまさか……!!
えへへ……いやぁ……
なんで2人とも照れてるんだよ!!
これではどちらがマサミかわからん……
みんなー、盛り上がってるなー
あっ お帰りマサヒコ!
あははははははははは!!
な、なんだ どうした?
顔、でかっ!!
うるせぇ!!
いや、実は流れで乾杯しちゃったからさ
自己紹介とかまだしてなかっただろ?
特に、マサミとサイバーマサヒコの方はさ
だから、自己紹介してもらおうと思って
………
………
なんで誤魔化そうとしてんの……?
そ、そうだな!
一度自己紹介したほうが良いよな!
まぁ俺はどっちがどっちかわかってるけど!
ああ、マサヒコのためにも、
一度自己紹介をした方が良いだろう!
まぁ俺はどっちがどっちかわかってるけど!
ふっ みんなの言う通りだな
もちろん俺もどっちがどっちかわかっている
こいつら度し難いな……
え、ええと……
どうしても言わなきゃ、ダメ……?
嫌なら言わなくて良いよ!
俺たちだって鬼じゃないさ!
ふっ
いつだって俺は乙女の味方だ
おまえらブレすぎィ!!
何よ 別に良いじゃない名前くらい
あたしがマサミよ 文句ある?
あ、えっと……
サイバーマサヒコ……です……
………
………
………
そうやって露骨にガッカリオーラ
漂わせるのやめろよ!!
フン やっぱりね そういうことだったのね
マサミちゃん?
こいつら最初から女の子と付き合うことしか
考えてなかったのよ
そんで、あたしが可愛くないからって
露骨にガッカリしたりして……
うぐっ……
言っておくけど、あたしだって
あんたらみたいな連中願い下げだから!
………
聞いてんのかよ
この顔デカ野郎!!
………
あたし帰るッ!!
マサミちゃん!!
………
………
………
………
なんでマサツグじゃなくて俺が殴られたの?
おまえの方が……顔が大きかったからだろう
大して変わんないよ!
そんなことはどうでも良いでしょ!
今はマサミちゃんよ!!
くそっ! 全然よくないんだけど
ここは頷かざるを得ない!!
マサミ……
俺たちはマサミのこと
全然わかってなかったのか……
みんな、マサミちゃんのこと
追いかけてあげて!!
だが、サイバーマサヒコ
俺たちは……
あたし、マサミちゃんに相談を受けてたの
マサミちゃん、みんながマサミちゃんのこと
好きになりかけてるの、気づいてた……
でも、マサミちゃん、自分のルックスに
自信が持てなくて……
それで、みんなの反応を見るために、
あたしが今回の打ち上げを提案したの……
みんなを試すような真似をして
ごめんなさい!
わるかったと思ってる……!
でも、このままじゃマサミちゃん、
やっぱり可哀想だよ!
追いかけよう!
ねぇ、マサヒコだってそう思うでしょ!?
うん、そうだね
サイバーマサヒコ
それ俺じゃないよ! マサツグだよ!
マサツグの方も美少女に詰め寄られて
自分を偽るんじゃないよ!!
マサノブにマサシも!
あたし達、同じMASARIONの
メンバーじゃない!
どんな見た目だって、
マサミちゃんはマサミちゃんだよ!!
どんな見た目だって……か
確か、にそうかもしれないな……
マサシ、おまえ……
ああ、サイバーマサヒコの言う通りだ
余計なもので飾る必要なんてないんだ
おまえ今何外したの!?
ドラゴニックパワードスーツ
着ることでドラゴンと同等の力を得ることが
できるオシャレアイテムだ……
すまないマサヒコ 俺は本当はカッコイイ
ドラゴンなんかじゃない……
ただのトカゲだったんだ……
そんな大層なスーツがあるなら、普段から
あんなバケツみたいな鎧着る必要ないんじゃ
みんな……!!
行こう、サイバーマサヒコ!
マサミを追いかけに!!
うん、マサシ!
今のマサシ、余計なものがなくなった分
すごいスッキリして見えるよ!
それマサシじゃなくて帽子だよ!
本体の方が余剰パーツみたいな
言い方すんなよ!!
マサシもどこか満ち足りた顔を
してるんじゃないよ!!
ふっ
目が覚めたみたいだぜ
みんな行っちゃったわね……
ああ
気の早い連中だよ……
ところで、なんでアニーちゃんは
俺の腕を掴んで離さないの?
お・し・は・ら・い♪
………
このまま出て行ったら
食い逃げになっちゃうわよ
ちゃんと出てったみんなの分、支払ってよね
くっそう!!
あいつら戻ってきたら覚えてろよ!!
これワリカンだからな!!
俺ぜったい奢らないからな!!
数日後ッ!!
はぁ、疲れた……
やっぱりこの恰好が一番落ち着くな
あら、いらっしゃいマサヒコさん
曖昧で強引なオチをつけて終わったけど
あのあと結局どうなったのかしら?
ああ、うん 一応丸く収まったらしいよ
みんなでマサミさんに謝ったの?
一応ね
マサノブ、マサシ、マサツグの3人が謝って
マサミが機嫌をなおしておしまいさ
MASARIONもいつもの空気に戻ったよ
このあいだもスライム退治に出かけたんだけど……
きゃあっ! 何か変なの踏んじゃった!
大丈夫か、マサミ!
気をつけろよ、まったく
ふっ そういうところは変わらないな
ピロリロ ピピッ ピー
ガガ ピー ピー ピガッ
…………
ごめんね あたし
いつも足引っ張ってばかりで……
ふっ 気にするな……
いつものことさ
何があっても、俺たちがマサミを守るよ
でも、あたし……
デブだし、ブサイクだし……
そんなことないよ!
マサミが心が綺麗な女の子だってことは
俺たちが一番よく知ってる!
そうだよ! 他の誰がなんて言おうと、
マサミの良いところは俺たちが知ってる
ふっ おまえは胸を張っていれば良い
マサミはマサミだ どんな姿だろうとな
うん みんなありがとう……
あたし、みんなに会えてよかった……!
みんなのこと、大好きだよ……!
…………
ピー ピロリロ ピー
ピーガー ピー ピロリロピー
ガー ピロリ ピロリ
ピロリロリ ピー ガーピー
……………
そんな感じだよ……
………
マサヒコさん、あんまり言いたくないけど
それって……
ああ、マサノブ達は、完全にマサミに
マインドコントロールされちゃってる……
今にして思えば、最初から全部
計算ずくだったのかもしれないな……
俺、マサミがまともに戦ってるところ、
見たことないもんな……
戦闘でも活躍できない 容姿にも自信がない
そんな彼女が居場所を守るために
必死に考えた策だったのかしらねー
サイバーマサヒコも買収済みだったのかもな
いつの間にかバージョンアップしてたし……
はぁ……
がんばって、マサヒコさん!
そうね……
かくして、戦士マサヒコと、
冒険者パーティMASARIONを取り巻く
一連の事件は幕を閉じた
常連のクダ巻きから始まる些細ないざこざは
今日も看板娘のアニーを飽きさせない
マサヒコの溜め息を背に受けながら、
扉を開けて入ってくる客に、
アニー・シルバレッジは笑顔で応えた
いらっしゃいませ!
ようこそ銀翼亭へ!!