主な登場人物紹介
主な登場人物紹介
日向 夏樹 (ひうが なつき)
私立踵乃皮高校三年生。生徒会長で成績は常にトップ
真っ直ぐな性格で正義感が強いが、それゆえに周囲から反感を買うことも多い
裕也と高校一年の頃から交際している
真壁 裕也(まかべ ゆうや)
私立踵乃皮高校三年生。昨年までサッカー部のエースだったが突然辞めてしまってからはやる気のない学生生活を送っている
夏樹とは高校一年の時から恋人同士
青山 薫 (あおやま かおる)
私立踵乃皮高校二年生。生徒会で書記を務めており、突っ走りがちな夏樹をサポートしている。勉強は苦手だが、弓道の腕は校内で一番
夏樹は先輩だが親友同士である
実は、裕也に想いを寄せている
立花 颯太 (たちばな そうた)
私立踵乃皮高校三年生。裕也とは幼稚園の頃からの腐れ縁。サッカー部員で裕也が辞める前の様子から薄々裕也の病気に気付いている
交友関係が広く、学校内の噂に詳しい
妖刀ムラサメ
人の精神を喰らう妖刀「村雨」に意識を食い尽くされた刀鍛冶の老人
本体はあくまで刀であり、彼自身は意識を乗っ取られた人形に過ぎない
今夜も握りしめた刀の欲望に従い、人間の血を求めて辻斬りを繰り返す
グリズリー
現在の地球において最強の生物の一つ。最大で体長3メートル、体重0.5トンにも及ぶ体重にも関わらず時速50キロで走ることも可能
犬のように鋭い嗅覚とハンターのような執念深さに加え、ナイフのように鋭い爪と万力のように強靭な顎を持つまさに自然が生んだ殺戮者である
神龍
天地創造の時からそこにいたと言い伝えられる最も古き龍の王
この世の全ての理(ことわり)を理解し、森羅万象を支配する力を持つが、基本的には因果の流れに身を任せるのみである。ただし、魔術的な力でこの世の在り様を捻じ曲げるものがいれば神に等しい力で裁きを下す
ブロッブ
信仰を失い、もはや名前さえ失った堕落した神の成れの果て
単体ではさほど強くないが環境さえ良ければ無数に増殖するため、多数にダンジョンなどで取り囲まれると厄介
光を嫌う習性がある
ブレインサッカー
遥か未来、ここではない銀河からやってきた凶悪犯罪者。有機知性体の脳を嗜好するが、食事ではなくあくまで娯楽に過ぎない
全時空法廷によって完全無期懲役(熱的死後の宇宙への時間的強制送還)の判決を受けたが死刑装置をハッキングし、2015年の地球へと脱走した
本体は情報生命体であるため、肉体を破壊しても決して殺すことはできない
小惑星パンデモニウス
現在、地球に急速接近している小惑星
四国と同程度の直径を持ち、すでに地球から50万 kmの位置まで接近しているが電磁波を透過する特殊な鉱物で構成されているためまだ地球からは観測されていない
裕也のやつ、急にこんなところに呼び出して何があったんだろ……
最近なんだか様子がおかしいし、相談もなく急に部活も辞めちゃったし……
……悪い。遅くなった。
ううん、いいよ。私もいま来たとこ
どうしたの急に?
……
どうしたの裕也? なんか最近変だよ?
悩み事があるなら言ってよ――
――なあ
俺たち、もう別れよう
えっ!? なに……
急にどうしたの……
いま言ったとおりだよ
別れよう
ちょ、ちょっと待ってよ……
私、何か裕也を怒らせるようなことした?
それなら謝るからさ!
……ほら、こないだ裕也が私のカレーパン一口だけって約束だったのに半分くらい食べちゃったの許してあげるから!
ねえ…… ちょっと待ってよ……
もうダメなんだよ!
お前が悪いとか、誰が悪いとかそういうのじゃないんだ!
もう疲れちまったんだ! だから……
もう、俺の前から消えてくれ!
なによ、それ……
ひどいよ……
行っちまったな……
でも、これできっと良かったんだ……
アイツのためにも……
…………
はあ……
私、失恋しちゃったよ……
裕也のバカ……
!!
もしもしっ!
もしもーし! 先輩、こんばんわ!
明日の生徒会なんですけど――
あぁ、薫…… うん、なに?
そうだよね……
裕也なわけ、ないよね……
せんぱーい、そんな露骨にテンション下げないで下さいよー
裕也先輩からの電話じゃなかったからって――
うっ、うっ……
えっ、えっ、どうしたんですか先輩!?
次の日
それでさー、うちの姉ちゃん、そのセールスマンになんて言ったと思う?
「てるちむるんがしぞはなまらくさでぐぐらまおぺべつすちらわまなぬぶぶここららまふぐるなじたゆくこぽ」って――
ああ……
おい、聞いてるのか? ケッサクな話だろうが?
ああ、そうだな……
おまえ、やっぱ最近なんか変だぞ――
やっぱり――
裕也先輩! 夏樹先輩と別れたって本当ですか!?
わっ! 君は確か二年の…… 青山さんだっけ?
――って、裕也オマエ、ホントに夏樹ちゃんと別れたのかよ!?
先輩には関係ありません。黙っててもらえませんか?
あ、はい……
薫にだって関係ない話だろ!
ほっといてくれ
関係あるに決まってるじゃないですか!
夏樹先輩とは親友なんですから!
先輩昨日泣いてましたよ!
だからなんだよ!
――っておい、ひっぱるなよ
あーあ、裕也のやつ、連れていかれちまった……
それにしてもあいつ、あんなにベタ惚れだった夏樹ちゃんと急に別れるだなんて――
今年に入ってあれだけ打ち込んでたサッカーも急に辞めちまうし――
これじゃまるで――
…………
あっ、すみません
ちょっと考え事してて……
……(コクリ)
なんか変な爺さんだな……
まあいいか、やっぱり――
一度、裕也のおばさんに電話してみるか――
――で、なにがあったんですか裕也先輩!?
だから、お前には関係ないだろって
夏樹と別れた! ただそれだけだよ!
本当なんですか?
ただ、夏樹先輩に愛想が尽きただけなんですか?
……ああ
ああ、そうだよ!
これで満足なのかよ!
じゃあ、私と付き合って下さい!
私、裕也先輩のことずっと好きだったんです
えっ……
えええぇぇ!!!
私、かわいいから結構コクられちゃったりしてるんですよ。正直めんどくさいんでそろそろ彼氏の一人も作ろうと思ってたんですよー
付き合う相手としては申し分ないと思うんですけど?
そ、そ、そんなの急に言われたって無理に決まってるだろ!
えーっ、なんでですかー?
そういう問題じゃないだろ!
……俺の、気持ちとかだってあるし
……先輩、私のこと嫌いですか?
い、いや、そういう訳でもないけど……
じゃあ裕也先輩、私と夏樹先輩だったらどっちが好きですか?
え、え、え……
それは……
えーと、その――
この様子。やっぱり裕也先輩は何か隠してる
よかった……
夏樹先輩のことを本当に嫌いになったわけじゃないんだ……
うっ……
が…… は……
えっ!?
先輩!? 先輩!?
誰か! 誰か来て!!
う…… ん……
良かった……
目が覚めたんだ
あ……
夏樹……
ねえ、裕也……
なんだよ
私ね。やっぱりアンタのことが好き
お前、だから俺は――
全部、聞いちゃったの
颯太がね、おばさんに電話したら全部教えてくれたんだって
病気のことも、アメリカでの手術のことも――
!?
あいつ……
しかたないでしょ。アンタが強情なのがいけないのよ
みんなそれだけ心配してたってことよ
……ごめんね、大変な時に力になってあげられなくて――
いいよ。俺が決めたことだ
それより、これでわかっただろ
三か月後にはアメリカに手術に行かなきゃならないんだ。仮に手術が上手くいったとして、帰ってこれるのは何年後になるか――
いいわよ、行ってきなさい。待っててあげるから
あ、なんだったら私がアメリカに留学してもいいわね。今から進路変更は無理にしても、編入制度を使えば……
ほら、私ちょうど英文科志望じゃない?
バカ! 手術が成功する確立は良くて半々だって先生も言ってるんだぞ!
きっと大丈夫よ! 私がついてるんだもん!
愛のパワーで奇跡が起こるわよ!
本当に……
本当に、待っててくれるのか……
もちろん!
……ありがとう
三か月後
じゃあ、ちょっと行ってくるから
うん。むこうで金髪美女に誘惑されても浮気しちゃダメだからね
大丈夫だって、俺はお前と違って英語は全然だし
それはそれで彼氏として情けないわね
具合のいい時はちょっとずつでも勉強しなさいよ
へーい
それより……
ん? なに?
お別れのチュー?
バーカ
でも……
本当にありがとな。正直、お前がいてくれなかったらこんな気持ちで手術を受けられなかったと思う
今なら、きっと上手く行くって信じられるよ
……
必ず帰ってくる。だから待っててくれ
うん。まあ、こっちから行くかもだけどね
おう! まってるぜ!
そっちも勉強頑張れよ!
おう!
……ねえ、まだちょと時間あるでしょ?
ん? ああ、あと20分くらいは大丈夫かな
じゃあ、カップルタイムは終了ー
実は、サプライズゲストが来ておりまーす!
みんなー!!
こんにちは!
行ってらっしゃい!裕也先輩!
薫! 来てくれたのか!
ありがとな!
夏樹がもしホントに留学したらアメリカに遊びに来いよ!
実は、あの時告白したの、ちょっとだけ本気だったんですよ
だから先輩の泣かせるようなことしたら私が許さないですからね
わ、わかったよ……
なに二人でこそこそ喋ってるの?
なっ、なんでもねえよ!
頑張れよ!
俺、アメリカにおばさんがいるからそのうちお見舞いに行くよ!
颯太も来てくれたのか!
受験前の忙しい時にサンキューな!
たまにはメールよこせよ!
また会おうな!
手術がんばれよ!!
向こうで金髪美女の知り合いができたら俺に紹介しろよな!!
妖刀ムラサメ!
ありがとう! そっちこそリウマチひどいときは無理すんなよ!
ガウガウガウ!
グリズリー!
冬眠が近いのにわざわざ来てくれたんだな!
ありがとう!
人の命は我々と違い儚いものだ――
だが、その一瞬一瞬をよりよく生きようとすることは限られた命を持つものだからこそ出来ることだ
強く生きるのだ
わかったぜ神龍!
てるちむるんがしぞはなまらくさでぐぐらまおぺべつすちらわまなぬぶぶここららまふぐるなじたゆくこぽ
ブロッブまで!
久しぶりだな! わざわざバイトサボってきてくれたのか? ありがとう!
裕也! 向こうに行っても夏樹ちゃんにマメに連絡するんだぞ!
寂しい思いをさせたら俺が許さんからなー!
ブレインサッカー!
わかってるって! 例え離れてても、もう夏樹を一人にはしねえよ!
ヒューヒュー! 焼けるねえ!
……裕也、頑張ってな!
ああ! 行ってくるよ!
小惑星パンデモニウス!
本当にありがとうな! 夏樹! みんな!!
……じゃあ、行ってらっしゃい
ん、ちょっくら行ってくる!
こうして、一つのすれ違いを乗り越え、俺たちはそれぞれの道を歩み始めた――
でもきっと大丈夫、きっとこの道はどこかでまた交差してるから。
おわり
最後良かったです(笑)