私は、何をしても普通だった。

勉強においても、運動にしても。

何もかもが普通。

「トクベツ」なんて私には欠片もなかった。

だから、私は普通の人生を送って、普通に死んでいく。

そう思っていた。

___あの日までは。

遡ること約1時間前・・・・・・

母さん、行ってきます!

紗彩!お弁当は持ったのかい!

あっ!ごめん、ごめん!忘れてたー!!

急いで母さんから弁当を受け取り、家を飛び出す。

白い息が空を舞い、消える。

私が通っている蜻蛉学園まで徒歩50分。

いつもはゆっくり行くけれど、今日はそうはいかない。

今日は学園で飼育している兎達を世話する日。

だから、いつもより早く家を出なきゃって思ってたけど…

うっかり寝坊しちゃった!!

だから、慌て過ぎて弁当を忘れる始末。

もぉ~、ホント何してるんだよ、自分!

そうこうしているうちに、段々と人通りの多いところを抜け、長い階段が見えてきた。

いつもはこの道使わないんだけど、近道だし通ることにした。

うぅ・・・裏道だけあって結構暗い・・・・・・

そう思いつつ、急いで階段を駆け下りようとした瞬間

誰かに押され、私の体は宙を舞った。

あ…

気付いた時には私は階段の一番下までついていて、

折れ曲がった血塗れの足が目に映った。

嘘・・・でしょ・・・!!

腹部に手を当てると、ぬちゃりと気持ちの悪い音と共に生暖かいものが手に付く。

それが理解できた瞬間、裂けるような痛みと燃えるような熱さが体を襲う。

上のほうから声がし、数人の男子が下りてくる。

嘘だろ!!・・・じゃ・・・か!!!

おい・・・!ど・・・て・・・・・・だ!!!

・・・・・・!人・・・・・・じゃ・・・・・・・・・!!

何かもめているようだが、段々と聞こえなくなってきた。

私・・・死ぬの?

・・・・・・もう?

嫌ッ・・・

最後に母さんの顔すら見れないなんて・・・・・・!!

そうこうしているうちに、瞼が重たくなってきた。

あぁ・・・本当に死ぬんだな・・・

お前、死にたくないか?

トスっと何かが乗る感触と共に何者かが声をかける。

男子たちの声はかすれて聞こえなくなったのに、この謎の声だけは頭の中に響くようにして聞こえる。

薄っすらと目を開けると・・・

・・・兎?

学園で飼っていた子にそっくりで声も出ない。

すると、もう一度

死にたくないか?

それに頷くとほぼ同時に私の意識はここで途切れた。

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