翌日、銃の射撃訓練が行われていた。
銃など持ったことがないメイは

周囲の喧騒と重厚な銃声に
戸惑いを隠せなかった。

彼女の様子を見て、不思議そうに首をかしげる
翔太が近づいてきた。

翔太はメイの後ろに立ち、彼女の手元を
見つめながら銃の構え方を指導し始めた。

翔太の息遣いを感じるほど近くにいることに、
心臓の鼓動が高まる

男性がこんなにも近くにいることに、
メイは戸惑いと同時にドキドキしていた。

「変な奴！」翔太は笑いながら、
自分の練習に戻っていった。

その時、部隊長の蓮が現れ、
全員に向かって声をかけた。

蓮が去ろうとしたとき、
タケルが急に声を上げた。「蓮隊長！」

蓮は振り返り、「どうした？」と問いかける。

「何、ケガだと？」蓮が驚いて確認すると、
他の隊員たちも一斉に手を挙げた。

「隊長、俺も！」

「俺もケガしました！」

どうやら彼らの目的は看護師の
アイのようだ。
タケルは顔を赤らめながら叫ぶ。

隊員の一人が返す
「ふざけんな、俺もケガしたんだ！」

その光景に蓮はため息をつき、
「おい、アイを呼んでこい」と
メイに指示を出す。

男しかいないこの部隊では、看護師のアイは
隊員たちにとっての癒しでもあった。

これから起こるであろう
魔獣討伐の前に、少しだけ隊員たちの
申し出を受け入れることにしたのだ。

この前会った先生もいるかもしれないと
思うと、少し胸が高鳴っていた。

医務室のドアを軽くノックすると、
中からアイの明るい声が聞こえてきた
「はーい、どうぞ」

メイがドアを開けると、
そこにはアイと和真がいた。

「あ、えーっと…」メイは事情を話すと、

アイは嬉しそうに隊員たちのいる
部屋に向かった。

メイも医務室を出ようとしたその時、
和真が後ろから声をかける

和真が近づいて来る
思わぬ出来事にメイは一瞬息を飲み、
緊張した声で答えた。

和真は優しくメイを自分の方に向かせ、
その深い瞳で彼女を見つめた。

囁くように言いながら、
彼の手はメイのアゴにそっと触れた。

メイの心臓が激しく鼓動を打ち始める。

ドックン

ドックン

ドックン

「か、和真先生．．．」

「動かないで．．．」

（これって、アゴをクイッとするやつ…！
漫画でしか見たことない…）

彼女の心の中で叫びがこだまする。

和真の顔が徐々に近づいてくるにつれ、
メイの視界は彼の顔で埋め尽くされていった。

彼の温かい息が彼女の肌に触れるのを感じ、
心臓の鼓動が一層速まる。

緊張のあまり、メイは目をぎゅっと閉じた。

（キ、キスされる…！）

しかし、和真の声がその期待を裏切った。

「顔色は悪くないね」その言葉に続き、
メイの目を指で優しく開いた。

「貧血もないみたいだ」

メイは一瞬、何が起こっているのか
理解できなかった。そして、

自分が勘違いしていたことに気づき、
顔が真っ赤になるのを感じていた。

その瞬間、突然警報音が響き渡り
構内のアナウンスが流れた。

「緊急事態発生！」

「緊急事態発生、都の東に魔獣が出た模様、
負傷者も出ています。
至急応戦に向かってください。」

アナウンスが響いた、
メイはとっさに和真から離れ

急いで医務室を飛び出した。
和真はその場に取り残され

和真の目には、メイについて何かを
感じ取ったかのような表情が浮かんでいた。

つづく