再現屋

さあ目を瞑って。心をリラックスさせて

再現屋と呼ばれる存在の噂は何度か耳にした。だけどあまりにも現実離れしたその噂に対してないだろうと何度も否定した。だがーー

名塚 拓真

なんだこれ

彼が俺の額に手を当て、リラックスを促すと次の瞬間、強烈な眠気に襲われる。どこか懐かしい感覚と共に、深い眠りにつく。

再現屋

なるほどなるほど…

不思議なことに眠っている間も彼の声をはっきりと耳は捉えていた。そして彼がなにかを促す度にまるで操られているかのように身体の感覚が同じことをした。

再現屋

ここは記憶の深層心理。あなたの依頼を僕が解決するまでそこから帰っては来れません。なので、そちらにいる間は僕に従って行動してください

名塚 拓真

指示って…従うもなにも身体が自由に動かねぇよ

そう。身体は彼の思い通り。自由になど動くはずはない。

再現屋

まずはその扉を開けましょう。人間みんな気持ち悪いのは嫌いですからね。突然僕が精神に介入してるのでビックリしてるんです

彼がそう言うと俺の手は勝手に扉を開くために扉を押し込むような体勢になっていた。自分の身体が自分のものではないような感覚で、とても気持ち悪いが。それでも今は彼の言う通りに身体が動かない状態になってしまうと非常に危険なんだと事前に何回も注意された。

記憶を覗く以上は外的要因で思い出していくしかないんだとか。

再現屋

別に危ないことをしてる訳では無いので。ええ、決して。間違っても僕の意に反して過去を変えたいとか思っちゃダメですよ?いいですね?

名塚 拓真

…変えようと思ったらどうなる?

再現屋

ええ、まあ思うだけなら勝手なのですが僕がこうして触ってる間無理矢理でも身体の主導権を握ろうと頑張ると身体が破裂します

名塚 拓真

んな馬鹿な

再現屋

爆発は言いすぎました。破裂します

名塚 拓真

いやいや…

再現屋

真面目なことを言うと最悪の場合自我を思い出せなくなります

最初こそ冗談まがいの言い方をしていたが、自我を無くす可能性がある。そこの部分だけははっきりと言い切った。多分、ホントなんだろう。それに、今彼の言うどおりにしないと危険である、というのは身体がなんとなく反応している。

再現屋の力

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