いーくん、どこにも行かないよね

うん、行かないよ

ここにいるから

やくそくだよ、ゆびきりしよ

うん

これで……

ずっと、いっしょだね

僕には黒須ザクロという幼馴染がいる。

生まれた頃から家が隣同士。

幼稚園から高校まで同じ時間を過ごしている女の子。



いつも、僕の後ろをついて回る彼女のことを、

僕は妹みたいに思っていた。



ザクロは背が小さくて、華奢な女の子だ。

彼女は高校生になっても小学生と間違えられてしまう。


小学校から高校まで、僕たちはいつも並んで登校していた。

まるで兄と妹が並んで歩く姿は、ご近所さんたちも見慣れている光景。

見慣れているというのに、

ダメだよ、妹さんに高校の制服を着せたら

それで、ザクロちゃんは、今年は何年生かな?

冗談なのか、本気で言っているのかわからないことを言われる。



そんな僕たちも高校二年生になる。

そろそろ青春という名の甘酸っぱい日々を謳歌したいところだ。


夏休みには恋人ができるかな。

ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~

スマホの呼び出し音に視線を落とす。

推しのⅤチューバー血濡れのチカイちゃんが新しい動画を配信したらしい。

最近売り出し中のヤンデレホラー系Ⅴチューバーだ。

動画は後で見るとして、僕は高評価ボタンを押した。



時計を見ると時刻は七時半を差している。

そろそろ、ザクロが来るころだ。

僕は立ち上がり、身支度を整えた。

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

いーくん、進級おめでとー!

天野 伊織(あまの いおり)

進級がヤバかったのは、ザクロだろ?

天野 伊織(あまの いおり)

期末試験、学年最下位だったんだから

天野 伊織(あまの いおり)

おめでとう、ザクロ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

えへへ、ありがとう

元気な声で現れるザクロ。

うちの両親は
仕事で日本国内や海外を飛び回っている。


滅多にこの家には帰ってこないので、この家にいるのは僕一人。

長い間、そういう生活だったから、僕の主夫スキルは上がるばかり。

料理、洗濯、掃除、おまかせあれ!




幼馴染に手料理、っていう妄想も期待したけれどザクロには無理なのだ。

彼女が料理をすれば炭ができる。

レトルトカレーやインスタントラーメンでも炭になる

どうして、そうなるのか彼女はわからないらしい。


ザクロが作れるのは、お湯を入れて作るラーメンぐらいだ。

ヒーローが戦える時間だけ待っていれば出来る、優れものだが……

ザクロは特撮番組の放送時間中、ずっと放置してしまう。

オープニングから次回予告まで、テレビの前から動かないのだ。











僕はそんなザクロと共に学校へと向かった。


今日は新学期、新しいクラス発表に僕たちは胸を躍らせていた。

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

見て! いーくん、今年は同じクラスだよ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

小学校も中学校もずーっと一緒だったから、まさか高校でクラスがバラバラになるるなんて……一年間寂しかったよぉ

天野 伊織(あまの いおり)

登下校と昼休みは一緒だったじゃないか

天野 伊織(あまの いおり)

まぁ、よろしくね

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

ふつつかものですが、よ、よろしくお願いします

天野 伊織(あまの いおり)

何だよ、その挨拶は

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

だって………恥ずかしいんだもん

顔を赤くするザクロ。

何を恥ずかしがることがあるのだろうか。

ともかく、今日から新学期。




新しい何かが始まりそうな予感がする。



さっそく、春の訪れを感じる甘い香りが漂ってきた。


僕たちの周囲にいた生徒たちがザワつきはじめる。

一人の女子生徒の為、生徒たちは左右に避けて道を作る。


黒髪の美しい少女が僕に微笑みかけた。







吉良 ネリネ(きら ねりね)

あら、伊織くん、今年も同じクラスなのね

天野 伊織(あまの いおり)

君は……吉良さん?

吉良 ネリネ(きら ねりね)

去年のクラスメイトがいると安心するわ

天野 伊織(あまの いおり)

そ、そうだね

吉良 ネリネ(きら ねりね)

今年もよろしくね

天野 伊織(あまの いおり)

こ、こちらこそ

吉良 ネリネ(きら ねりね)

あら、伊織くん……指、ケガしてるわね

天野 伊織(あまの いおり)

本当だ、いつの間に

吉良 ネリネ(きら ねりね)

どうぞ伴倉庫よ……自分で貼れるかしら? 私がやりましょうか

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

……………っ

天野 伊織(あまの いおり)

だ、大丈夫ですって

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

……………いーくん、この人は

吉良 ネリネ(きら ねりね)

初めまして吉良ネリネです

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

……………

天野 伊織(あまの いおり)

あ、すみません。ザクロは人見知りが激しくて

吉良 ネリネ(きら ねりね)

ザクロさん、よろしくお願いします

吉良 ネリネ(きら ねりね)

それでは、伊織くん、私は教室に行っているわね。また、後で

天野 伊織(あまの いおり)

あ、はい!

吉良さんは、現れた時のように優雅に去って行く。

僕たち男子生徒は彼女の残り香を嗅いでいた。

天野 伊織(あまの いおり)

相変わらずキレイな人だ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

いーくん、ニヤニヤしている

天野 伊織(あまの いおり)

そうか?

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

いやらしい顔だから気を付けて

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

卑猥だよ! 訴えられるよ……引き締めて

天野 伊織(あまの いおり)

わ、わかったよ

天野 伊織(あまの いおり)

これでどう

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

そんな怖い顔しないで、笑ってよ

天野 伊織(あまの いおり)

こ、こう?

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

どうして、そんなに嬉しそうなの?

天野 伊織(あまの いおり)

吉良さんに挨拶されたんだよ。挨拶されるなんて恐れ多い

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

高嶺の花って呼ばれてたよね。仲良いの?

天野 伊織(あまの いおり)

な、そんなわけないだろ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

顔が赤いよ

天野 伊織(あまの いおり)

僕は文化祭のときに一緒に仕事をしただけだよ

天野 伊織(あまの いおり)

良い雰囲気になれるかな~って期待もしていたけど、そんなことはなかったし

天野 伊織(あまの いおり)

文化祭の後はほとんど喋っていないし

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

好きなんだあ

天野 伊織(あまの いおり)

うちの学年の男子はほとんどそうだろ?

天野 伊織(あまの いおり)

手が届かない高嶺の花だから、告白とかする生徒が少ないだけで

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

好きなんだぁ

天野 伊織(あまの いおり)

僕だって、見ているだけで十分だよ。そんな吉良さんに声をかけられたんだ

天野 伊織(あまの いおり)

今日はきっと良いことあるよ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

うんうん、凄く良いことがあるから楽しみにしてて

天野 伊織(あまの いおり)

何でザクロがわかるんだよ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

わかるものは、わかるんだよ。エッヘン

彼女はない胸を張って微笑んだ。


気が付くと、周囲の生徒の数が減っていた。

そろそろ教室に行かなければ遅刻になってしまう。
僕はザクロに微笑んだ。

天野 伊織(あまの いおり)

それじゃ行こうか

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

いーくん、手つないでいこう

天野 伊織(あまの いおり)

え?

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

私、小さいもん、はぐれちゃうよー

天野 伊織(あまの いおり)

仕方ないな、ほら行くぞ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

エへへ、ありがとう

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

そうだ、いーくん……ケガ大丈夫?

天野 伊織(あまの いおり)

ああ、ささくれが剥けただけだよ。吉良さんから晩倉庫もらったから後で……

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

そんなの舐めときゃ治るよ

天野 伊織(あまの いおり)

それも、そうだよな

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

ペロリ

天野 伊織(あまの いおり)

ザクロが何をしているのか。

僕には理解できなかった。

僕の指先を彼女はペロペロと舐めている。

天野 伊織(あまの いおり)

ざくろ……他の生徒に見られ……たら

天野 伊織(あまの いおり)

……なっ何してるんだよ

舐めているだけではなかった。

吸われている。

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

へへへ、実はね……ザクロは吸血鬼なんだよ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

いーくんの血、美味しい~

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

もっと飲みたいよぉ

天野 伊織(あまの いおり)

冗談はやめてくれ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

恥ずかしい?

天野 伊織(あまの いおり)

うん、恥ずかしいよ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

大丈夫だよ。み~んないないから

天野 伊織(あまの いおり)

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

誰もいないよ

天野 伊織(あまの いおり)

誰もいない! 時間は……!

ハッとすると昇降口には僕たち以外誰もいなかった。


シンと静まり返った昇降口。


僕の耳には予冷を告げるチャイムが聞こえた。

僕は掴んでいたザクロの手を引っ張って走り出した。

天野 伊織(あまの いおり)

行くぞ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

あ~~れ~~

天野 伊織(あまの いおり)

新学期から遅刻だなんてシャレにならないだろ

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

わーい、いーくんったら大胆だねぇ

僕たちは廊下を全速力で走った。

しかし、


この努力も空しく、僕たちは遅刻したのだった。

平山 雪下(ひらやま ゆきのした)先生

二人とも遅刻ですよ

天野 伊織(あまの いおり)

ごめんなさい

黒須 ザクロ(くろす ざくろ)

へへ、いーくんと一緒に怒られた

吉良 ネリネ(きら ねりね)

フフフ

天野 伊織(あまの いおり)

………

遅刻したうえ、憧れの吉良さんに笑われてしまった。

恥ずかしい……

つづく?


ヤンデレ×ギャグのお話を書きたくて、
思いのまま作成しました(*'▽')

続きをUPするなら、
ストリエオンリーの予定です。


ヤンデレでギャグは出来るのだろうか……


今回は半分勢いで作成したので、
続きの公開は未定です。

それでは

pagetop