俺が言うのもなんだけど、この店には色んな客層が来る。それは、今までの日常をチラ見してもらえていれば分かることなのだが……今回は、その中でも特殊なお客様たちだった。
俺が言うのもなんだけど、この店には色んな客層が来る。それは、今までの日常をチラ見してもらえていれば分かることなのだが……今回は、その中でも特殊なお客様たちだった。
ここ、何か寒いわよね……
サムイサムイ
僕達ゾンビなんだから当たり前じゃない
……
ふふ、それもそうね
ハズカシヤー
あのお客様達の手元にいるのって、目……だよな?
何か、4人でお話してるとWデートしてるみたいで微笑ましいねー
どこがっ!!
体のどこかに目を一個だけ付けれるとしたら、どこに付ける?
店長の首
俺に衝撃を与えたあの日から、数日、その二人は何度かこのスーパーへと訪れた。
最初は容姿のパンチの強さに驚いていたけれど、話の内容を聞いていれば、なんてことはない。人もゾンビも関係ない、ただの友達だ。
そんなある日のことだった。
ねぇ、アンタの目、なかなか喋らないわね。人見知りにしたって、私にくらい話しかけてくれても良いんじゃない?
オイ、ナンカイエコゾウ
……
あ、あの、コイツ調子悪くって
いつもそれじゃない! 目と体は心が通じているはず! その子が喋らないってことは、私のことが嫌いなんじゃないの……!?
ち、違うよ!!
ジャア、シャベレヨ!!
……
……どうしよう、何かヤバくない?
どっちのカップルも交渉決裂しそうだね!
だから、Wデートじゃ無いんだってば……
こんな時になっても一字一句も発さないなんて
サイテーダナ!!
……分かったよ。言うよ
言いなさいよ
実は僕……人間なんだ
え……
!!
……ソレデ
……それで、私のことを馬鹿にしていたの?
馬鹿になんてしてないよ! どうしてそんなこと言うの!?
その目持って一緒に歩きながら、私のこと化け物だって心の中であざ笑っていたんでしょう!?
ちがうよ! これを持ってないと、君と友達になれないと思って……
……私の前から消えてくれる?
……
……おつかい、買ってかなきゃ
いらっしゃいませ!! ところでお客様、フったようでどこかフラれていたようにも見えるのですが
だから赤ずきん、その人達はWデートしてるんじゃないんだよ!! って言うか失礼……
何よ、無様で悪かったわね
ホットケ、コノヤロウ
不思議ですよね。今まであんなに仲が良く見えたのに、種族が違うだけでこれなんて。類は友を呼ぶなんて言うけど、本当に類だけなんですね
……そうよ。類は結局類の中でしか友を呼べないの。だって、こうでもしないと、あの子はゾンビと遊ぶ気持ち悪い子になって、人間の友達が離れてっちゃうんだもの
ヘンケン、ヘンケン
この人、本当は分かっててあの子を……!!
どうなんでしょうね? 今まで、あなたに合わせて目を持って歩いてまでいたんでしょう? 既に友達は少なそうだし、多いにしても、合わせてまで一緒に歩いていたということは、どう思われても良い覚悟だったのでは?
……
偏見を持たれているのは、お客様の方なのでは?
……!
……行かなきゃ!!
お客様!!
はいっ!?
334円頂戴いたしまーす!!
ズコーッ!!
お金はちゃんと払わないとね!!
―数日後―
あの二人、仲直り出来たのかな……
まぁ、相手のご機嫌次第だよね。乙女心と秋の空ってよく言うしね。
まだWデートだと思ってるの? しかもあの水色髪の子、男の子だし……
いらっしゃいませー!
……って、ああっ!!
何だか、あなたと一緒にいるだけで心がウキウキしちゃう。このまま成仏出来そう
ブットビー
まったく、幽霊じゃないんだからー
あはははっ
ほら、Wデートしてるじゃない!
うっそ、ほんとだー
……え、あの目確か喋れないんじゃ……
ねぇ?
なぁに?
僕は、君の為だったら、何にでもなるよ。
ゾンビデモネ
まぁ、実際に僕がなったのは魔法使いだったけどね
魔法で目との意思疎通を図るなんて、あなたってば天才すぎ! ……って、あら?
どうやら気絶しているようだ
そこの店員さん、倒れてますけど大丈夫ですか?
大丈夫です、もうすぐ交代の人来るので!
ソウイウモンダイカヨ……
めでたしめでたし