虎の威を借る狐
虎の威を借る狐
むかし むかし
あるところに
一匹の狐がいました
狐はこわがりで
めったに
自分の巣穴からは
出ようとしませんでした
そのため
狐には
友達は
あまりいませんでした
おーい、狐くーん。外に出て一緒に遊ぼうよ
狐を
呼んだのは
狐の
数少ない友人の
虎でした
やだ。お外は怖いもん
こんな風に
せっかくお友達が来ても
ちっとも
巣穴から
出ようとしないので
狐は
ますます
孤独になってしまうのでした
ある時
一緒に
外で遊びたかった虎は
ためしに
嘘を
ついてみることにしました
虎は
いつも通り
狐のところへ
遊びに行きます
おーい、狐くーん。遊ぼうよ
虎の呼びかけの後
狐の
おずおずとした声が
巣穴の中から
聞こえてきました
……お外に行かない?
うん。今日は狐くんのお家の中で遊ぼう
そう言って
虎は
身を縮めながら
やっとこさ
狐の巣穴へ
入っていきました
そうして
二匹は
狐の巣穴の中で
たくさん
たくさん
遊びました
けれども
狭い穴の中で
できることには
限りがあります
やがて
二匹は
退屈してきました
……ひまだね
狐が
そう言ったのを
聞くと
虎は
心の中で
待ってましたとばかりに
微笑みました
それじゃあ、お外で遊ばない?
もちろん
狐は
いやがります
怖いから、やだ
いつもなら
残念だなあ
と言って
あきらめる虎ですが
今日は
いつもとは
違うことを
言いました
大丈夫だよ。誰も狐くんに意地悪なんかしないって。
だって、狐くんは神様のお使いなんだから
…え?
狐は
驚きました
自分が
神様のお使いだなんて
今まで
全く
知りませんでした
もちろん
これは
虎の嘘です
狐が
知らないのも
当然です
けれども
狐は
虎から
話で聞くほかに
巣穴の外のことを
知りません
狐は
半ばは
疑いながらも
虎の嘘を
信じてしまいました
……ほんと?
うん。そうだよ。狐くんは神様のお使いなんだから、
誰も意地悪したりしないよ。だから、お外で一緒に遊ぼう
ほんとにほんと?
うん。嘘だと思うならお外に出てみれば。
嫌な目にあったら、すぐ戻ってくればいいよ。
これだけ
言われると
狐は
虎の言葉を
疑っていたことなど
忘れてしまいました
……それじゃ、ちょっとだけ
そう言って
狐は
そろり
そろりと
巣穴の出口へ
近づいていきます
そして
狐は
虎と一緒に
巣穴の外へ
出て行きました
外に出てみると
虎の
言ったとおり
誰も
意地悪をしたりしません
しかも
みんな
どことなく
狐のことを
怖がっているようでした
ね、狐くん。みんな意地悪をしたり君を怖がらせたりしないだろう。
みな、狐くんが神様のお使いだから、狐くんのことを尊敬しているんだよ
これならお外は怖くないだろう。だから、これからはお外で遊ぼうよ
うん……!
狐は
自分が
神様のお使いである
ということを
心の底から
信じました
つい
さっきまで
巣穴の外を
怖がっていたことなど
すっかり
忘れてしまいました
当然の事ながら
狐は
神様のお使いなどでは
ありません
それなのに
どうして
みんな
狐を
敬うような態度に
なったのでしょうか?
答えは
虎にあります
虎は強く
立派で
みんなに
尊敬されていました
また
尊敬されると同時に
とても強く
怒ると
とても怖い存在として
みんなから
怖がられてもいました
そして
狐が外に出た日
その前の日に
虎は
大いに暴れて
暴れまわり
みんなを
心底
震え上がらせました
こうすることで
虎は
みんなに
大きな警戒心を持たせ
一緒にいる狐をも
とても
とても
怖く
見せているのです
~♪
狐は
そんなことは知らず
ただただ
静かな
外の世界の楽しさを
感じました
そんな狐を見て
虎は
とても
嬉しくなりました
けれども
虎は
決して
手放しで
喜んでいたわけでは
ありません
………………
みんなを
怖がらせたために
嫌われてしまわないか
と
悩んでもいたのです
ですが
狐くんが
みんなと
遊べるようになるなら
それでもいい
虎は
そんな風にも
考えていたのです
それじゃ、狐くん。鬼ごっこをして遊ぼうよ
だから
虎は
狐と
思いっきり
遊んで
たくさん
たくさん
いい思い出を
作ろうと思いました
うん!
狐は
元気いっぱいに
答え
鬼役の虎から
逃げました
元気な
狐と遊んでいると
虎は
……みんなに嫌われてしまうだろうか?
という
暗い考えも
春先の雪のように
消えていくのが
解りました
そして
あっという間に
日々は過ぎ
~♪
狐は
虎だけではなく
みんなと
仲良く
遊べるように
なりました
~♪
虎が
みんなに
嫌われてしまうこともなく
すぐに
仲直りをして
みんなと
仲良く
遊ぶようになりました
こうして
虎も
狐も
ほかの生き物たちも
みんなで
仲良く
遊ぶようになりました