そういうとチュウをちゃぶ台に座らせる。
まさかこういうシチュエーションを実体験することになるとは。
とりあえずそこにいてくれ
そういうとチュウをちゃぶ台に座らせる。
まさかこういうシチュエーションを実体験することになるとは。
案外緊張するものである。
自分はチュウの反対にちゃぶ台を挟んで座る。
そして家にあったペットボトルのお茶を出してみる。
案の定、興味津々にペットボトルをその触手で撫でまわす。
上にあるふたを取ると開くぞ。
そういうと器用に触手でキリリとペットボトルのふたを開けて一口中身のお茶を飲む。
美味しいねこれ、地球にはこんな美味しいものがたくさんあるんだね
ところで地球は
それだけど、もしダメっていったらどうするつもりなの
それは力ずくかな。はっきり言って苦戦はするけれど人間には勝てそうだし
それじゃあそのお茶とかが飲めなくなるぞ
それもそうだ。どうすればいいのかな
そういうチュウの前に財布から千円札と100円玉をチュウの前に出す。
これは何だい
これは金だ。今人間はこいつで動いている。こいつのために生きていると言ってもいい。
これがかい
目の前の硬貨とお札をしげしげと見るチュウ。
俺の服も、そのお茶も手に入れるならそいつが必要だ。
これが人間の世界には必要なんだね
そうだ。それが無いと物の価値が分からなくなるくらいには人間はそいつに依存いている。
でもうちらは必要な分を作って、それぞれが必要な分を分け合うから。そういう物に対する欲は無いよ
でもより多くそれを欲するために色々なことをしているのが人間だ。
君はこの星の生き物なのに人間が嫌いなのかい
いちおう、まこと。俺の名前。好きとか嫌いとかは良く分からないが、今の世界のその「金」に執着する奴を好きとは言えないな
なるほどぉ、少し人間が分かったよ
地球をあげますって言うにはいくつか聞きたい。
何を
もしお前らが地球に暮らすとして、人間はどうなるんだ
たぶん今までと変わらない生活だろうね。その「お金」さえあれば必要な物資は揃うだろうし
作れるのか
その質問にチュウは「うん」と答えた。
俺がうんと言ったからって手に入るとは限らないぞ、それに反発するやつだっている
だから言ったでしょ、うちらには地球に勝てる力がある。それに「お金」を知ったからね
この世界には人間だけじゃない、生き物や戦えない弱い者もいる。そいつらが差別されることもなく生きられる世界が作れると思うのか
当然。色々な生き物と共存しているからね
そういえば地球だけじゃないと言ったが、そいつらをどうやって手に入れたんだ
もちろん最後まで戦う生き物もいれば、進化のためだとすんなり受け入れる生き物もいたよ
最後はうちらのルールを受け入れてくれるけどね
正直、俺は生きる気力を失いかけた
なぜだい、真実みたいな生き物を客観的に見れる人間が。少なくとも他の生き物は自分から命を絶とうとはしなかったよ
それだけ今の人間社会にうんざりしているからかな。
うちらは嫌われるような世界にする気はないし、弱い者を虐げる心理が分からない。
どうしてそんなこと言えるんだ
うちら自体は弱いからね
その言葉を聞くと、自分は立ち上がった
どこにいくのさ
ついて来な
そうするとチュウを連れて外に出た
そこにいてくれ
日が上りかけている朝方、始発の電車が来る。
自分は遮断機をくぐり電車の前に立ちはだかった
自分の命は刈り取られなかった。
何しているんだ真実、君からの答えは貰っていないじゃないか
どんな魔法だよ
ここではテレポートっていうんだっけ、物質の座標を一瞬で変えるくらいの科学力はあるさ。そうじゃなきゃ星を一つくれなんて言えないさ
優しいんだか腹黒いんだか
あくまでうちらが生き残るためさ。
でも分かったことが一つある。君の力が必要だ。どうやら人間は今までで一番複雑な生き物のようだ
目の前の宇宙人には嘘をつく理由がない。あるのは自分の命を守ったという事実。
それで地球はどうする
まだチュウのことを信用している訳じゃない。正直俺がこの先どうなるか。でもこの星の人間を大切に扱ううちは地球はお前たちの物だ
其の言葉を待っていたよ。ありがとう
それから、たくさんの侵略ロボットが街に現れた。チュウとは違う姿の宇宙人も来た。
壊されたのは反抗する姿勢を見せた国や人。一般の人間に危害は加えられなかった。
その後は奴らのルールに従い世界は統治された。
物資の生産、通貨の概念は残してくれたようで彼らが担っており、ある意味それまで以上に裕福に生活しているのかもしれない。
案外簡単だったんだな
真実が色々教えてくれたおかげさ。生き物同士は共存しなくちゃ。人間は地球の支配者なんだから、滅ぼすメリットは無いし
旅に没頭できる世界になったのはいい。でももし勝手な支配をするならその時は
人間が住む地球、今の生活はチュウたちの裁定に委ねられている。
人間たちは今の生活に疑問を持たない。当たり前を受け入れて生活する人間。
人類はこうなる運命だったのかどうか、自分の決断一つで決まってしまった。そのせいで死んだ人間もいる。
ただ、自分を縛っていたものはなくなった。
チュウは相変わらず人間の社会を満喫している。
頭の中にいた侵略者のイメージとは違う地球外生命体。自分の自由を対価に地球を売り渡した。それを咎める者がいない寂しさも少しあった。
地球には買う価値があったのかな
どうする、やっぱり返品するか
ううん。他にもやりたいことあるし
そうか
残念だ、母性よりも人類の寿命のほうが短いみたいだ。どうする真実
じゃあ、人間を辞めてみるのはどうか話し合ってみるか
面白いねそれから
俺たちは再びちゃぶ台を囲んだ。