どこかの空間で彷徨い続ける青年がここに一人。
どこかの空間で彷徨い続ける青年がここに一人。
マジで誰にも会わねェんだけど
僕が会えないようにしているからね
そうか…そうだったのか…
じゃねーよコマ。何してんだお前。
怒らなくてもいいじゃないか健佑。
それに僕の特性については説明しただろう?
予知能力的なやつ?
君が僕の話を3割くらいしか聞いてないことはよくわかった。
僕の特性は超特異的に優れている第6感による危機察知能力だ。
好戦性の低い君らしい防衛に合っている能力ってことだよ。
ふーん
あぁ、もう!だから離れないでって!
今日はなんだか空間が不安定なんだ。
変なところに飛ばされたら君を護れなくなる。
はいはい。
俺はアイツに付き合わされて参加しただけだから正直どうでもいいんだけどさ。
アイツがいないと落ち着かねェっつーか。
だからどっかで合流できねーかなって。
友人と参加していたのかい?
あぁ、俺の親友なんだ。
アイツ小さい頃から新しい物には目がなくてさ、
こんな物騒そうなゲームなのにどうしてもやりたいって言い出して。
面白いんだぜ。喧嘩したら強いくせに暴力とか嫌う平和主義者だけど、誰かのためになった瞬間別人みたいに飛び出していくんだ。
自分の目の前で人が傷つくのは許せないとか何とか言ってたけどさ。
そんなやつが人殺しのゲーム体験してみたいだなんて笑っちまうだろ?
優しすぎてモンスターすら倒せないんじゃないかって。
健佑は随分その人のことを気に入ってるみたいだね。
まぁな。優しすぎるけど嫌いじゃない。
だから会って笑ってやりたいのさ。
お前には合ってないよバカ、ってさ。
いいのかい?全員で来なくて
随分と調子に乗ってるのね。自分の姿も見えてないのかしら?
春都は血だらけになった自分の姿を見ると肩を震わせて笑い出した。
ハハハハハハハハ!!
調子に乗ってるのはそっちだろ。
傷だらけの俺になら敵うとでも?
俺が言いたいのはそういうことじゃない。
春都の手に灯る炎が一層激しさを増していく。
威力が上がっている…!?
ハンデ有りでもアンタらに勝ち目がないんじゃないかってことだよ。
……なぁ!?
ギンがリズの前に風のように駆けつけた。
しっかりとした足取りでジリジリと春都との距離を詰めていく。
そうか。それなら安心した。
………?
ギンの意図が読めない春都はその迫力に押されて後ずさってしまう。
やはりお前とは最高のパートナーだったようだ春都。ここまで私と考えが合うとは。
何が言いたい、ギン。
私も暴れ足りないと思っていたところだ。
貴様の欲求不満に付き合ってやろう。
どこからか流れてきた強い風がギンに向かって吹き始めた。
万全の体勢で望まないのは貴様に失礼だからな。
余計なことをするな、ギン…!!
その炎は私には効かないぞ。
炎が風で消えていく…!?
なんだと…!?
その力は確かに俺が貴様に分け与えた力だ。
だが、それはあくまで一部に過ぎない。
プレイヤーが扱いやすいものは炎だと思って選んだだけのこと。
その炎が私の能力の特性だと言った覚えはないのだが?
ギンの体が激しく輝き、薄暗い洞窟の中で視界が白に染まった。
形態変化…!?▼
黒いマントを羽織った銀髪の剣士がそこには立っていた。
これが本来の私の姿だ。
へぇ…それが本気の姿ってわけ?
あぁ。これで貴様と真剣に勝負ができる。
勝負…いや、殺し合いと言ったほうが適切だな。
ギンは剣を鞘から抜くと、その切っ先を正面に立つ春都に向けた。
すまないカレン。感覚に慣れるまで少し時間がかかる。手を貸してもらえるか。
はい! もちろんです▼
さぁ、殺し合いをしよう春都。
貴様が何故殺意に呑まれたのか…その経緯などもはや私たちにとっては瑣末なことだ。
私は目の前の敵対者を排除するのみ。
彼女らを護るのが貴様に下された最後の命だ。
それを全うするが我等の役目。
一切の躊躇い無く貴様を屠ってみせよう。
…死ぬ覚悟はできたな?