ご注意!
この物語は(解決編)です。
まだ(調査編)を読んでいない方は
読まないようにお願いします。

翌日

ふむ……昨日はひどい土砂降りだったが
……ギリギリ晴れたようだな

さて……
一応確かめていくとするか

おっはよー!
いい天気になってよかったね凪!

………あぁオハヨウ

天気は天気でも
こうも能天気とは……

何がー?

いや、数少ない君の長所だと思ったんだよ
今頃は学校で……

いや、やめておこう
これで何もなかったら
それこそ下らんからな……

凪が学校のことを
考えるなんて珍しいわね…

ハッ! これはもしかして
ついに凪も友達が欲しくなったとか!?

…………流石にないか

おい牛並みに足の遅い牛女よ
トロトロしているのなら
ボクは先に行くぞ?

牛じゃないわよ!
モー!!

あれ?
何かすっごい人が
集まってない?

ほう?

あ、咲ちゃん!
おはよう!

芹ちゃん、おっはよー!

何かあったの?

あ、そうそう聞いてよ!
さっき先生に聞いたんだけどさ!

三年の女子生徒がね

血だらけの重体で見つかって

病院に運ばれたそうだよ?

…………え?

おい女子生徒A

その話、くわしく話せ

あー凪っち!?
ごめんごめん、いたの!?

どういうことだ?

いやー相変わらずちっこくて
見えなかったの!
ちゃんと栄養とってるの?

よし、殺す
社会的に殺す

もーいつものことでしょ?
落ち着きなって!

あははは冗談だってば!

詳しく教えてあげるから
それで許してよ!

(盛大な舌打ち)

えっとね、最初から話すと
咲もよく知ってる
元ヤンの先輩……
エリカさんっていうんだけれどね

!!!

昨晩無断で学校に入ったらしいんだけれど
どうやら階段を踏み外して
頭から落ちちゃったみたいなの

幸い宿長だった先生が見つけたおかげで
すぐに救急車を呼んで
病院に運ばれたって

だ、大丈夫だったの!?

うん! 無事だったみたいだよ!
意識はまだ回復してないそうだけど
命に別状はないって!

よ、よかったぁ~!

………ふん

おい学生A
その現場は階段だといったな?

あーうんそうだよ
でも行かないほうがいいんじゃないかな
まだ警察の人も見ているみたいだし

ほう?

現場検証をしているってこと?

うん、なんかね
事件の起きた階段が
雨と血でぐっちゃぐちゃに
なっているらしいの

うえぇ……そっか
じゃあ昨日の雨で濡れた階段で
うっかり足を……

うん、そうだと思う
でもね……今みんな
別のことで噂がもちきりなのよ

え?

詐欺師……いや
例の占いの結果が当たったと
噂になっているのだろう?

あれあれ~?
なんで知ってるの?

あ、もしかして…!

なーんだ!
凪っちも占い好きなんだ!
意外だな~! これは広めなくっちゃ!

そんなわけあるかアホが
もしそんな嘘を広めたら
二度と学校に来られなくするぞ?

ひゅー怖いこわーい!
じゃあ怖い豆チビ君が本気で怒る前に
退散しますかねー!

おい、最後に一つ教えろ

んー?
なになに?

その大怪我をした女の傷は
どこにあった?

傷?
妙なことを聞くねぇ?

とはいえ情報通の芹ちゃんは
しっかり調べていますとも!

確か先生が言うには
後頭部から落ちて
大出血だったって言ってたよ?

後頭部…そうだろうとも……

どうしたの凪?

何、ただの確認だ
もう散っていいぞ女生徒A

いい加減
芹様~って呼んでよね

それじゃ、またねー

やかましい……
こんなのばかりか
この学校のやつらは……

さて、残るピースは
【箱】か……

箱?
箱がどうかしたの?

くだらんが
少し調べる必要があるな

咲くん
あとでボクの部屋に来い

いいけど……授業は?

もちろん行かん
個室で自主学習が認められているんだぞ?

なぜ凡人と肩を並べて
時間的拘束をされなければいかんのだ?

デスヨネー

凪~来たよ?

あぁ……もうそんな時間か
まったくあの女は……

あれ?
もしかして誰かいた?

そういうときだけ無駄に
カンが鋭いな君は……

自称情報通のあの女だよ

え、芹ちゃんが来てたの!?

向こうからいきなりな……
話した内容の確認をしに
さっき部屋を出て行った

珍しいこともあったもんだねぇ

あぁ、おかげでボクのストレスは
いつもより何倍か増している

今日はいつもより過激にいくぞ?

あれれ~?
私、もしかしなくても
とばっちりを受けてる?

とはいえ
罵倒の前に先に聞こう

咲くん
君は怪我をした女の
過去の話は何か聞いているか?

エリカ先輩のこと?

うーん……あんまり本人は
しゃべりたがらなかったから
少ししかないけれど……

構わん
その胸に詰まった脳を叩けば
少しは情報が出てくるだろう?

脳なんて詰まってないし!!
セクハラどころかホラーだよそれ!?

えっと、私が知ってるのは
エリカ先輩が荒れていた時
一人の女の子をいじめてたって
ことくらいかな……

エリカ先輩が直接話してくれたんだけど
昔仲の良かった子だったのに
段々意見が合わなくなって
喧嘩になって……

そこから喧嘩を聞いてた何人かが
エリカさんに加勢して……

最初は正義感からの介入が
グループ化して
一方的ないじめに代わっていった
……そんなところか

うん……
今は止めるべきだったって
エリカさんすごく後悔してた

これだから群れるだけの連中は……

だが、これで動機もわかった
しかし咲くん
他に噂なんかは聞かなかったのか?

うーん……ごめんね凪
私、噂はいっぱい知っているんだけれど

エリカさん本人が言ってること以外
全部人の噂ばかりだから……

確証のない悪い噂って
あんまり話したくないなって……

…………

ハハッ、スズメ並みに
ひ弱な君でも
マナーは人並とはな!
これは世紀の大発見だ!

スズメって……

いやいや、どうせ噂も謎もあと一つだ
残りは、あのやかましい方に聞くとしよう

しかし……ははっ!
愉快極まりないな、君は

へーい! 超特急でき……おやおや~?
お邪魔だったかな~?

……帰ってきたか

全然問題ないよ?
どうしたの芹ちゃん?

いやー凪っちに珍しく
調べてほしいって懇願されちゃってさー

ええっ!?
凪が!?

誰が懇願などするかド馬鹿共!

いきなり押しかけてきて
散々調査させろと言ってきたのは
お前の方だろうが!!

えーそうだっけー?

で、どうなんだ?
アレはあったのか?

ばっちり!
ドンピシャだったよー!
さっすがは凪っちだよねー

私が置いてけぼりなんだけど?

そうだな
今日は少しだけ機嫌がいい
咲くんに説明してやれ

ほいほい
実はね咲ちゃん

今回二つのことを
調査しろって言われたの

一つは「階段の上にはロッカーがあるか?」

ロッカー?
確か三年生のロッカーは教室の中に
なかったっけ?

そう、でもね
三年生の教室って
学校の最上階でしょ?

だからあるんだよねー
掃除具入れっていう
古いロッカーがさ……

あれ?
そうだっけ?

写真も撮ったけど見る?

いや、結構だ
わかれば十分

もう一つの「箱」だけどね
前にエリカ先輩と一緒に
いじめに参加していた子に聞いたら
自分から話してくれたよ

箱?

そう、いじめられていた子が
大切にしていたモノ

まさしく箱そのものだったんだろう

そこに何が入っているかまでは?

わからなかったねぇ~
でも持ち主はかなり大切に
していたらしいから……

ちなみに材質は木で
箱の大きさは片手で持てるくらいの
軽くも重くもない感じだったって

ま、この際
材質や重さはどうでもいいがな
今回は中身の問題よりも
どこに、誰の箱が関係していたかが重要だ

凪にしては
かなり大雑把だね?

……まぁな
正直下らん内容だよ

おお~
照明終了ってやつ?

………

ああ、今回は事故だ
エリカという女が何を思って
箱探しの為に夜の学校に
入ったかはわからん

が、明確な事故であることは確かだ
ただの下らん結末だよ

ほうほう、じゃあ占いの予言との関係は?

いわゆる偶然と勘違いというやつだ

不幸な事故だろうさ

エリカは占いの結果を
勝手に解釈して
勝手に箱を探して
不幸にも階段で足を滑らせた……

そ、それで?

以上だ

ええええええええええええええええ!?

じゃあやっぱり
理由はどうあれ
事故ってこと~?

あぁ……それが全てだ

そういうわけだから
お前は取り決め通り
この情報を学校に流せ

まったく
学校中噂だらけで
うるさくてかなわないからな…

そっか……でも今回は
先輩も大丈夫だっていうし
大事件にならなくて本当によかったね

まったくやなー
ほいじゃ~そろそろ
退散しましょうかねぇ~

あー悪いが凡人と肩を並べて帰る趣味はない
今日は学界に発表するレポートがある
帰るなら咲と二人で勝手に帰れ

あれ、そうなの?
また学校に泊まり?

いや、日が落ちる前には帰る
気にするな

……うん、わかった
帰ったらおば様にも伝えておくね?

じゃ、久しぶりにいっしょに帰ろうかー
彼氏といっしょじゃなくてごめんねー

も、もう!
からかわないでよ!
先に下駄箱で待ってるからね!!

ありゃ~

………

………

一つ言い忘れてましたわ
ロッカーなんだけどね

あぁ……あったんだろう?
ロッカーの上に

ええ……ホコリが不自然に
奇麗な個所がありましたわ~

だろうな

お優しいんですなぁ~
でもあんまり無理したらあかんですよ?

くだらん
ボクを誰だと思っているんだ?

はいはい
じゃ、彼女さんは責任もって
家にかえしますよ~

また面白そうな話があったら
声かけてくださいねぇ~

まったく……この借りは
全部倍にして咲に上乗せだな

凪咲探偵物語

真実の眼

ほう、遅かったじゃないか

…………

とはいえ
確実に来るとは思っていたよ
芹から連絡はいっていただろう?

しかしまぁ……君が詐欺師の『霞』か

実に平凡かつ覇気のない……
よくもまぁあそこまで
大それたことができたものだ

わ、私はただ
明かりがついていたから
注意にと……

はッ、笑わせるな
この部屋のことを知らない生徒はいないだろうし、そもそもお前は覚悟を決めて入ってきたじゃないか

…………どこまで知っているの?

その質問は愚問だぞ?

でしょうね

でも、誰も私を否定できない
例えアナタであろうともね

安心しろ
ボクだって殺人未遂者を
断罪するつもりはない

大体ボクの興味外だ
自首なりはかってに個人でやれ

よかったわ
これでお互い
脅さずに済むもの

…………ほう?

私はね
全てを知っているんですよ
占いによって全てね……

占い……ね
そうだろうとも

お前が見ているものは
占いなんてものじゃない

見えているのは情報と結果だろう?

あら、それこそ運命じゃなくて?

いいや違うね
占いとは確立と勘違いの結果から始まる
そこに意味を見出す力は人それぞれの
解釈や見方で多いに代わる

根拠のないもので
根拠のあるような話をする

占いを全面否定するつもりはないが
ボクはそういったものが大嫌いでね

故に占いをやる連中を詐欺師と呼んでいる

あぁ、勘違いするなよ?
ボクが詐欺師と呼ぶのは
プロではない
お前のような手段と理由を間違えている占い師だ

侮辱ね……明確な偏りを感じるわ

人のことが言えるか?
お前がやっているのは
占いですらないだろう?

情報操作の歴史は古い
あのローマ時代ですら
軍略に長けたシーザーもやった

「占い」「呪術」
政治的に国が利用し
人の運命を変える情報操作術

歴史を少しでも調べれば
英国なんてオカルトと政治が
セットで書いてあるくらいだ

ましてや学校なんて規模の小さいコミュニティで、多少情報通になっていれば
方法を考えればいくらでも情報を操れる

意中の相手は誰が好きなのか
なんて、それこそ一番わかりやすい

Aに対してBに気があると吹聴し
BにもAへ同じことをすれば
勘違いから意中の相手に早変わりだ

あら、でも占いは当たりますよ?
それこそ昨日だって
エリカさんは……

ロッカーの上に隠されていた
お前の大事な箱を
わざわざ取りに来た帰りに
階段から落ちた…いや

お前が落としたんだったな!

なっ……!!?

お前のやった占いは占いじゃない
ただのエリカしかわからないメッセージで
謝罪を要求したに過ぎない

エリカは君の占いの結果に怒ったんじゃない
周りに人がいる環境でそんな発言をしたことに怒っただけだ

でなければ、わざわざ
雨の日の夜中に昔いじめで隠した
君の箱をこっそり取りになんていかない

そもそも占い中の君に会いに行くなんて
エリカは初めからお前に謝ろうと
話しかけたんだろ?

意外ね……あなたは
人に興味がないと聞いていたのだけれど?

ああ、特にお前のように
卑屈の塊のような人間は特にな

満月の夜。
これは昨日の夜だ。

嘘と欺瞞に満ちた隣人とは
エリカに他ならない

罪の箱とは
きみがいじめを受けていた時に
隠された箱だな

だが君は初めから
箱の場所など知っていた

…………

そして昨晩
君は放課後から暗くなるまで
飽きもせずずっと
掃除用具の中でエリカを待っていた

階段の窓は全開にし
非常に滑りやすくするためにな

だが、それだけじゃあ
人間ってのは確実に転んで
階段から落ちたりはしない!

確立を確実にする方法
それは君自身がやるという
馬鹿でもわかる方法だった

そうよ……私は占いに従って
箱を取ろうとしてロッカーの前に来た
彼女を階段へ押してやったわ

あはははは!
本当に滑稽だったわ

あの子の呆気にとられた顔
写真に収めたいくらいだったもの

ほーう?
まったく興味をそそられない
下らん感想をどうも

ついでに
箱の中身や犯行動機なんぞは
それこそ一ミリも興味がない
言わんでいいぞ?

あらそう
箱の中ぐらいは聞くかと思っていたけれど?

あのな?
ボクが今回どれだけこの下らない
事件に頭を痛めていると思っているんだ?

お前らの問題に
いちいち思い出話を聞かせるつもりか?
ここで? このボクに?
冗談でもやめろ、気持ち悪い

まぁ、早い話が
いじめの復讐という理由さえわかればいい

そして残念だったな
昨日は運悪く教師がやってきて
彼女を助けてしまったわけだ!

…………ッ!!

香川……
どうしてよりにもよって……

はっはっは
なんでだろうなぁ?

まぁ結局のところその程度だったわけだ
君の占いのお導きというやつは

で、この次はなんだ?
ボクを占いで呪い殺しにでも来たのか?
それとも滑稽に踊って見せて
精神攻撃でもしてくるのか?

いいえ、そんなことはしないわ
だって別にアナタをどうこうする必要なんてないもの

ただそうね……咲さんは
もしかしたら近いうちに
悪い目に合うかもしれないけれど?

…………

もっとも、あなたが何もしなければ
学園生活は円満に送れるでしょうね
咲さんは友達だもの
私も占いの結果がこれ以上悪くならないように
頑張るつもりよ?

そうか……よくわかったよ

お話しできて楽しかったわ
それじゃあ失礼するわ

おい待てよ三下
話は最後まで聞いておいたほうがいいと思うぞ?

は?

三年前に大病を患った祖母は
ずいぶんと大変な手術だったそうじゃないか
あの病院の先生とは論文発表の時に
ずいぶんと世話をしたもんだよ
いい腕だが少し金にがめつい性格だったな

そういえば君の母親……美咲さんだったか
パート先の経営も苦しいと聞く
あそこのチェーン系列の取締役には
ボクも知り合いがいてね
機会があったらアドバイスしておこう

父の薫さんの昇進はいいニュースだったな
もっともあそこの会社の株は
ついさっき半分買い占めたが

あ、あなたはいったい何を……

おっと、そろそろ時間だ
君に電話が来るぞ?

えっ……

もしもし……お父さん!?

えっ……家の隣に!?
うん、うん……わかった
すぐ帰るから……

どうした?
すぐ隣の空き家に
運悪くダンプカーでも
突っ込んだ顔をしているな?

あ……ああああ……あなたは!?

いや、実に痛ましいな
早く帰った方がいい

そういえば事故で
運悪く階段から落ちたエリカは
先ほど意識が戻ったらしい

強い風でロッカーが開いて
運悪く足を滑らせたそうだ
いや、後頭部から落ちたと聞いたときは
誰かが突き落としたんじゃないかと疑ったが
そうではないとのことだよ
よかったよかった

あとはそうだね
ボクの唯一の友人に
誰も危害を加えないと君も願ってくれるのなら……

明日からも
世はこともなしに……だ

…………悪魔

学生ごときがいきがって
天才の僕に情報戦なんてしようとするからだ

戦いっていうのはな
始まる前に終わらせることが
最大の戦果なんだよ

そしてボクは約束は守る
例えそれがこの世で最も愚かな女でもだ
願わくば二度とボクの前に顔をだすな

くっ……

ふぅ……まったく
とんだ厄介だった

いやまてよ?
そもそもこんな話を持ってきたのは
咲じゃなかったか?

よーし決めたぞ
明日からしばらくは
罵倒フルコースに加えて
無理やりひどいことをしよう!

天才の腕の見せ所だな
どう生かさず殺さずバランスよくいじるか……

ん?
電話だと?

こらああああああ!!
もう7時過ぎてるんだよ!?
いい加減帰ってきなさーい!!

ぐっ……電話で
犬みたいにキャンキャンわめくな!
この駄犬が!!

はいはい、わんわんわーん
どうせまた悪だくみしてるんでしょ?
いつも暇だって言ってるくせに……

とにかく、おば様公認で
早く帰ってこないと
凪は夕ご飯抜きだって

いやまて、どうしてそうなる!?
というかなぜボクの家にいるんだ!?

じゃあカウントはじめるからねー
よーいドン!

咲くん
あとで覚えておけよ?

凪咲探偵物語

真実の眼

最後までご視聴ありがとうございました。

フォロー、コメント等を頂けますと
非常に励みになりますので
今後とも是非よろしくお願いいたします。

記:ラフ・フォックス

真実の眼(解決編)

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