綾瀬 亮介

猫を探していたのか?

その問いかけに弓月が頷く。

綾瀬 亮介

顔見知りの猫?

弓月 葵

……昨日の夕方に出会った白猫。
でも声をかけない方が良かった

綾瀬 亮介

どう言う事だ?
もう少し具体的に話してもらえると助かるな

弓月 葵

この近くを歩いていたら、物陰から猫が出てきたの

そう言うと、弓月は外に目を向けて言葉を続ける。

弓月 葵

ふらふらしてたから大丈夫かなと思って駆け寄ったら、その子が側溝に落ちてしまって……

弓月はその時の光景を思い出したのか、

目をぎゅっとつぶる。

弓月 葵

側溝から出そうにも重くて上げられなくて……。
すぐにサングラスの男の人が来てくださったのに、私はとっさに逃げてしまいました

綾瀬 亮介

サングラスの男、おそらく笠原さんだろうな
俺がバイト終わった後にそんな事があったんだ

綾瀬 亮介

それで猫がどうなったのか、気になって来たのか?

弓月 葵

猫も……なんですが、そのサングラスの
男の人も気がかりで

綾瀬 亮介

気がかりって逃げてしまったから?

弓月 葵

ではなくてその方の身に、
何か起きてないかと心配に

綾瀬 亮介

身に何か起きてないか心配? 
確かに笠原さんは怪我をしたらしいが……。
弓月の言う事が本当なら……未来予知か?

綾瀬 亮介

実際に見てないので断言はできないが、
サングラスの人が昨日怪我をしたと聞いた

弓月 葵

やっぱりその人も不幸な目にあったんだ

弓月はそう言うと、体を丸めて小さく震えだした。

綾瀬 亮介

弓月にしてやれる事はないのか……

一生懸命考えていると、ある事を思い出した。

綾瀬 亮介

弓月、大丈夫だ。
俺の予想が正しければこの話は覆る

俺は震えている弓月の頭を軽く撫でて、

スマホをポケットから取り出した。

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